ガンドラック氏: 米国株は売り、ゼロリスクの短期金利が米国株配当の2倍以上

引き続きDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。今回は株式市場について語っている箇所を紹介したい。

ガンドラック氏の米国株推移予想

2022年に利上げで下落基調だった米国株だが、去年の秋頃からアメリカのインフレが減速し長期金利が下がったことで下落は一時停止となっている。

アメリカの株価指数S&P 500は次のように推移している。

だが永遠にこの水準に留まり続けるわけにもいかないだろう。株価はこれからどうなるのか。ガンドラック氏は株式を含むリスク資産の先行きについて次のように語っている。

引き締めによる経済減速のお陰で去年の9月以降リスク資産に対し中立か多少強気だったが、今ではより弱気に傾いている。

リスク資産の価格は高金利、量的引き締め、信用縮小のカクテルを過小評価している。

まず政策金利はある程度高止まりしそうだ。アメリカ経済は弱っている一方で雇用統計はサービス価格のインフレ継続を示している。

そして銀行危機は継続している。筆者やここで相場観を報じているファンドマネージャーらの見解によれば、銀行危機は政策金利が高止まりする限りこれからも続くだろう。

2023年のリスク資産動向

そして苦しんでいるのは銀行だけではない。アメリカで地方銀行が苦しんでいるのは、顧客であるアメリカの中小企業が苦しんでいるからである。

ガンドラック氏は銀行危機以来、銀行が貸し渋っているために中小企業の資金繰りが苦しくなっていることを指摘していた。

ガンドラック氏はアメリカ経済の先行きについて次のように述べている。

雲行きは去年9月に比べてかなり怪しくなっている。今年の第4四半期から質の低い債券のデフォルトが多くなると想定すべきだ。

倒産の増加は他のファンドマネージャーらも指摘していることである。当たり前だろう。リーマンショック以来ゼロ金利を前提に自転車操業してきたゾンビ企業たちが5%の政策金利を生き延びられるわけがない。

最初に潰れたのがシリコンバレー銀行だったことは、そういう赤字企業がシリコンバレーに多かったことに起因している。そういう顧客が資金難に陥り真っ先に預金を引き出したのである。

そして債券がデフォルトし企業が倒産することは株式市場にも悪影響を与える。ガンドラック氏は次のように続けている。

質の低い債券がデフォルトしスプレッド(国債との金利差)が広がるときには、株式市場にとっては非常に難しい状況になる。資本市場では株式はそれらの債券の次に位置しているからだ。

債券が下落するとき、株式市場には大きな逆風が吹くことになる。

資産同士の資金の奪い合い

「次に位置している」とはどういうことか? Bridgewaterのレイ・ダリオ氏がよく言っているが、投資家は市場にある選択肢の中から自分の投資したい資産を選ぶことになる。

だから株式にリスクが近いジャンク債が下落し金利が上昇するとき、株式に行っていた資金が金利が上がったジャンク債に向かうことになるのである。そして株価が下落する。

このように様々な資産クラスは互いに資金を奪い合っている。しかも極めつけは政策金利が5%まで上がったことで、数ヶ月物の国債やいつでも売り買いできるマネー・マーケット・ファンドが5%近い金利になっていることである。

ガンドラック氏は次のように述べている。

短期金利の上昇がリスク資産に対する根本的な問題だ。S&P 500の配当の2倍の金利をゼロリスクで手に入れられる。少しでもリスクのあるものを買ってその半分の報酬を手にする理由はゼロだ。

現在、S&P 500の配当利回りは1.65%なので、2倍どころかほとんど3倍近い金利を無リスクで得られることになる。

実際には配当を気にして株式を取引することにほとんど意味はないのだが、配当を目当てに米国株を買っている人にはマネー・マーケット・ファンド(ETFもある)を奨めなければならないだろう。米国株を買う理由が何かあるだろうか。

S&P 500の動向予想

さて、では米国株は今後どのように動くだろうか。ガンドラック氏はこう述べている。

前回のインタビューではS&P 500が4,200ドルか4,300ドルまで上がるかもしれないと話したが、株価はそれを超えられないようだ。4,200ドルを越えようとすると売りが出る。

S&P 500のチャートをもう一度掲載しよう。

ガンドラック氏はこう続ける。

株価はかなり長い間このレンジ内で取引されている。これまで話した理由で株価はこのレンジを下に抜けるのではないかと思っている。

結論

何度も言っているが、株式はインフレヘッジにはならない。株式はむしろインフレで暴落する。1970年代の物価高騰時代に米国株が実際にそうなっている。

インフレで金利が高くなるのであればマネー・マーケット・ファンドなどきちんと金利が付く形で預金すれば良いのであり、リスク資産である株式を買う理由はまったくない。

逆に言えば政策金利がきっちりインフレ率に沿って上がるのならば、預金は目減りしないのでインフレは預金者にとって問題にならない。日本でインフレが問題になっているのは日銀が利上げをしないからである。

何故日銀は利上げをしないのか? その理由は以下の記事に書いている。政府という仕組みが単なる詐欺であることに人々が気付く日は果たして来るのだろうか。