4月雇用統計はインフレ継続、銀行危機とのコラボでスタグフレーションへ

インフレ相場における最重要指標の1つ、アメリカの雇用統計が発表された。4月分である。結論から言えばあまり良いデータとは言えない。

過熱の続く労働市場

つまりはインフレ的だったということだ。

まず失業率だが、3.4%となり3月の3.5%から低下した。グラフは次のようになっている。

本来ならば失業率低下は良いことだが、雇用の手が弱まらなければ賃金が上がり、賃金が上がるとサービス価格が上がる。

去年の秋から3.5%や3.4%を底として推移しているので、辛うじて底打ちしているようには見えるが、それでも労働市場の過熱はなかなか収まらず、よってサービスのインフレも根強く長く続くと考えなければならないだろう。

急上昇した時給

では平均時給の方はどうかと言えば、前月比年率(前月からの変化率が1年続けばどうなるかを示したもの)で5.9%の上昇となり、3月の3.3%から急上昇した。

どう見ても良くない数字である。違う年の同じ月同士を比べる前年同月比とは違い、前月比年率の数字は月の違いを打ち消すのを恣意的な季節調整に頼っているので、単月の数字が異常値になることはあるが、住宅価格の上昇と重ねて考えると、やはり利上げが足りていないのではないかと思う。

板挟みになる中央銀行

さて、労働市場が堅調な一方で、アメリカでは銀行の方は着々と潰れていっている。

シリコンバレー銀行から始まり、最近ではファーストリパブリック銀行が潰れたが、今ではそれから1週間も経たないうちにパックウェスト・バンコープの破綻が懸念されている。レイ・ダリオ氏の予想した通りである。

シリコンバレー銀行の破綻は高金利が原因なので、高金利が続く限り銀行は潰れ続ける。筆者も当時から言い続けているが当たり前である。

現在、アメリカの政策金利は5%である。この5%の金利は銀行にとっては致死量であるらしい。

一方で、労働市場や住宅市場は5%では死なないと言っている。

結論

さて、中央銀行は金利をどうするのか? インフレを抑制するために金利を更に上げるのか? それとも銀行や中小企業を救うために金利を下げるのか?

金利を上げれば、現在の金利水準で既に死んでいる銀行などのセクターは地獄絵図となるだろう。一方で金利を下げれば、恐らくアメリカのインフレ率は住宅価格やサービス価格を中心として再び上昇してゆく。

だからインフレを引き起こしてはならないと言ったではないか。何度も言うがインフレには物価上昇以外の意味はない。辞書を引いてほしい。それ以外のどんな妄想をこの片仮名4文字に見ていたのか。インフレとは物価上昇である。そして物価が上昇して喜ぶのは多額の借金が実質的にチャラになる政府とゾンビ企業だけである。

国民は何故そんなものを支持したのか。インフレを引き起こすと宣言し、インフレを引き起こした黒田氏は颯爽と逃げて行ったではないか。20世紀の大経済学者フリードリヒ・フォン・ハイエク氏は『貨幣論集』においてインフレ政策について次のように言っていた。

短期において支持を獲得することができれば、長期的な効果について気にかける政治家が果たしているだろうか。

だがはっきり言っておく。インフレの意味も知らずにインフレ政策を支持した国民が馬鹿なのである。そして日本にはいまだに状況を理解できない馬鹿が大量にいる。日本は終わりである。日本円で積み上げられた自分の預金が10年後に無事だとは思わない方が良いだろう。


貨幣論集