米国経済は景気後退に近づいた、4月雇用統計解説

さて、今月も最新の米国雇用統計が発表された。結果から言えば、最近発表されたGDP統計に続いてアメリカ経済の減速が示される結果となった。

上昇する失業率

失業率は3.9%となり、前月の3.8%から上昇した。グラフのトレンドも以下のように上昇トレンドとなっている。

一度上昇した失業率はなかなか止まらないので、このまま行けば4%台到達も時間の問題だろう。

平均時給は減速気味

平均時給は前月比年率(以下同じ)で2.4%の上昇となり、前回の4.2%から減速した。

グラフも減速トレンドとなっている。

失業率もだが2023年から下落トレンドが始まっているように見える。

やはり2022年から行われている高金利政策が効いているのだが、何度も言っているように金融政策はまずローン金利を通して住宅市場や企業の設備投資を減速させ、最終的に経営が苦しくなってきた企業が解雇や減給を考えるため、労働市場は金融政策の効きが遅い。

利上げ開始から2年経ってようやくこれなのだから、何度も言ってきたように、金利を上げても経済が大丈夫なのではなく、単に効いてくるまでにタイムラグがあるだけである。ソフトランディングは有り得ない。

結論

はっきり分かっていることがある。今後のシナリオは経済減速・インフレ低下・株価下落なのか、経済成長維持・インフレ再加速・株価上昇なのかである。もう一度言うがインフレが下がって経済が無事というソフトランディングは有り得ない。

まさにフリードリヒ・フォン・ハイエク氏の言う通りの展開となっている。

ということで、パウエル議長がどちらを選ぶのかという問題に帰着しそうである。今のところ、彼が本当にインフレを抑制できるのかどうかはかなり怪しい。

FOMC会合と雇用統計を経て、金融市場の今年の利下げ織り込みは1回から2回に上昇した。もうすぐ発表されるCPI(消費者物価指数)がどうなるかである。引き続きアメリカの経済統計を報じてゆく。