世界最大のヘッジファンドがトランプ相場で買った株式銘柄

機関投資家のポジションを開示するForm 13Fを引き続き報じてゆく。今回はレイ・ダリオ氏率いる世界最大のヘッジファンド、Bridgewaterである。

レイ・ダリオ氏とトランプ相場

先ずはアメリカ大統領選挙後のレイ・ダリオ氏の相場観について復習しておこう。ダリオ氏は2016年11月の大統領選挙でトランプ氏が勝利した後、市場が経済成長を織り込んでゆく流れをいち早く性格に予想したファンドマネージャーの一人である。彼より早かったのはかつてジョージ・ソロス氏とともにポンドを空売りしたドラッケンミラー氏くらいものだろう。

一方で、2017年2月には他の多くの投資家と同じく、トランプ大統領の保護主義が経済全体にマイナスになるとして、批判的な発言も行っている。

今回のForm 13Fで開示されているのは、昨年末の段階でのBridgewaterの買いポジション(空売りは含まない)である。株価は昨年末から上がり調子なので、株価上昇前にダリオ氏がどういう選択をしたのかを見て取ることが出来る。

2016年末のダリオ氏のポートフォリオ

Bridgewaterのポートフォリオの中で飛び抜けて金額の大きいポジションが三つある。そしてそのすべてがETFである。

規模の大きいものから挙げてゆくと、先ずはVanguard FTSE Emerging Markets ETFで、金額は33億ドルとなっている。このETFは中国株やブラジル株などの新興国の株式に投資するETFである。

この銘柄は2016年末から上昇を始めている。このタイミングで何が起こったかと言えば、トランプ相場での実質金利上昇が行き過ぎであるとして特に実質金利が低下を始めた時期である。

金利が低下すれば、上昇するのは金価格と新興国株である。元々金利の付かないゴールドは金利高の状況では価格が低迷し、新興国も米国の金利が高い状況ではドルに資金が向かい、新興国の株式や債券からは資金が流出する傾向にある。

昨年末から実質金利の上昇がある程度是正されたことで、こうした銘柄に資金が戻っているのである。ちなみにドラッケンミラー氏は同じタイミングでゴールドを買っている。同じ予想をするとしても、相場での実際の賭け方は人それぞれである。

ちなみに、Bridgewaterの二番目に大きいポジションもiShares MSCI Emerging Markets ETFという新興国株ETFとなっており、金額は24億ドルである。合計するとダリオ氏は57億ドルを新興国株式のETFに投資していることになる。

米国株と個別銘柄

Bridgewaterの最大ポジションである三つのETFの内、最後のものは米国の代表的な株価指数S&P 500のETFである。こちらも上がってはいるが、新興国株の方が上がり方は大きいと言える。ダリオ氏の選択が正しかったことが証明された訳である。

因みにダリオ氏は、1月の半ばにダボスで、選挙後に上昇した米国株について「程々に魅力的だが非常に魅力的であるというわけではない」と答えていた。

この言葉通り、米国株については買い持ちにしているものの、金利低下の恩恵をより直接受けることになる新興国株をより魅力的なものと見なして買ったということだろう。

また、個別株についてはハイテク株を贔屓しているようである。ETFと比べて金額はかなり小さくなるが、Appleを4,824万ドル、Microsoftを4,055万ドル保有している。Apple株はその後決算発表を経て高騰している。

結論

ダリオ氏の相場観についてはこれまでも追いかけて来ているが、今回の明らかになったポートフォリオもマクロ的な状況判断とミクロ的な銘柄選択の両方において成功していると言えるもので、流石はダリオ氏と言うべきだろう。ドラッケンミラー氏は米国株でもセクターを選んで投資をしていたが、ダリオ氏はETFで一纏めに新興国株を買う辺りがグローバルマクロ的とも言える。どちらが良いかは、状況次第なのである。

今後も著名投資家の動向については引き続き報じてゆく。