トランプ大統領は機関投資家からバブル崩壊の予報を受けている

これはニュースではなく筆者の個人的分析だが、先ず間違いないだろう。

2018年10月の世界同時株安を受けて、トランプ大統領はアメリカの中央銀行に相当するFed(連邦準備制度)が行なっている金融引き締めを連日批判している。

ロイターによれば、トランプ氏はFedに対し、「狂ってる」、「どうかしている」、「ばかげている」、「小ざかしい」などの批判を繰り返し、Fedの行なっている利上げは「過度に積極的」で「大きな過ち」だと主張、Fedの行なっている金融引き締めへの批判を連日続けている。アメリカ大統領からアメリカの中央銀行への、清々しいほどの怒涛の批判である。

金融について何も知らない大手メディアはトランプ氏のいつもの暴言だと考えているのだろうが、この発言は実際には非常に戦略的であり、そして実際的な選挙対策なのである。

金利とバブル崩壊

どういうことか? 先ず考えたいのは、トランプ大統領が何故このタイミングで怒涛のFed批判を行なったかということである。

ここの読者には復習になってしまうが、ここでは既に昨年から長らくバブル崩壊のタイミングを図ってきた。最初の兆候は7月に報じたアメリカGDP速報である。

この7月の記事で既に、現在の状況が正確に予想されている。この記事では次のように書いてある。

アメリカの中央銀行によって世界市場から資金が引き揚げられており、現在は新興国だけを襲っている金融引き締めも、現在の引き締め状況が続けば最後にはアメリカと日本を含む先進国まで回ってくることになる。何度も言っているように、金融引き締め相場では高リスク資産から順番に下落していくからである。

しかし、当時はまだ米国株や日経平均にまで影響は及んではいなかった。しかしその間、新興国の株式と通貨は暴落を続けていた。

それでもいずれ日本やアメリカまで弱気相場が波及するとここでは一貫して主張してきた。新興国の次に影響が及んだのは、日経平均以外の日本株であった。

この記事では、日経平均に採用されている大手企業以外の銘柄は、既に暴落が始まっていることを指摘しておいた。日経平均が上昇していた一方で、JASDAQやマザーズなどの小型株市場は既に下落相場入りしていたのである。

金融引き締めが引き起こす世界同時株安

これらの状況の原因は、アメリカが金融引き締めによって世界の市場から資金を引き揚げていることである。それによって先ずは高リスク資産である新興国の資産が、そして徐々に先進国の市場も資金引き揚げの影響を受けていった。しかし、それでもFedは金融引き締めを続けている。

そしてアメリカの長期金利は遂に3%を大きく超えて上昇し、10月の世界同時株安に繋がった。このタイミングでトランプ大統領はFedに怒涛の批判を行なったのである。

ここまで読めば、トランプ大統領が何故前例のない批判を行なったのか、読者にも理解できるだろう。トランプ大統領はわたしがここに書いたような、グローバルマクロの投資家の相場観を知っている。トランプ氏はリーマンショックを予想したジョン・ポールソン氏やカール・アイカーン氏などの大物投資家と個人的に親しく、このまま金融引き締めが続けばバブルが崩壊するという機関投資家の相場観を彼らから聞いているのである。

無論、トランプ氏はFedに利上げ停止を本気で強要できると思っているわけではない。大統領といえども、中央銀行に具体的な政策の注文をすることは出来ない。

しかし、このタイミングでFed批判をしておけば、バブルが崩壊した後に、有権者に向かって「だから言ったのだ」と言うことが出来る。放っておけば株価崩壊はトランプ政権の責任になったものが、先に批判をしたことで「バブル崩壊を予想していたのに、Fedが間違った選択を取った」と言うことが出来るのである。トランプ大統領の狙いはそこにあるということが、今や読者にも理解してもらえただろう。

さて、最後に余談にはなるが、何も分かっていない日本の中央銀行総裁の黒田氏は同じ状況について、「市場は若干調整しているが、これまでのところ日米欧経済の良好なファンダメンタルズ(基礎的条件)に変化はみられない」(ロイター)との能天気な発言をしている。

日本とアメリカでは人材の質が違うのである。日銀など世界中の投資家から既に忘れられているので、誰が総裁でも構わないというのが唯一の救いだろう。

また、この状況における筆者の投資戦略については、以下の記事を参考にしてもらいたい。共に下落前の記事である。