日本の株式市場の崩壊はもう始まっている

アメリカが金融引き締めを開始してから2年以上が経過している。利上げとともに量的緩和の逆回転である量的引き締めも行なっているが、少なくとも先進国の主要な株価指数はいまだ史上最高値付近からそれほど下落しておらず、日経平均などだけを見ていると金融引き締めは問題なかったのではないかと思うかもしれないが、世界の市場を見渡してみれば暴落の日が着実に近づいていることが分かるということを、ここ最近連日書いている。

これまで様々な世界市場のチャートを交えて説明してきたが、今回は日本の株式市場における暴落の論拠となるデータを提示したいと思う。暴落の影はもう日本まで来ているのである。

暴落は新興国市場から

先ずは世界市場のチャートをもう一度振り返ってみよう。世界の株式市場の中心はやはり先進国であり、何よりも米国株である。そしてその米国株のチャートは、確かにまだ今年1月の史上最高値付近を維持している。

しかし、アメリカのような大国が金融引き締めで世界の市場から資金を引き揚げるとき、最初に下落するのは米国株ではなく、よりリスクの高い資産である。今回最初に暴落したのは、「アメリカがくしゃみをすれば新興国が風邪を引く」の言い回しの通り、新興国の通貨や株式だった。中国の株価指数のチャートを見てみたい。

既に高値から20%ほども下落していることが分かる。

また、中国の通貨である中国元も急落している。以下はドル元のチャートで、上方向がドル高元安である。

暴落は中国だけの話ではなく、トルコやタイ、ベトナムなどでも似た状況となっている。

何故新興国市場が暴落しているのか?

そもそも何故こうした状況になったのだろうか? 先ず、リーマンショック後に始まったアメリカの量的緩和と、その後アメリカに続いた日銀とECB(欧州中央銀行)の量的緩和によって、世界市場には大量の資金が注ぎ込まれたということを思い出したい。

その資金は緩和が行われた国から溢れ、よりリスクとリターンの高い資産を求めて新興国市場に流れ込んだ。量的緩和で日本などが通貨安になったということは、先進国の投資家が意欲的に海外資産を買い込んだということである。そしてアメリカが量的緩和を止め、強力な金融引き締めを行なっている今、こうした資金が新興国から流出しているのである。

さて、投資家にとって重要なのは、この構図が新興国と先進国という対比だけではないということである。これはあくまでリスクの高い資産とリスクの低い資産の比較すべてに当てはまることであり、例えば日本株と米国株を比べれば、バブルが崩壊するときに先に下落するのは日本株の方なのである。「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪を引く」ということである。

リスクの高い資産から順番に下落してゆく

現在の金融市場では、セオリー通り高リスク資産から順番に下落しており、弱気相場は今のところは米国株や日経平均に到達していないが、アメリカが強力な金融引き締めによって毎月大量に資金を引き揚げ続ける限り、いずれは日本にもアメリカにも到達する。そして実を言えば、弱気相場は日本株にも既に到達しているのである。

どういうことか? 日経平均はまだそれほど下がっていないのではないか?

重要なのは、バブルが崩壊する時、同じ国の株式でもすべて同時に下落するわけではないということである。著名投資家のジョージ・ソロス氏が2017年にトランプ相場を空売りした時のことを思い出してほしい。彼がバブル崩壊を予想して主に空売りしたのは先ず小型株だった。

S&P 500はアメリカの主要な株価指数であり、Russell 2000はアメリカの小型株指数である。つまり、ソロス氏は米国株が下落する場合、小型株の方が下落が大きいと考えていることになる。

この時彼はアメリカの主要な株価指数よりも、アメリカの小型株指数であるRussell 2000の方を優先して空売りしていた。反トランプ的な政治的動機に基づいた当時のソロス氏の米国株空売りは当然失敗したのだが、重要な点は、経験あるファンドマネージャーにとっての常識として、バブル崩壊時において先に下落するのは指数株や大型株よりも小型株だということである。

既に下落相場入りしている日本の小型株

もし日本の個別株を保有している投資家が居れば、日経平均はそれほど悪くないにもかかわらず、自分の保有株は下がっているという状況になっている人が少なくないのではないだろうか。

どういうことかと言えば、日経平均以外の株価指数であるマザーズ指数やJASDAQ指数は既にかなり下がっているのである。掲載できるチャートを見つけられなかったためYahoo! Financeへのリンクを張っておくが、日本株にとって非常に重要なので是非見ておいてほしい。

マザーズの方が下落が激しいのだが、そちらは各自証券会社のサイトなどで確認出来るだろう。

因みにアメリカの小型株指数Russell 2000はまだそれほど下落していない。やはり、弱気相場の到達はアメリカより日本が早いということである。

結論

アメリカの金融引き締めによって既に新興国市場が暴落した。そして先進国の中でも日本の小型株まで弱気相場は波及しているのである。そしてこれはアメリカが金融引き締めを続ける限り、いずれ先進国の主要銘柄にまで到達するだろう。アメリカの実体経済の好調を見れば、それは2019年後半まで止まらないということを、GDP分析の記事で説明した。

問題はもはや、金融引き締めが継続するあと1年という期間で、弱気相場が日本の小型株から大型株まで波及するのか、しないのか、という問題でしかない。その答えは明らかだと思う。量的緩和で株を買った投資家は、それが同じ勢いで逆回転しているのだということに気付くべきである。

ここまで言えば、読者にも現在の世界市場の状況が分かってもらえると思う。日経平均はそうした危機的状況にあるのである。

そして米国株はその次だろう。アメリカの金融引き締めであるにもかかわらず、アメリカの市場が下落するのは一番最後なのである。

これからの相場が具体的にどういう相場になるかと言えば、暴落といっても1日や2日で起こるわけではない。下落相場とは参加者が下落相場と気付かない間にやってくるものであり、上下動を繰り返しながら下落してゆく長い弱気相場が始まるだろう。2007年から2008年までの下落相場を思い出したい。金融危機であっても、下落には2年かかったのである。

先ずは日経平均がこの下落相場に入り、次に米国株が続くだろう。上で述べた通り、金融引き締めの期限は最低あと1年ということなので、リーマンショックの時の半分の下落時間・下落幅で終わる可能性もある。しかし、下落相場の終わりを予想するのはあまりに時期尚早だろう。

因みに、先進国までリスクオフの相場となれば、ドル円は当然円高に振れるだろう。ドル円の推移予想については以前詳しく書いているので、そちらを参考にしてほしい。

危機的な相場が迫っているのである。投資家としては楽しみでもある。今後も世界市場の情勢をリアルタイムに分かりやすく説明してゆく。