引き続き、Tudor Investmentのポール・チューダー・ジョーンズ氏のInvest Like The Bestによるインタビューである。今回の記事では米国株の株価水準について語っている部分を紹介したい。
米国株への長期投資
NISAとやらが流行って以来、S&P 500を買ってそのまま置いておけば儲かるということがしきりに言われている。言われ始めて以来、米国株は日本株など他の国の株式よりパフォーマンスが低くなっているが、2026年現在もそう思っている人は一定数いるようである。
それでもマイナスにはなっていない。むしろ上がっている。ゴールドよりも日本株よりも上がっていなくても、それでも上がっているのである。ドルや円に比べれば。
仮に他の銘柄よりも良い投資にならないとしても、米国株はドルや円で持っているよりは良い投資なのだろうか。しかしジョーンズ氏は次のように語っている。
問題は、株価収益率が22倍という今のバリュエーションでS&P 500を買えば、歴史的には10年後のリターンはマイナスになるということだ。
米国株のバリュエーション
ジョーンズ氏が言っているのは、米国株は割高だということである。
投資家なら誰でも知っているように、割高だからといって直ちに株価が下落するということではない。株価のバリュエーションは上昇や下落のタイミングを当てる道具としては使えない。割高な株が更に割高になることはいくらでもあるからである。
しかし長期的なパフォーマンスという点で言えば、バリュエーションという指標はそれよりも優れた性能を発揮する。
それでも、よく言われるのは、過去100年米国株は上がってきたではないかということである。
それに対してジョーンズ氏は次のように言っている。
過去100年のリターンを見れば、S&P 500は素晴らしい投資だ。だがそれは100年の平均で、その100年には株価収益率が今の3分の1ほどの6〜8倍だった時期が含まれている。
S&P 500に投資している人の中で、過去30年とか過去100年のS&P 500のパフォーマンスがどうだったかという話を聞いたことのある人は少なくないだろう。しかし、その100年の中には10年が10回あり、それぞれの10年をしっかり見た人がどれだけいるのだろうか。
その中には様々な10年がある。株価が割高だった時期もあれば、割安だった時期もある。そして、ジョーンズ氏によれば、株価が今ほど割高だった時期に投資をすれば、10年後のリターンは良くないのである。
長期投資をするのに、わざわざ割高な時期に米国株に投資をする理由があるのだろうか。ジョーンズ氏は次のように纏めている。
バリュエーションは極めて重要だ。そして今の株価は非常に高い。長期的に見れば、ここから利益を出すのはかなり難しいだろう。
株価とインフレ
更に言えば、そうした人々が考慮していないのはバリュエーションだけではない。インフレかデフレかである。
株式は、デフレの時期に金融緩和によって大きく上がり、インフレの時期には金融緩和が自由に出来なくなることによってパフォーマンスがむしろ下がる資産クラスである。
そしてインフレの時期の株価のパフォーマンスについては、コロンビア大学におけるウォーレン・バフェット氏の師にあたるベンジャミン・グレアム氏が名著『賢明なる投資家』において説明してくれている。
グレアム氏は1970年代の物価高騰時代の初頭にこの本を書いたが、その後のインフレにおいて株式のパフォーマンスはグレアム氏の予言通りとなった。
2020年台のインフレにおいてはどうなるだろうか。多くの人は、そういうことはまったく知らずにS&P 500に投資し続けている。
