米国株全体の下落をよそに20%以上高騰するハイテク株

新型コロナウィルスの世界的流行で株式市場は全体的には下落相場となっているが、中には高騰している銘柄もある。その典型的な例はハイテク株だろう。

下落相場でも上昇する銘柄

新型コロナウィルスによる世界的な都市ロックダウンで店舗も閉鎖を余儀なくされるなかほとんどのビジネスが停滞しているが、中にはむしろ売上が上がっていると思われる企業もある。

典型的なのがAmazon.comだろう。この下落相場で年始から20%以上高騰している。

アメリカやヨーロッパの多くの都市では買い物に行くことも難しくなる中インターネットで商品を注文する人が増えており、Amazon.comは注文が殺到していることから従業員を増やしたり、食品の新規注文を一時停止して順番待ちリストを作成するなど需要増加の対応に追われている。

また、自宅で暇な時間が増えたため、インターネット上で映画などを見られるNetflixも利用者が増えているようだ。

こちらは年始から30%ほどの急騰となっている。

株価の水準としてはここから買えるかどうかは微妙である。しかしこうした銘柄の高騰はアメリカの量的緩和と2兆ドルの経済対策で資金が行き場を失っていることが読み取れる。それは金価格の上昇も同じことである。以下は金価格のチャートである。

面白いことに金相場とハイテク株がほとんど全く同じような動きをしている。これは資金流入によるバブル相場なのである。

下落する銘柄も

一方で、全体が下がっている分下落している銘柄の方が多い。典型的なのは航空株だろう。何度か紹介しているアメリカの格安航空会社JetBlue Airwaysのチャートを再掲したい。

下がってはいるが、JetBlueは国内線を運行しているため、国際線を運行するAmerican AirlinesやDelta Air Linesなどよりも回復が早いはずである。国内線は国内のロックダウンが終了すれば飛ばせるが、国際線は国境が開かなければ再開できない。

JetBlueの株価水準については2月の高値の2分の1では買えないが、3分の1ならば買えると以前に申し上げたことを繰り返しておこう。

また、銀行株も調子が悪い。数日前に決算を発表したJPMorgan Chaseなどの大手銀行は今後予想される不良債権を事前に計上したことによって大幅減益となった。

中央銀行の利下げと量的緩和によって低金利となっていることも銀行株には長期的なマイナスである。顧客から預かった資金を長期の債券などに投資して金利収入を得ることが銀行のビジネスだからである。

また、航空株は飛行機が飛べば売上回復、飛ばなければ低迷と今後の業績がはっきりしている一方で、銀行株は新型コロナの隠れた影響を一身に受けることになる完全なブラックボックスであると言える。

新型コロナによるロックダウンで多くの事業者が売上の立たない状況に陥っており、今後債務不履行となるケースがどんどん出てくるだろう。

その悪影響を一身に受けるのが銀行株ということになる。しかも中央銀行の政策を考えれば金利は当分上がらないだろう。銀行にとってはかなり難しい環境となる。

結論

このように、同じ米国株でも業界によって状況が大きく異なっているのが現在の相場の特徴である。無制限の量的緩和と2兆ドルの経済政策で一部の相場がバブルになる一方で業績が急激に悪化している業界は多い。米国株全体のチャートは次のようになっている。

しかし実際には株式市場はこの1枚のチャートでは言い表せないいびつな状況になっていると言うべきだろう。多くの企業が売上減少で困る一方でまだ投資できる投資先にだぶついた資金が集中しているのである。

そしてその明暗は既に始まっている決算発表シーズンを通してよりはっきりするはずである。以下の記事には決算スケジュールを掲載しているので投資家には要確認である。

よって1週間ほど何度も言っているように、ここからは銘柄選択が非常に重要な相場となるだろう。

そして恐らく、比較的パフォーマンスが良くなるのはハイテク株のように新型コロナの悪影響を比較的受けない銘柄、そして逆説的だが航空株のように悪影響が既にはっきりしていて株価に織り込まれている銘柄だろう。両方ともどの水準の株価で買うかが非常に大切になってくるので、その計算は各自怠らないことをお勧めする。

ハイテク株について言えば、恐らくAmazon.comやNetflixよりもまだ割安と言えるのは、3月末に買い推奨をしたAlphabet(Googleの親会社)だろう。

3月末の株価で魅力的だと言った以上今の株価でも同じように魅力的だとは言わないが、世界的なロックダウンでインターネット利用時間は増えているはずであり、オンライン広告を主戦場とするAlphabetにはAmazon.comやNetflixに劣らずプラスになっているはずである。

一方で銀行株など新型コロナの悪影響がまだはっきりと分かっていない業界はお勧めできないということになる。繰り返しになるが、ここからは銘柄選択が非常に重要な局面となるだろう。同じ航空株でも国際線より国内線といったように、ロックダウン解除で早期に恩恵を受けるのがどの銘柄かをかなり細かく考えていかなければならない。

前の記事で書いた通り、筆者は個別株を保有しながらも同額の株価指数の空売りを行なっているので、株式市場全体に対する相場観はイーブンである。

筆者の主戦場はやはり原油相場である。しかし株式市場についても今後ともフォローしてゆく。