世界最大のヘッジファンド: なぜ中国経済は優れているのか

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が西洋中の批判を浴びながらも(そして恒大集団のデフォルトにもめげずに)中国推しを続けている。

ダリオ氏の中国推し

ダリオ氏は以前よりアメリカが没落し中国経済がアメリカを追い越すという主張を続けている。

その中国推しが多くの西洋人の気に障ったらしく、テレビで公開処刑に近いことまでされている。西洋で多数派に同意しない人間がどう扱われるかをよく物語っていると思う。

しかしダリオ氏はそれでもめげずに中国推しを続けている。彼は中国を推す理由をYahoo Financeのインタビューで次のように説明している。

中国の人口は米国の4倍ある。だから中国人が米国人の平均収入の半分を得た場合、中国経済は米国経済の2倍大きくなる。

わたしが中国に行き始めたのが1984年のことだが、その時から中国人の実質所得は26倍に上がった。

ダリオ氏の計算は勿論合っている。しかしそれはインドなど人口の多い別の国にも言えることだ。何故中国だけそういう計算が出来るのだろうか? 問題は、アメリカ人の所得の半分を中国人が稼げるようになるかという点である。

読者も知っての通り、筆者はダリオ氏の中国推しに与していない。しかしこの点に関してはダリオ氏がある程度正しいと思っている。その理由はダリオ氏が次のように説明している。

中国の長い歴史を振り返れば、1800年まで中国は常に世界1位か2位の大国だった。中国は人口が多く、歴史的に見て生産性も高いからだ。

歴史的に見れば、中国人は高い生産性を持っている方が普通で、これまで100年のように「メイド・イン・チャイナ」が酷いクオリティだった時代の方が例外的なのである。それが普通の状態に戻るならば、ダリオ氏の言う状況に当然なるというだけの話なのである。

中国の経済見通し

だから中国はいずれ世界1位の経済大国になるだろう。これは日本が1位になれなかったバブル崩壊の時とは違う。日本と中国では規模が違うからである。日本人が中国人より生産性が高くとも、日本は1位になれない。

だがダリオ氏には申し訳ないが今後数年の話をするのであれば中国経済はもう駄目だ。中国政府自身が一番よく分かっており、それを公にも認め始めている。

しかし日米欧のようにバブルを緩和で延命せず、自国の不動産バブルに終止符を打とうとしている中国政府の方針は経済学的に正しい。だから筆者も長期的には中国経済に強気だ。下らないバイアスに惑わされずに冷静に歴史を見られる人は、その判断が正しいことがすぐにでも分かるはずである。

しかしダリオ氏と筆者では今後数年の中国へのスタンスは大幅に違う。正直に言えばダリオ氏をちょっと心配しているが、どうなるだろうか。