コモディティの高騰止まらず、原油や金は高値更新目指す勢い

世界的なインフレが話題になっているが、投資家、特にここの読者にとってはもう2年前から注目してきた古い話である。

このインフレの兆候は金融市場ではずっと確認されてきた。何故ならば、店に並ぶ商品の価格が上がる前に、金融市場では原油や小麦などの先物価格が上がるからである。

そして金融市場における価格上昇はもう2年前からの話なのである。

だが去年分の先物価格上昇がようやくスーパーに並ぶ食料品の価格に転嫁されてきたところで、今の先物価格がどうなっているかと言えば、容赦なく上昇を続けている。今回の記事ではそれを再確認したい。

上昇続ける原油価格

まずはインフレの中心にある原油価格である。原油価格のチャートは次のようになっている。

原油はロシアのウクライナ侵攻後、原油価格は高騰してから一旦下がった。この下がったタイミングで筆者は次のように書いておいた。

西洋人は原油も天然ガスもロシアから資源を買うのも嫌だという。この状況で西側の原油価格はどう考えても長期的に上がらざるを得ない。

投資家の観点から見れば、1バレル100ドルという今の水準は、将来の水準を考えればむしろかなり安いはずだ。

だから一度ほとんどウクライナ前の水準まで戻った原油価格を見て短期的に安いと書いた。そしてやはり、今のところその水準から下には行かず、上昇トレンドを継続している。

貴金属の上昇開始か

次は現物資産の代表格であるゴールドとシルバーを見てゆきたい。まずは金価格チャートからである。

金価格は去年は金融引き締め開始に反応して長らく低迷相場が続いていた。しかし金価格については十分下げたとして、去年の11月に次のように書いている。

金価格は既に去年の高値から下げているので、来年に予想される株安に連動して下がってもここ数ヶ月の底値程度までだろう。つまり、金価格は恐らく底を打ったと言える。

チャートを見てもらえば完璧なタイミングだったことが分かってもらえるだろう。

また、ゴールドよりも上昇余地が大きいのがシルバーである。銀価格のチャートは次のように推移している。

シルバーは軒並み高騰するコモディティの中での出遅れである。チャートを見ての通り、ようやく反転が始まるだろうかという段階である。

シルバーについてはウクライナ危機後に暴騰した小麦(ロシアとウクライナが主要輸出国である)を一部利益確定して乗り換えたことを報告した。

ウクライナ情勢においてはアメリカがNATOの対ロシア戦争に賛同しない無関係の国々を経済制裁で脅しており、世界的にドルから離脱しようとする動きが見られる。

ドルを保有しているとアメリカの軍事的な都合で無価値にされてしまう。だからインドなど西洋の戦争に関わりたくないまともな国々の中央銀行は、ドルの保有を減らして貴金属に走るだろう。それがクレディスイスのゾルタン・ポズサー氏の予言である。

だから貴金属の高騰はまだ始まったばかりの大きなトレンドなのである。

農作物の高騰

そして最後に農作物の価格を確認しておこう。一般の人々にとってはこれが一番重要かもしれない。

まずはロシアとウクライナが主要輸出国であるために高騰した小麦である。小麦はウクライナ前の水準から一時70%近く高騰した。

筆者が小麦の購入を奨めたのは1月の以下の記事である。

当時の小麦は今のシルバーのような出遅れ銘柄で、ウクライナ危機がなくとも長期的にはそれぐらい上がっただろうが、ウクライナで達成が急激に早まったのは言うまでもない。それで一部利益確定して出遅れのシルバーに移したのである。

だが小麦もここ最近そこそこ反発している。それでも長期的な上昇余地はシルバーの方が大きいだろうが、それにしてもパンの値段はこれからどうなってゆくのだろうか。

また、上記のスタグフレーション投資法の記事では他にとうもろこしの買いを推奨しているが、とうもろこしの値段は次のように推移している。

この高パフォーマンスの理由は、とうもろこしはバイオエタノールの原料であるため、原油価格高騰に連動するからである。NATOの対ロシア戦争と脱炭素政策で化石燃料を高騰させて自滅してゆく西洋に付き合わないためには、原油価格に連動するコモディティの買いが必須である。

結論

コモディティ価格は本当に物凄い勢いで上がってゆく。そしてそれは店に並ぶ商品の物価にこれからも転嫁され続けるという意味である。

ジェフリー・ガンドラック氏が統計的なトリックを理由にインフレ率がピークになると予想しており、筆者もそれを認めてはいるが、残念ながら金融市場のコモディティ価格は上がり続けている。

今後、インフレ率は数字の上ではある程度下方圧力を受けるだろうが、それでも上昇は止むのだろうか。

現在のコモディティ価格上昇が力強いと言えるのは、株の下落相場でそれが起こっているからである。通常、株が下がればコモディティも下落する。それでもコモディティが上がっているということは、それだけインフレが深刻だということである。

ますます酷くなるインフレを避けるためには、やはり投資を使うしかないだろう。以下の記事ではコモディティの買いの他に、一定の資産の空売りを組み合わせることを推奨している。

今のところほぼ完全にこの記事の通りになっているので、参考にしてもらいたい。