ウクライナ危機の後に下落したコモディティは買いか?

さて、最近の記事では今後恐らく10年程度は続くであろうインフレの時代や、人々の資産の保有方法が貯金や国債からゴールドなどのコモディティに移るという長期の話をしてきた。

だがインフレを避けるためにコモディティを買うにしても、足元の相場の動きがどうなるのかを知る必要があるだろう。そこでこの記事では直近のコモディティの相場動向について確認してみたい。

2022年のコモディティ市場

去年からのコモディティ市場の動向はこうである。まずコロナ後の現金給付や化石燃料の生産を減らす脱炭素政策によってインフレが懸念されており、それを先回りするように金融市場では金属やエネルギー資源、農作物などのコモディティ価格が上がっていた。

そこに起こったのがロシアのウクライナ侵攻である。

ロシアは言うまでもなく原油や天然ガス、ニッケルなどの鉱物資源の世界最大級の輸出国である。西洋諸国、特に天然ガスについてロシアに大きく依存しているEUが、ロシアからの輸入を制限し始め、それを無関係の他国にも強要し始めた。

元々需要に対してコモディティが足りずに価格が高騰していたところに、日本を含む西洋諸国は世界最大級の生産者からコモディティを買わないと言い始めた。

結果、ウクライナ危機で原油などのコモディティ価格は急騰したのだが、その後落ち着いている。

ウクライナ後のコモディティ相場

例えば原油価格のチャートは次のようになっている。

その後の下落でウクライナ前の水準に近づくほど下がっている。

これはウクライナ情勢を受けてアメリカなどが原油の備蓄を放出する方向に動いていることを受けた動きだが、投資家は短期的な動きを見たとき、常に長期的なトレンドを思い出さなければならないだろう。

アメリカのインフレ率は7.9%にまで上がっており、これは1970年代の物価高騰に匹敵する長期のインフレトレンドである。

また、西洋諸国が自分の経済からロシアを切り離し、西側と東側が分離してゆくというグローバリゼーション終焉トレンドもまだ始まったばかりで市場にはほとんど何も織り込まれていない。

西洋人は原油も天然ガスもロシアから資源を買うのも嫌だという。この状況で西側の原油価格はどう考えても長期的に上がらざるを得ない。

投資家の観点から見れば、1バレル100ドルという今の水準は、将来の水準を考えればむしろかなり安いはずだ。これは同時に、消費者にとって上昇している今のガソリン価格は、未来の価格と比べるとむしろかなり安いくらいだということを意味する。

だからこれは投資家だけの問題ではない。多くの日本国民は銀行や金融庁に騙されて米国株を買っている場合ではなく、むしろコモディティETFを買って、現金給付や脱炭素政策やNATOの対ロシア戦争という政治家の都合で引き起こされたインフレという人災に備えるべきなのである。

高止まりする農作物

何故ならば、これはガソリン価格や電気代の高騰だけでは済まないからである。

例えばロシアとウクライナは両方とも小麦の輸出国であり、輸出が制限されるという予測から小麦価格が高騰している。

小麦はインフレ対策で筆者が年始から投資している資産である。筆者は短期的な上がり過ぎからほとんど頂点のタイミングで一部利益確定しているが、その後もウクライナ以前の水準に戻るほどは下がっていない。

投資家はインフレがエネルギーから農作物にも波及してゆくシナリオに気付いているのだろう。農作物は一般に原油ほど下がっていない。例えば筆者がウクライナ危機で利益確定せずポジションを維持し続けているとうもろこしは高止まりを続けている。

割安な貴金属

だから短期的には農作物より原油の方が安いと言えるだろう。だが他に安いものと言えば、貴金属である。まず代表格であるゴールドもウクライナ以前の水準に下がっている。

しかしウクライナで明らかになったのは、西側の戦争行為に賛同しない人間は経済制裁を課されるという事実であり、中立を保つ中国やインドはドルやユーロや円からの離脱を考えている。

これは非常に大きなトレンドである。そしてその中核を担うのはゴールドである。現物のゴールドを自国の金庫に仕舞っておくのが経済制裁に対する一番の防衛だからである。

これは2022年から始まる通貨革命とも呼ぶべき巨大トレンドなのだが、今の金価格はこの巨大なトレンドを何も織り込んでいない。最終的には、マイナード氏が予想していたシナリオへと突き進んでゆくだろう。

だが筆者が更にお勧めするのはシルバーである。シルバーの価格はリーマンショック後の量的緩和によるコモディティバブルの頃の高値の半分にも達していない。

だが今では量的緩和の頃には起こらなかった規模のインフレが起きている。シルバーは当時の高値を軽々と越えてゆくだろう。

結論

ということで、コモディティ市場の現状は以上のようになっている。ウクライナ後の価格推移を取り上げるべきだと思ったのでおさらいしてみた。

長期インフレトレンドにおけるコモディティ価格の大暴騰は既定路線である。だが短期的には、金融引き締めによる2022年の株価暴落で、コモディティ相場も短期的に下方向への影響を受ける可能性がある。

だから年始の記事から主張しているように、少なくとも株価が暴落するまでは、コモディティの買いには同額の株式の売りを組み合わせるべきである。

詳細についてはこの記事に書いてあるので、参考にしてほしい。最新の情報を色々書いてはいるが、本質的には年始の時点ですべて既に予想しており、市場は単にそのまま推移しているだけなのである。