ドラッケンミラー氏、NVIDIAを大幅買い増し AI銘柄かつ暗号資産銘柄

さて、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fの季節がやってきた。

今回はジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィス、Duquesne Family Officeのポートフォリオから紹介してゆきたい。

ハードランディングで保有する株式銘柄

2021年にアメリカの物価高騰を予想したドラッケンミラー氏は、今アメリカ経済のハードランディングを予想している。

インフレ抑制のための金融引き締めが実体経済を破壊すると考えているからである。

ドラッケンミラー氏はいまどんな株式を保有しているのか。ドラッケンミラー氏についてはこれまでインタビューの内容を紹介してきたから、ここの読者であれば予想が付くのではないか。

彼は次のように述べていた。

だがもしアメリカ経済がハードランディングに向かっていて酷い景気後退になるとしても、それでNVIDIAのような企業がどうなるかは分からない。

景気後退になっても、その間大きく成長し続けている企業はどうだろうか?

そういう株が下がるかどうかは分からない。

NVIDIAを大幅買い増し

実際、今回開示された3月末時点でのポートフォリオを見てみると、予想通り半導体大手のNVIDIAが買い増しされている。ポジションの規模は2.2億ドルで、2番目に大きいポジションとなっている。前回12月末の開示から保有株数が36%増加している。

NVIDIAの株価は次のように推移している。

ハイテク企業の筆頭らしく、金利上昇に弱いNVIDIAはインフレによる2022年の金利上昇相場で大幅下落したが、その後秋にアメリカのインフレ減速が明らかになると、金利低下の波に乗ってNVIDIAの株価は大幅に回復した。

ハイテク株の中でもNVIDIAは上昇率がかなり大きい。何故ならば、CPUよりも高度な計算が可能なGPUを生産するNVIDIAは、AI銘柄であるとともに暗号資産銘柄でもあるからである。

今後の成長産業を一挙に引き受けるような銘柄であり、去年の安値から2倍以上に上がっている。筆者もアメリカ経済のハードランディングがあったタイミングで株価が下がれば買いたいと思っているが、ドラッケンミラー氏の言う通り、そのタイミングが来るかどうかは分からない。

最大ポジションはCoupang

NVIDIAを越える最大ポジションは韓国のAmazon.comと言われるCoupangである。ポジションの規模は3.0億ドルである。

アメリカでの金利低下以降上がったとは言い難いが、とりあえず底打ちしたようには見える。ちなみにこの銘柄は長らくドラッケンミラー氏の最大ポジションとなっている。

復活したMicrosoftの買いポジション

さて、3番目に大きいポジションは今回新たに追加されたMicrosoftである。規模は2.1億ドルである。株価は次のように推移している。

Microsoftは新規ポジションだが、ドラッケンミラー氏はコロナ後の上昇相場でMicrosoftを大きく買っていた。今回またポジションとして復活したわけである。

AIサービスを提供するMicrosoftもAI銘柄であり、それ以上にクラウド銘柄である。どちらも成長産業であり、ドラッケンミラー氏のお気に入りの選択肢となるのも頷ける。

Eli Lillyは一部利益確定

Microsoftに次いで規模が大きいのは製薬会社のEli Lillyである。ポジション規模は2.1億ドルとなっており、株価は次のように推移している。

Eli Lillyは株式市場全体が下がった2022年にも上昇を続けた珍しい銘柄である。

ディフェンシブ銘柄だということもそうだが、市場ではアルツハイマー病の進行を遅らせる新薬が話題になっており、連日の高値更新となっている。新薬の開発が成功するかしないかということも、市場でよく賭けの対象となるシナリオである。

ちなみにドラッケンミラー氏は今回保有株数を18%ほど減らしている。順調に上がったので一部利益確定ということだろう。

結論

ちなみにForm 13Fでは空売りのポジションは開示されないが、ドラッケンミラー氏はインタビューで以下のように述べていた。

株式のポートフォリオは差し引きで3%の空売りになっている。

差し引きでは何もしていないようだが、わたしにはいつも買いたい銘柄と売りたい銘柄がある。

買いたい銘柄の方は、第3位まではすべてハイテク銘柄ということになった。持つならばハードランディングでも成長維持できる企業ということなのだろう。ディフェンシブ銘柄であるEli Lillyも含め、やはりアメリカ経済に対するドラッケンミラー氏の暗い見通しが反映されていると言える。

他のヘッジファンドマネージャーらはどんなポジションになっているだろうか。そちらも紹介してゆくので楽しみにしていてもらいたい。