引き続き、ポール・チューダー・ジョーンズ氏のBloombergによるインタビューである。
今回はインフレ相場でインフレに打ち勝つために投資家は何をすれば良いかについて語っている部分を紹介したい。
ジョーンズ氏のインフレトレード
これまでの記事でジョーンズ氏は、来年5月にFed(連邦準備制度)のパウエル議長が退任することをきっかけに、トランプ政権は低金利政策を実行しドルは下落すると予想していた。
だがドルの下落に賭けるとしても、日本円など他の通貨にも問題があるので、単純にドル円の下落に賭ければ良いという問題でもない。
ではどうするか。ジョーンズ氏は次のように述べている。
ゴールドと、ボラティリティ(訳注:上下動の激しさ)を考慮した量のビットコイン、そして株式の組み合わせ、それが恐らくインフレに打ち勝つための最良のポートフォリオだろう。
ビットコインのボラティリティはゴールドの5倍だから、明らかにポジションの規模を調整する必要がある。
トランプ政権は経済成長を望む
ゴールド、ビットコイン、株式という組み合わせは、明らかに金融緩和で市場と経済が過熱する時のトレードである。
ジョーンズ氏が経済に強気である理由は、まずパウエル議長の後任となるFedの新議長である。
候補として名前が報じられているのは、元Fed理事のケヴィン・ウォーシュ氏、そしてここの読者にはお馴染みの財務長官スコット・ベッセント氏である。
この2名についてジョーンズ氏は次のように述べている。
両方とも素晴らしい候補だ。本当に素晴らしい候補だ。
特にベッセント氏はジョージ・ソロス氏のSoros Fund Managementを運用していた世界的なヘッジファンドマネージャーである。
ジョーンズ氏は次のように続けている。
トランプ大統領は経済成長を望んでいる。忠誠心と経済成長を望んでいる。
経済成長という点で言えば、スコットはケヴィンよりも適しているだろう。
それこそがジョーンズ氏が株式も含めて経済過熱寄りのインフレトレードを推す理由である。
ジョーンズ氏はアメリカの今後の政策について次のように予想している。
もう一度言うが、わたしが大統領なら実質金利を極めて低く抑え、インフレを押し上げ、政府債務を解消するために消費税を上げるだろう。
それはまさに債務状況が一番悪化している日本がやっていることだ。それはインフレが強くなり過ぎて国民が政治家を追い出すまで機能する。
日本では、国民がそういう政治家を追い出さないのでいつまでも機能している。消費税は上がり、インフレでコメの価格まで上がり始めたが、日本人は従順に従っている。
だがアメリカ人は恐らく日本人ほど従順ではないので、消費税を上げられるかどうかは微妙である。しかしそうであってもジョーンズ氏のポートフォリオにはプラスにしかならないだろう。
結論
ジョーンズ氏は、金利上昇で米国債の利払いが急増している状況で、アメリカの政府債務がどう解決されるかを考えているのである。
ジョーンズ氏は次のように述べている。
恐らくこれからは3%か3.5%程度のインフレに、2.5%の政策金利が普通になるだろう。そして経済を過熱させて債務をインフレで帳消しにする。
結局、政府債務は解決される。しかしそれは、日本で既にそうなっているように、増税とインフレと通貨安という形で国民が負担して解決されるのである。デフォルトと景気後退は政治的に困難だからである。
歴史上の大国が政府債務をどのように解決したかを解説し、現在の覇権国家アメリカの衰退を予想しているレイ・ダリオ氏の『世界秩序の変化に対処するための原則』においても、結局ドルの価値は下落するしかないと予想されている。
そしてその時に上昇するのは、ドルの代わりになれるものである。だから貴金属の価格が上がっている。