イギリスのEU離脱が無くとも円高株安は続く、そしてドル円は80円台まで暴落する

6月23日の国民投票でイギリスがEU離脱を選択したことで市場が荒れているが、今後の相場見通しを気にしている人も多いだろうから、この記事ではその話をしておこうと思う。

結論から言ってしまえば、EU離脱が実体経済にもたらす影響そのものはそれほど考慮せずとも良い。しかしEU離脱のもたらしたリスクオフは、わたしがこれまで予想し続けているドルの長期見通しの実現を早めることにはなるかもしれない。それはつまり、去年から言い続けている通り、ドルの暴落であり、そうなればドル円に依存している日経平均は特にただでは済まないだろう。

国民投票後の金融市場

先ずは国民投票後の市場の反応から復習しておこう。株は下落し、ポンドは売られた。リスクオフは円高をもたらし、その結果日経平均の下げ幅はかなりのものとなった。

だがボラティリティの高い市場で、一日の下げ幅などいくらであろうともあまり気にする必要はない。あるいは、それを気にしなければならないようなポジションを取っている投資家がいるとすれば、単刀直入に言えばそのポートフォリオが間違っているということである。わたし自身、国民投票の前後においても元々のポートフォリオをただ放置し、結果的には利益を得ることになった。ソロス氏と同様である。

しかし、短期的な反応は脇に置くとしても、中期的に相場はどうなってゆくのか? それを考えるためには、Brexitが金融市場に対して実質的にもたらしたものを考えなければならない。少なくとも2年間は何の変化ももたらさないEU離脱が市場に影響するとすれば、それは離脱が実体経済に影響するためではなく、リスクオフが為替相場と金利に影響するためである。

Brexitの一番大きな結果が何かと言えば、ドル高である。円ばかり見ている日本人には何を言っているのか分からないかもしれないが、国民投票の結果ドルは相対的には上がった。イギリスのポンドと同時にユーロも大きく下がったためである。以下のチャートを見れば明らかなように、ユーロドルはユーロ安ドル高で反応している。

2016-6-26-eurusd-chart

前々から何度も言っているが、為替相場で一番重要な通貨ペアはユーロドルであり、為替を取引していながらこのチャートを見ないというのは投資家として有り得ない。ユーロ円などという日本人しか見ないチャートはほとんどの場合脇に置いて良いのであり、円を中心に考える日本人を除く世界の投資家の印象としては、イギリス国民投票の結果は間違いなくドル高なのである。

ドル高がもたらすもの

ではドル高であれば何が起こるのか? 既に起こっていたアメリカ経済の減速が進み、利上げが行いづらくなるのである。

アメリカ経済の減速についてはアメリカ経済がまだ好調だった昨年末からわたしが予測し、そして最近の経済データによってその正しさが確認されている。

アメリカ経済が目に見えて減速してきたことにより、最近の為替市場ではドル高の傾向はユーロに対しても弱まってきていたのだが、今回のEU離脱で為替は再びドル高方向へとシフトした。

アメリカ経済が減速していた原因の一端は、高いドルがアメリカの輸出業を圧迫していたことにあり、これが緩和されるならば減速スピードも弱まるかと想定していたのだが、EU離脱によりドル高が再開するのであれば、アメリカ経済も引き続き減速してゆくことになるだろう。

更に近づくアメリカの量的緩和再開

これが金融市場にとって何をもたらすかと言えば、アメリカの量的緩和再開が近づいたということである。

2016年から2017年にかけて起こるシナリオは2つある。アメリカがこれから数度の利上げを行い、実体経済がそれに耐えられずに景気後退入り、量的緩和の再開を余儀なくされるか、あるいはこの時点から一度も利上げ出来ずにアメリカ経済の減速が続き、量的緩和の再開を余儀なくされるかである。個人的にはどちらでも良いようにポジションを組んであるのだが、EU離脱はどちらかと言えば後者のシナリオに近づいたことを意味するだろう。

アメリカが量的緩和を再開すれば、量的緩和によって円を下落させた日本の金融政策の成果はすべて巻き戻ることになる。それはつまりドル円が80ドル台まで下落することを意味している。そうなれば日経平均もかなりの程度暴落することになるだろう。

前回の記事に書いた通り、ジョージ・ソロス氏もこのシナリオに賭けている。アメリカの量的緩和再開は、優れたヘッジファンドマネージャーの間ではもはや新しいシナリオではない。随分前から皆が主張していたことである。

だからイギリスの国民投票によって市場が荒れたとしても、それは元々想定されていたシナリオが前倒しになったに過ぎない。

ではEU離脱そのものの実体経済への影響は考慮しなくとも良いのか? 本来はその通りだろう。スイスもノルウェーもEUの外で十分上手くやっている。イギリスがEUの外で上手くやれない可能性があるとすれば、EUがスイスなどに認めた権利を、EU離脱の逆恨みでイギリスに認めない場合である。

しかしEUがそのようなことをすれば、ヨーロッパ内でのEUへの反発はより強いものとなるだろう。EU官僚たちのイギリスへの強硬姿勢が、イギリス国民のEU離脱への投票を後押ししたという事実に、彼らはいまだに気付いていない。

彼らは離脱したイギリスに強硬姿勢を見せることで他の加盟国が離脱に走るのを牽制したいのだろうが、そのような恐怖政治から人々が尚更逃げ出したくなるのは当然の帰結である。しかしEU官僚たちが人々の気持ちを理解することはない。

だからEUは既に終わったのである。沈みかかった泥船に乗らないということに関してイギリス人の右に出る国民はない。今回もその通りになっただけのことである。