引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏とデイヴィッド・ローゼンバーグ氏の対談である。
今回は、ローゼンバーグ氏が金相場の上昇について語っている部分を紹介したい。
金価格の上昇
金価格が上昇している。ローゼンバーグ氏は次のように始めている。
ゴールドをずっと買い続けているのは中央銀行だ。中央銀行の買いは、価格が割高か割安かなどとは関係がなく、ただ長期的に行われる。
厳密に言えば、ゴールドを買っているのはBRICS諸国や中東諸国などの中央銀行である。
ジョニー・ヘイコック氏が次のように言っていたことを思い出したい。
すべての中央銀行が現在ゴールドを外貨準備として増やしているわけではない。増やしているのは東側諸国の中央銀行だ。
中国、ロシア、インド、ブラジル、トルコ、これらは一部で、西側の国もある。だがゴールドを買っている中央銀行の多数派は東側の中央銀行だ。それは西側から東側への権力の移行なのだ。
ちなみにこれは去年10月の記事である。信じられるだろうか。その後の金価格の推移はすべてこの記事に書いてある。
非西側の、つまりアメリカの顔色を伺わなくて良い国々は、アメリカが債務問題を解決するためにドルの価値を下げようとしていることに気づき、外貨準備のドルを売り払ってゴールドを買っている。
それが、金価格が特にここ2年ほど上がり続けている理由である。

金価格の長期的な推移
もう少し状況を大局的に、長期的に見てみよう。ローゼンバーグ氏は次のように言っている。
中央銀行はかつて20年間、ゴールドの保有割合をポートフォリオの70%から10%へと減らしたことがある。
これは、1970年代のインフレで金価格が20倍以上に上がった後、インフレが収まった1980年代から2000年頃までの話である。
このデフレの時代において、金価格は大幅に下落し、中央銀行のポートフォリオの70%を占めていたゴールドは、たった10%を占めるだけになった。
だがそれが底であり、ゴールドはそれ以来長期的に上がり続けている。
ローゼンバーグ氏は次のように言っている。
ゴールドの上げ相場は1999年後半に金価格が255ドルとなった時から始まった。
今、世界の中央銀行のポートフォリオの20%がゴールドだ。
結論
長期的な上昇には理由がある。リーマンショック後の量的緩和、コロナ後の現金給付など、金融緩和がどんどん悪化していることもそうだが、世界的に中央銀行がドルからゴールドへと資金を移しているからである。
だから、短期的な動向はさておき、ゴールドの長期的動向を知りたければ、金融緩和と中央銀行のポートフォリオの行方を予想すれば良い。
そしてローゼンバーグ氏は、次のようにもう1つ興味深い事実を挙げている。
家計の資産のたった1%だけがゴールドだという統計がある。金価格がこれだけ上昇してもだ。
つまり、これだけ金価格が上がっていても、買っているのは中央銀行と一部の先見の明ある投資家だけで、一般の人々はまだゴールドを買っていないということである。
金融政策と中央銀行のポートフォリオだけでもゴールドには追い風だが、一般の人々がインフレに対して本気で懸念し始めれば、金相場はどうなってしまうのだろうか。
そして恐らく、もしそうなれば、ゴールドよりもシルバーの方が大きな恩恵を受けると個人的には考えている。理由については以下の記事で説明しているので、そちらも参考にしてもらいたい。