ジム・ロジャーズ氏: 日本は買い、コモディティはほぼ全部上がる

ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを創業したジム・ロジャーズ氏がETのインタビューでコロナ相場とインフレ、コモディティ価格について語っている。

株式市場はまだバブルではない

コロナ以後、株式市場は大きく上がった。これはバブルなのだろうか? クォンタム・ファンドで多くのバブル相場を経験してきたロジャーズ氏はこう答える。

バブルが形成され始めている。だが債券以外のバブルはまだ出来始めだ。債券は完全にバブルになっている。

「形勢され始めている」ということはまだ完全なバブルからは遠いということだ。一方で債券だけは完全なバブルだという。

債券価格は世界中の中央銀行が直接国債を買い入れてきたことでかなりの高値まで押し上げられている。債券価格の上昇は金利低下を意味するため、金利が下がってきたということである。

ロジャーズ氏のバブルとの主張を例証するかのように金利の上昇(価格は下落)が始まっている。以下は米国の長期金利である。

しかし株式は債券ほどのバブルではないとロジャーズ氏は言う。ではどの国を買うべきだろうか? 他の著名投資家たちとは違い、ロジャーズ氏は以下の国を挙げる。

国で選ぶならば日本を買う。ロシアを買う。両方とも高値からかなり落ちているが紙幣印刷が市場に資金を流入させている。

ロジャーズ氏の選択は日本とロシアである。中国の将来性に賭けてシンガポールに移住までしたロジャーズ氏だが、中国を挙げなかった理由は定かではない。世界最大のヘッジファンドを運用するダリオ氏や、ロジャーズ氏の退社後にクォンタム・ファンドを率いたドラッケンミラー氏はともに日本を外して中国を挙げている。

恐らくはダリオ氏やドラッケンミラー氏は量的緩和なしで経済がもっている中国を評価し、ロジャーズ氏は量的緩和を理由に日本株に強気という別の見方なのだろう。事実ロジャーズ氏は日本経済自体については次のように述べている。

日本には酷い将来が待っている。わたしは日本経済にどんな災難が待ち受けているかについて日本でベストセラーを3冊書いた。しかし日銀が紙幣を印刷しETFを買うならばわたしもそうする。

ロジャーズ氏もインフレを予想

さて、著名ヘッジファンドマネージャーの間でコンセンサスとなっているのがアメリカにおけるインフレである。

紙幣印刷の結果は日本では増税となる。日本がインフレにならないのは給与所得者の給料の半分以上が社会保険料と所得税と消費税に消えるからである。アメリカではそうならないのでインフレとなる。ロジャーズ氏は次のように述べる。

今ではすべての中央銀行家が紙幣印刷は必要でインフレは起きないと主張している。歴史は紙幣印刷を続けると常にインフレが起こると教えている。

コロナ以後、レイ・ダリオ氏が指摘し続けてきた通りである。

インフレはアメリカでは既に統計に表れている事実だが、謙虚なロジャーズ氏はこう続ける。

もしかしたら中央銀行家たちが正しいのかもしれない。もしかしたら今回だけはインフレは起きないのかもしれない。しかし個人的には紙幣よりも銀に賭けたいと思う。

増税は避けられないがインフレは避けられる。その意味でアメリカ人はまだましである。貴金属を始めとするコモディティを買えばインフレの被害を受けずに済む。

一方でコロナによる景気後退を紙幣印刷で無理矢理持ち上げ、日本のような重課税を行わなければインフレ自体は避けられない。コモディティ投資の基礎について説明した『商品の時代』の著者であるロジャーズ氏はコモディティを一番の得手としており、銀投資に向かうのは必然と言えるだろう。

ロジャーズ氏は次のように続ける。

食品や燃料、実際にはほぼすべてのコモディティの価格が高騰するだろう。

債券は先に言った通りバブルだ。株式もバブルになりかかっている。コモディティは歴史的に見てかなり安い。銀価格はまだ史上最高値から45%も落ちている。

銀価格のチャートを長期で見ると次のようになる。

史上最高値はリーマン・ショック後の量的緩和による貴金属の高騰の場面で50ドルまで上がった。

今回のコロナ禍ではリーマンショックの倍の景気後退となっている。それを紙幣印刷と現金給付で無理矢理持ち上げなければならないとすれば、銀価格は何処まで上がるだろう?

ロジャーズ氏、ドラッケンミラー氏、ガンドラック氏の言っているのはそういうことである。

そしてコモディティというカテゴリにはビットコインが含まれている。最近になってファンドマネージャーがビットコインの話をし始めた理由は、ここの読者にはもうお分かりだろう。今が世紀の大相場の始まりなのである。


商品の時代