引き続き、Rosenberg Researchのデイヴィッド・ローゼンバーグ氏の、スティーブン・リン氏によるインタビューである。
今回はFed(連邦準備制度)の金融政策について語っている部分を紹介したい。
トランプ関税とアメリカ経済
トランプ政権の関税政策が延期されたことにより、株式市場は今のところ大幅反発している。S&P 500は次のように推移している。

だがこれまでの記事でローゼンバーグ氏は、関税は下げられただけでまだ存在している、米国経済は客観的に見れば厳しい状況にあるという現実を指摘していた。
そしてローゼンバーグ氏はその観点から、アメリカの金融政策もやがて経済減速に沿ったものになると予想している。
2019年の利下げ
ローゼンバーグ氏が持ち出すのは、コロナ前の2019年の利下げの事例である。
ローゼンバーグ氏は次のように言っている。
全く同じではないが、今と似た状況が2019年にあった。
2019年は、今と同じトランプ政権であり、2018年までの急激な利上げで株式市場が不安定になった翌年の話である。
Fedのパウエル議長は、2018年に自身の利上げによって株価が大幅に下がっていても、利上げを継続すると主張していた。
ローゼンバーグ氏は次のように述べている。
2018年の終わりにFedは市場に対し、2019年には2回利上げをすると主張していた。
Fedの議事録などを見れば関税や貿易やインフレに対する深刻な懸念が書かれていた。だから彼らは2019年に2回利上げをすると。
だが2018年の終わりには、パウエル議長の利上げ強行の姿勢のお陰で株式市場は崩壊していた。筆者は当時米国株の空売りをしており、パウエル議長が株安にもかかわらず利上げ継続を表明した2018年最後のFOMC会合の記事は以下の通りである。
この会合は結局、株式市場にとどめを刺した。それでパウエル議長は2019年には利上げどころか利下げを強いられることになる。
ローゼンバーグ氏は次のように述べている。
そして結局、コロナ前年の2019年の後半にはFedは何をしたか? Fedは3回利下げした。
結論
2018年の株安には色々な側面があった。利上げが株式市場の重しになっていたことは事実だが、同時に実体経済も利上げによって圧迫されていた。
高金利によって株価と実体経済の両方が圧迫されたことが、当時パウエル議長が利下げに転換しなければならなくなった原因である。
そして今年の見通しについてローゼンバーグ氏は次のように述べている。
今年も当時の繰り返しのようなことが起きると思う。
パウエル議長は今のところ利下げに慎重な姿勢を示している。だがローゼンバーグ氏は前回の記事で、政策金利が現在インフレ率よりも2%も高い状態で維持されていることを指摘している。
この金利がローゼンバーグ氏の言う通りアメリカ経済に対して高過ぎるものだとしたら、アメリカの利下げはこれからどうなるか。
また、筆者はこれと同時に、来年5月に退任になるパウエル議長の代わりにトランプ大統領は金融緩和に積極的な次期議長を指名すると予想しており、その候補者は今年の後半から議論され始めると予想している。
そうすれば金利は、そしてドル相場はどうなるか? それが今後の金融市場のもっとも重要な事項なのである。