「株式市場」カテゴリーアーカイブ

2015年の相場はブラックマンデーに似ているか?

さて、前回はブラックマンデーに至るまでの政治的・経済的背景を説明したので、今回は2015年の相場がブラックマンデー当時に似ているのかどうかについて検証したい。 続きを読む 2015年の相場はブラックマンデーに似ているか?

ドイツだけが量的緩和バブルを軟着陸させられるかもしれない

ギリシャなどが無茶な要求を始めたことで、ユーロ圏におけるドイツの負担は日々増しているように見えるが、それでも最終的に利益を得るのは経済が強いドイツである。

何度も書いてきたように、量的緩和とは中央銀行が国債などリスクの低い証券を買い占めることで、家計や保険会社などを国債市場から追い出し、社債や不動産、株式など、よりリスクの高い証券に資金を移させるポートフォリオ・リバランス政策である。

これは、量的緩和が行われている限りは、流動性が潤沢な債券市場から株式市場へと資金が溢れ出てくる構図となるが、中央銀行が債券市場から撤退するや否や、債券と株式が資金を求めて争い合う綱引きの様相となり、したがってこのバブルのツケは何処かの市場がいずれ払わなければならない。 続きを読む ドイツだけが量的緩和バブルを軟着陸させられるかもしれない

ユーロ圏の人々が通貨安回避のために買う通貨・銘柄は?

ユーロの下落が止まらない。前回の記事に書いた通り、ユーロは下落を続けており、1つの理由は、ユーロ圏の人々が通貨安によって自分の資産が損なわれてゆくのを回避するため、ユーロ圏の人々がユーロを売っているからだと推測している。日銀が量的緩和を始めた時のジョージ・ソロスのコメントを引用しよう。

円が下落し始めれば、日本国民は円が下がり続ける可能性が高いと気付き、自分たちの資金を海外に移そうとするだろう。そうすれば、円は雪崩を打って下落する可能性がある。(CNBCによるインタビュー)

これは、日本国民の国民性を考慮していなかったために正しくなかったが、今回のユーロ圏の量的緩和には非常によく当てはまっていると言える。この文化的な背景については前回の記事に書いたが、ではヨーロッパ人はユーロ安から逃れるために何を買っているのか? いくつかの候補を挙げてみよう。 続きを読む ユーロ圏の人々が通貨安回避のために買う通貨・銘柄は?

2015年、米国利上げまでの投資戦略

Fed(連邦準備制度)による 量的緩和が2014年に終了し、2015年の中旬には利上げを控えているにもかかわらず、米国の株式市場は連日史上最高値付近で推移している。サウジアラビアが最近の原油価格の小反発を歓迎する意向を表明したことから、60ドル前後の原油価格が受け入れられたと考え、米国の個人消費の回復はますます揺るがないものになりつつある。

しかし、それでも利上げは歴史上何度も金融市場の暴落を引き起こしてきたイベントであり、米国株を保有する投資家は心の何処かで自分の買い持ちを心配している。

株式市場はこのまま利上げまで問題なく上昇するのだろうか? これは買い方も売り方もどちらも抱えている疑問であり、それぞれの答えがあるだろうが、先ずはおよそ考えられるシナリオを列挙してみたい。以下の3つである。 続きを読む 2015年、米国利上げまでの投資戦略

Form 13F: ソロス氏、アインホーン氏は米国株空売りを拡大か

毎四半期恒例、SEC(米国証券取引委員会)によりForm 13Fが公開され、機関投資家の2014年末時点での米国株のロングポジションおよびオプションの買いポジションが公開された。

Form 13Fは1ヶ月半遅れでのポジションの公開であり、かつ空売りや先物のポジションは公開されないので、これだけを見てどのファンドが米国株を買っているとか売っているとか言えるものではないのだが、同業者であれば、現物の買いポジションを見るだけでも、そのポートフォリオに秘められた考えのいくつかは読み取れるものであり、その投資原則が短期的に変わるものでなければ、そのファンドがどの銘柄を今も持っているか持っていないかは大体分かるものである。

さて、2014年の4Qであるが、Form 13F以外の情報も含めて主だったものを纏めてみたい。 続きを読む Form 13F: ソロス氏、アインホーン氏は米国株空売りを拡大か

グローバル・マクロのポートフォリオ構成比率公開、2015年2月

ユーロ圏の量的緩和もようやく通過し、市場は面白い材料に欠けているというのは事実であると思うので、この辺りでポートフォリオの構成比率の公開をしてみたい。ここまでは個別銘柄の紹介などをやってきたが、いつも言及している例の記事で書いたリスク要因によって、ここから先は個別銘柄の選択よりもポートフォリオ全体の構成が重要だからである。

銘柄の保有比率は毎日微妙に調整しているため、リアルタイムの厳密な数字ではなく、2月に入ってからの平均値をおおまかに示したものだが、ポートフォリオの方針は読み取ることができると思う。先ずは銘柄の構成比率からである。 続きを読む グローバル・マクロのポートフォリオ構成比率公開、2015年2月

ECBの量的緩和までの経緯と、金融市場の反応を2014年1月から総ざらいする

2015年1月22日にECB(欧州中央銀行)が量的緩和を発表したことにより、ユーロ圏の金融市場は新たな緩和相場で賑わっている。個人投資家にはユーロ圏の量的緩和が最近のニュースだと考えている人もいるかもしれないが、機関投資家のなかでは2013年頃から既に話題になっていた事柄であり、その頃からフォローしてきた身としては、ようやく実現したという感想である。

事実、市場が量的緩和を織り込み始めたのは2014年の1月であり、そこから債券、株式、為替など、色々なものが順番に上昇・下落してきた。金融緩和が起こるときに市場はどう反応してゆくのかという説明も兼ねて、この1年間の相場の動きを時系列順に見ていきたい。 続きを読む ECBの量的緩和までの経緯と、金融市場の反応を2014年1月から総ざらいする

2015年、金融市場は米国の量的緩和終了を織り込んでいない

これについては一度しっかりと書いておく必要がある。

2008年のサブプライム・ローン危機の後、Fed(連邦準備制度)は3度にわたり債券の買い入れを行い、量的緩和を行ってきたが、この政策は2014年10月をもって終了し、現在の米国は2015年中に行われるとされる利上げを待っている状況にある。

2013年5月にバーナンキ前議長がテーパリング(緩和縮小)に初めて言及したとき、米国債は売られ、米国株も急落したものだったが、その後も株式市場は上昇し、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を開始した今では、米国の金利までもが低位で安定した動きを見せている。

市場は量的緩和の終了と利上げを景気回復のサインと見なし、量的緩和の終了どころか利上げまでも問題なく織り込んだかのような見方が通説となりつつあるが、それは誤りである。本来これは、中銀の支えがあるからと積極的に押し目を買ってきた市場参加者自身が一番よく知っているはずであるのだが、今後の金融市場の動きも含め、以下に説明したい。 続きを読む 2015年、金融市場は米国の量的緩和終了を織り込んでいない

2015年、ソロスなどヘッジファンドは空売りを始めている

2015年に入り、株式市場はやや不安定な動きを続けているが、米国の景気回復と日欧の金融緩和により米国市場はいまだ市場最高値の水準にあり、また原油安も個人消費を促進することから、誰も米国の景気回復を疑っていない。しかし1月時点でS&P 500のP/E(株価収益率)は19台後半に達しており、個別株の観点からもかなり割高なものが多数を占めてきている。

何よりも注意すべきは、米国の量的緩和の終了と利上げという未曾有の金融引き締めがいまだ織り込まれていないことである。投資家は、量的緩和による低金利によって債券から株式への資金流入が起こったことを完全に忘れている。これは即ち、金利が上昇を始めれば資金が株式から債券へと流出することを意味している。米国におけるこの逆流は日欧の量的緩和によって時期が遅れる可能性があるが、いずれにせよ2015年と2016年がもっとも警戒すべき年なのである。

そこで、賢明なヘッジファンド・マネージャーの多くは、ロングポジション(買い持ち)に加えて、ヘッジのために割高な銘柄の空売りを始めている。彼らも米国の景気回復を疑っているわけではないため、全面的に弱気の投資家はいないが、流動性縮小の局面にどういうことが起こりうるかを知っている賢明な投資家は、このような場面で単純な買い持ちをしないのである。そこで本記事では、ジョージ・ソロス氏やデイヴィッド・アインホーン氏など、著名投資家が空売りしている銘柄をレビューする。 続きを読む 2015年、ソロスなどヘッジファンドは空売りを始めている

ルーブル急落で世界的リスクオフ: ドル円、不動産株をレビューする

ロシアルーブルを始めとする新興国・産油国通貨への懸念から、世界の金融市場でリスクオフの動きが進んでいる。

円やユーロが買われていることから、ドル高の動きではなく、各国の不動産株が売られていることから、デフレを懸念しているわけでもない。これまで蓄積されてきたグローバルマクロ的なポジションが、クリスマス休暇前ということもあり決済されているのである。今回は、とりわけドル円と各国の不動産株について、簡単にレビューしたい。 続きを読む ルーブル急落で世界的リスクオフ: ドル円、不動産株をレビューする