チューダー・ジョーンズ氏: 米国株は今後1年は崩壊せず上昇すると予想

引き続き、ポール・チューダー・ジョーンズ氏のBloombergによるインタビューである。

今回は米国株の今後の動向について予想している部分を紹介したい。

債務問題は大丈夫か

これまでの記事でジョーンズ氏は、トランプ政権は来年5月にFed(連邦準備制度)のパウエル議長が退任することをきっかけに、金融緩和に積極的な新議長を指名し、アメリカの金利は下落してゆくと予想していた。

またジョーンズ氏は債務をインフレで帳消しにすることがある程度避けられないとし、ゴールドとビットコインと米国株への投資を推奨した。

ジョーンズ氏は次のように述べている。

ここから12ヶ月、新しいFed議長のもとで金利は急激に下がるだろう。

それは債券市場にとってはプラスだ。

金利が下がれば、それは当然株価にはプラスになる。それがジョーンズ氏の米国株買いの根拠である。

だがジョーンズ氏の米国株への態度は全面的な強気ではない。懸念材料があるからである。ジョーンズ氏は次のように述べている。

6%の財政赤字が長期的に持続不可能だということは皆分かっている。だが人々はそれでも大丈夫だと考えている。その根拠は、今のところ大丈夫だからだ。

これはまさにインフレ主義がここまで進行した理由である。紙幣印刷が大丈夫だなどという主張の根拠は、これまで大丈夫だったから以外には何もなかった。そして紙幣印刷でインフレが発生した。

米国債の下落リスク

ジョーンズ氏は、Fedの利下げで来年にかけて金利が下がると予想しながらも、長期的には財政赤字による国債の大量発行で米国債の価格が下落、金利が上昇するリスクを懸念している。

実際、今年の4月には株安の最中に米国債が急落、金利が急上昇した。

それは一旦は収まったが、財政赤字の問題は何も解決していない。ジョーンズ氏は、何かのきっかけで債券市場がまた壊れるようなイベントを懸念している。

米国債が下落し金利が上がれば、当然株式市場にも影響する。低金利で株価が上がってきたのだから、高金利は株価にマイナスだからである。

ジョーンズ氏は、金利低下を予想しながら、それは長期的に持続可能ではないと予想している。ジョーンズ氏は次のように述べている。

資産価格全体が持続不可能なものに基づいているとき、長期的に投資をすることは極めて難しい。

米国株はいつ崩壊するか

だから米国株の買いに関しては期限付きのトレードなのである。人々が持続不可能な問題を持続可能だと思いこんでいる限りは、米国株を買っても良いかもしれない。そういう話なのである。

そもそも市場で何かが壊れるとすれば、最初に壊れるのは何だろうか。ジョーンズ氏は次のように言っている。

恐らく米国債が先だと思う。もしかしたらドルかもしれない。だが財政問題が表面化する日には、米国株の株価収益率は今の水準を維持できないだろう。

4月には米国債とドルの両方が下落した。

それがもう一度起こる時、米国株も下落を避けられないだろう。

結論

だからジョーンズ氏の米国株推奨はやや危うい橋を渡っている。推奨の本命はゴールドとビットコインだろう。

米国債とドルの崩壊は当面の間は起きないだろうというのがジョーンズ氏の読みなのである。ジョーンズ氏は次のように纏めている。

株式市場にとっての最大のリスクは、アメリカの財政問題だ。だがアメリカでも世界でも、財政赤字に目をつぶって進行するプロレスは今のところ許容されているようだ。現実を棚上げしてOKサインが出されている。

株式市場に関して決断を下さなければならないとすれば、金利が12ヶ月で3%まで下がることを考えれば、多分株式を買い持ちにするだろう。

しかし米国株と米国債とドルが同時下落すれば、米国株はその支えを失うことになる。米国株と米国債とドルの同時下落は、過去100年ほどで2回しか起こっていない。

そしてその2回の両方で、米国株は長期の下落相場を経験している。

その内1回は1929年から始まる世界恐慌である。その時の株式市場の動きについてはレイ・ダリオ氏の『巨大債務危機を理解する』で解説されている。

今後の米国株を予想する上で必須の知識なので、未読の人は読んでおくことをお勧めしたい。


巨大債務危機を理解する