フォン・グライアーツ氏: 金価格上昇にもかかわらず金鉱株は過小評価されている

引き続き、Von Greyerzのエゴン・フォン・グライアーツ氏の、カイ・ホフマン氏によるインタビューである。

今回はゴールドと金鉱株などの関係について語っている部分を紹介したい。

ドルの下落と金価格の上昇

前回の記事でフォン・グライアーツ氏は、最近の金価格上昇はドルなどの紙幣の価値下落によるものであり、それは1971年のニクソンショックの頃からの長期トレンドだが、現在はそれが加速する最終段階にあると主張していた。

金価格は次のように推移している。

貴金属上昇の出遅れ銘柄

金相場の上昇については、ここでは去年から何回も推奨記事を書いているので、ここの読者にとっては今更だろう。

以下の記事でフォン・グライアーツ氏は去年6月に「本当の上げ相場はこれから」と言っていたが、それは本当にこれからだった。

そして筆者やフォン・グライアーツ氏がずっと出遅れだと言い続けてきたシルバーも、遂に上昇を始めてしまった。銀価格は次のように推移している。

だが、今回フォン・グライアーツ氏がテーマにしているのは、別の出遅れ銘柄のことである。

フォン・グライアーツ氏は次のように述べている。

ゴールドとシルバーに関する企業の株は、ゴールドとシルバーに対して大幅に過小評価されている。

ゴールドと金鉱株

金価格は上がったが、金価格に関係するはずの株式銘柄は、実はゴールドほどは上がっていない。

例えば、金の採掘で世界最大手のBarrick Mining Corporationの株価は次のように推移している。

上がってはいるのだが、上がり始めたのは8月からであり、金価格のここ2年の大幅な上昇に比べればかなり出遅れている。

フォン・グライアーツ氏は次のように述べている。

金鉱株などは現物の貴金属よりも上昇余地が大きい。現物の値上がりより大幅に出遅れているからだ。

金鉱株の問題点

だが、フォン・グライアーツ氏は手放しで金鉱株を薦めているわけではない。

フォン・グライアーツ氏は、投資家というよりは資産運用、資産保全のアドバイザーである。

だからゴールドも、紙幣の価値下落から資産を守るという意味で薦めている。

また、ゴールドなどの現物資産は紙幣の価値下落を逃れられるだけではなく、銀行封鎖などの強制的な資産没収からもある程度の抵抗力を発揮するというのが、フォン・グライアーツ氏が貴金属を現物で保有することを薦める理由である。

したがって金鉱株についても次のように付け足している。

唯一の問題は、株式というものは既存の金融システムの中に組み込まれていることだ。保有する株式のすべてが返ってくるかどうかは分からない。

われわれは資産の保全を最優先にしている。顧客には現物のゴールドとシルバーを保有するままでいいと伝えている。

結論

ここでは何度も言及しているが、資本統制は歴史上、政府が国債の下落を止められない時にはほとんど常に行われてきた政策である。

だから、それが起きるかどうかは、米国債の先行きがどうなるかにかかっている。

だが、一方で、金鉱株が出遅れていることはトレーダーにとっては美味しい投資機会だろう。フォン・グライアーツ氏は次のように付け足している。

こうした銘柄のトレードに乗りたいなら、現物の貴金属に賭けている金額よりも少額だけに留めておくべきだ。

金価格の上昇でゴールドだけに目が行きがちだが、ゴールドという資産が出来上がるためには、誰かそれを採掘する企業が当然いるのである。

ゴールドに限らず、金属や資源などのコモディティがどのように生産され、消費されるのかについては、古い本だがジム・ロジャーズ氏の『商品の時代』が参考になるので、そちらも推しておきたい。コモディティ投資の入門書である。


商品の時代