1月26日FOMC会合結果で株安は続くか

米国時間1月26日、米国の中央銀行であるFed(連邦準備制度)は金融政策決定会合であるFOMC会合の結果を発表する。日本時間では26日の深夜(27日の早朝)となる。

続く株価下落

筆者は個々のイベントがどうなるかは大して重要ではないと考えているが、金融市場では株価の下落が続いていることもあり、株安の理由も含めて解説してゆきたい。

まず株式市場を見てみよう。米国の主要株価指数であるS&P 500のチャートは以下の通りである。

連日下落が続いているが、辛うじてまだ上昇トレンドが崩れているとは言えない。

一方で筆者が株安の先行指標とみなして空売りしている米国小型株指数のRussell 2000は次のようになっている。

すでに下落トレンド入りしている。

S&P 500は主に大型株だけで構成されているので、Russell 2000の方が市場全体の雰囲気を表しているだろう。多くの米国個別株もそちらに近い値動きをしているはずである。

株価下落の原因

ここの読者には言うまでもないことだが、株安の理由はFedの金融引き締めが近づいていることである。これまで株高を支えてきた金融緩和が撤回され、資金が注入されていた市場から資金が吸い取られようとしている。

では何故金融引き締めが近づいているかと言えば、利上げでインフレを抑制しなければならないからである。現金給付と脱炭素政策のおかげでアメリカのインフレ率は7.1%まで上がっている。このインフレは人災である。

元々インフレはじきに収まると主張し続けていたFedのパウエル議長もようやく間違いを認め、金融引き締めに動くことを余儀なくされている。

ここまでが前回12月のFOMC会合までの流れである。

だが何故パウエル議長がインフレを無視し続けていたかと言えば、金融引き締めを行えば株価が暴落するということが分かっていたからである。自分が株安の引き金になりたくない保身のためだけに金融引き締めを延期していたが、そうしている内にインフレは更に燃え上がり、更に強力な金融引き締めを強いられる状況となっている。株価は既に風前の灯火である。

今回のFOMC会合結果

さて、この状況で今回1月のFOMC会合はどうなるだろうか? まず市場がそれをどう織り込んでいるかを確認したい。金利先物市場の織り込む今回の会合での利上げ確率は次のようになっている。

  • 利上げなし: 95%
  • 0.25%利上げ: 5%

つまり、今回の会合で利上げが始まるということはないと市場は織り込んでいるし、筆者もそのように考えている。Fed自身も利上げは3月からだと主張しており、3月までの利上げ確率は次のようになっている。

  • 利上げなし: 3.0%
  • 0.25%利上げ: 92.2%
  • 0.5%利上げ: 4.8%

利上げは次回の会合がある3月だということである。

またFedは会合参加者の今後の利上げ予想をプロットしたドットプロットを発表しており、それが実質的な今後の利上げスピードの表明となるのだが、発表は2回に1回であり今回の会合では発表されない。

よって今回の会合の結果そのもので市場が荒れることはないだろう。問題は今後の金融引き締め方針についてパウエル氏が記者会見で何を言うかである。

今後の金融引き締め見通し

まず、前回12月に発表されたドットプロットによれば今年の利上げ回数は3回となっており、これがFedの公式発表である。

しかし金利先物市場の織り込みによれば市場は4回の利上げを予想しており、パウエル氏が記者会見で金融市場と足並みを揃えるのかどうかが注目される。

また、Fedの一部メンバーは利上げだけではなく量的緩和を逆回ししてバランスシートを縮小させる量的引き締めを主張しており、2018年に株価を暴落させた量的引き締めについてはスコット・マイナード氏が警鐘を鳴らしている。

これらを踏まえてパウエル氏は何を話すだろうか?

これまで市場を遅れて後追いするだけだったパウエル氏の行動から考えれば、金融引き締め加速をほのめかす可能性も考えられるだろう。しかし問題は株式市場が荒れているということである。

思い出されるのは市場が暴落しようとも利上げを続けた2018年のパウエル氏の姿である。

この時もパウエル氏は誤りを認めるのが遅かった。自分の金融引き締めで株価を暴落させたことがトラウマとなってパウエル氏はもう金融引き締めをやりたくないのである。

会合結果はどうなるか

基本的にFed内部ではパウエル氏が緩和派、その他のメンバーが引き締め派である。インフレは一時的だと何の根拠もなく主張したパウエル氏を他のメンバーが批判する形で現在の利上げ方針も決定されている。この辺りの経緯は以前記事で説明した。

議長の記者会見には当然パウエル氏以外のメンバーは出ない。だから株価を気にしてハト派的なコメントになる可能性は大いにある。

だが投資家にとって重要なのは、今回の会合でハト派的なコメントになり、株価が上昇したとしても長期トレンドには何の影響もないということである。

もしここでFedが金融引き締めを躊躇えば、既に7.1%に達しているインフレ率は更に高騰してゆくだろう。それに対して今の政策金利は0%なのでアメリカの実質金利は差し引き-7.1%となり、これは金融緩和で通貨が暴落しているトルコ以上の超緩和状態なのである。インフレが止まるはずがない。

そうすれば結局より強い金融引き締めを行わなければならなくなり、株価の暴落はより酷くなるだろう。

一方でもし他のメンバーからの圧力が強く、パウエル氏が量的引き締めに言及するようなことがあれば、元々予想されていた2022年の株価暴落がここで決まってしまうかもしれない。

結論

投資家にとって重要なのは、各回のFOMC会合結果に振り回されることなく投資を続けることである。金融引き締めが行われればインフレ率より先に株価が下落し、行われなければ物価が青天井に高騰する。それが2022年のアメリカ経済である。アメリカ経済はもう詰んでいる。

ハト派に振れてインフレ懸念が出ても、タカ派に振れて株価暴落懸念が出ても、どちらでも利益を出すことが出来るポジションの取り方というものがある。詳細は以下の記事に既に書いているので、そちらを参考にしてもらいたい。