サマーズ氏が利上げ継続を予想、アメリカの中央銀行はインフレを過小評価している

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、先日発表されたアメリカの雇用統計についてコメントし、そこから導き出される今後のインフレ動向について語っている。

6月雇用統計は強かったのか

雇用統計については以下の記事で報じている。失業率は僅かに下がり、賃金のインフレ率は横ばいだった。

この記事では、筆者は同時に発表されたその他の数字から、今回の雇用統計はインフレ加速を示唆していると結論付けたが、サマーズ氏の見解はどうだろうか。彼は次のように述べている。

これは過熱した数字だ。経済が既に過熱している状況下で、雇用の増加が成年人口の増加の2倍のペースになっている。これではインフレ率を目標値まで下げることはできない。

雇用はインフレ政策でばら撒けばいくらでも増えるかのように思いがちだが、実際には限界がある。労働者が人口よりも多く増えることはないからである。ばら撒かれたお金で雇い続けるとだんだん人が居なくなってくる。

また、サマーズ氏は他の数字について次のように述べている。

賃金のデータもインフレ目標を大幅に上回ったまま推移している。失業率は3.6%と低かった。離職率、求人数、解雇率、雇用保険など今週発表された労働市場の他のすべての指標は、過去のパターンと比較すると失業率が3.6%よりも更に低くなることを示唆している。

サマーズ氏のインフレ見通し

サマーズ氏は筆者と同じく、今回の雇用統計は強かったという見方のようだ。

筆者の見方については以下の記事を参考にしてもらいたい。

さて、この雇用統計はインフレ見通しに対して何を意味しているのか。サマーズ氏は雇用の増加について次のように続けている。

成人人口増加の2倍のペースの雇用増加を永遠に続けられると考えることは無理だ。そしてそれは労働市場がますます引き締まってゆくことを意味している。

人が雇えなくなれば、賃金を上げて無理にでも人を呼ぶほかない。そしてそれこそがインフレである。

サマーズ氏はこう続ける。

だからアメリカ経済は現在のところ非常に強いが、雇用の増加率を考えるとその強さは持続可能ではない。そしてそれがインフレと、インフレ目標以上の今後のインフレを示唆する指標が今後も継続することに繋がることはあまり驚きではないだろう。

中央銀行はインフレを過小評価している

Fed(連邦準備制度)は長らく利上げを続けてきたが、6月の会合では利上げを一旦休止した。

それでも利上げは一旦休止しただけで今後も続けると表明しているが、サマーズ氏はこの決定に別の要因も見ている。

そして今回の雇用統計を含むインフレを示唆する最近のデータを考えれば、サマーズ氏の結論は次のようになるようだ。

Fedが2年間インフレを過小評価し続けていると市場が判断していることは正しい。

インフレがまだ収まっていないなら、パウエル議長が「インフレは一時的」と言い続けてインフレの脅威を無視していた2021年から、2年後の今もFedはインフレを過小評価しているということになるとサマーズ氏は言っている。

だとすれば、今後の金融政策はどのようなものになるか。サマーズ氏は次のように予想している。

インフレ動向はFedにとって想定外のものであり続けている。そして経済の強さとインフレの動向が想定外だということは、今後どれだけ利上げしなければならないかも想定外のものになるだろうということだ。