レイ・ダリオ氏: アメリカは台湾に武器を売るために中国からの独立をけしかけている

世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏がMoney Maze Podcastによるインタビューで、中国と台湾の問題について語っている。

アメリカの覇権と戦争

ダリオ氏は長らく戦争の可能性を予想していた。アフガニスタンからの撤退などに象徴されるように、アメリカの覇権が弱まってくれば他の国との戦争になる可能性が増すということをウクライナ戦争前から主張していた。

そのことはダリオ氏の著書『世界秩序の変化に対処するための原則』でも説明されている。

戦争が起こる前からダリオ氏の言葉を真面目に取ることのできた人は多くなかったはずだ。だが実際にウクライナで戦争が起きた。そして今やパレスチナが戦場になっている。まだ西洋諸国の本土には届いていないが、徐々に戦火はアメリカやイギリスやフランスに近づいている。

台湾と中国の問題

そのダリオ氏が、やはり台湾の問題を戦争の火種の1つとして見ている。彼は次のように述べている。

台湾の歴史について簡潔に説明しよう。1840年頃から外国の勢力が中国にやってくるようになった。当時、中国はとても豊かな国で、他国と貿易をする必要がなかった。

イギリス人やその他の国がやってきて貿易を求めたが、彼らは中国人の欲しがるものを持っていなかったので、中国人は彼らに帰ってくれと言った。

だがイギリス人は帰らなかった。彼らは売れるものを持っていなかったので、中国人を麻薬漬けにして麻薬を売り込もうとした。それで戦争になった。アヘン戦争である。

客観的に見てまったくもって酷い話だが、イラク戦争などを見れば西洋人のやっていることは当時から大して変わっていないことが分かる。

ダリオ氏はこう続ける。

そしてアヘン戦争が起こり、中国は戦争に負けた。そこから終戦までの1840年から1944年を、中国人は百年国辱と呼ぶ。

アヘン戦争後、日本を含む西側諸国は中国を食い物にした。そして当然だが中国人はそれを今でも根に持っている。しかも日本人が「中国が日本に攻めてくるかもしれない」と言いながらアメリカと仲良くしているのを見て、「こいつらは馬鹿ではないのか」と思っている。

客観的に見て、どう考えても攻めてきたのは日本だからである。だが歴史を知らなければそういう思考も可能になる。何でもありである。1年足らずでワクチンが作れると考えられる脳さえあれば、どんな柔軟な発想でも可能だろう。それが人間の脳の限界である。筆者はもう諦めている。

日本の台湾支配から蒋介石まで

さて、台湾に話を戻そう。ダリオ氏は次のように述べている。

そしてその百年国辱の間に日本が台湾を支配した。

第2次世界大戦の終わりに日本は負け、中国は西側の同盟国のようなものだったので、西側は台湾を中国に返した。そこまでは誰もが同意していた。

台湾は中国への帰属が確定している。だが問題は、中国の方が確定していなかったことである。

ダリオ氏はこう続ける。

だが中国は内戦状態だったので、結局誰が台湾を支配していたのかがはっきりしなかった。蒋介石ら資本主義者は内戦に負け、台湾に逃げて台湾を実効支配した。

現在中国と呼ばれている中華人民共和国と、蒋介石の中華民国は、ともに台湾を含む中国全体の支配権を主張している。

だが少なくとも中国本土と台湾を分離する話は中国内部では誰もしていないのである。ここがポイントである。ダリオ氏はこう補足する。

だから中国が1つの統一された国であり、台湾はそこに含まれるということは誰もが同意している。問題は中国を誰が支配しているかだ。

50年ほど前にヘンリー・キッシンジャーが中国と関わりを持ち国際社会に中国を連れ出した時、中国が1つの国であり、台湾はそこに含まれ、時間とともに平和的な再統一が行われることが再確認されている。

恐らく台湾の問題は、台湾の中華民国が中国全土を支配するということが現実的ではないということを誰もが認めるのであれば、中国内部に台湾の自由な立ち位置を考えることで平和的に解決するはずである。少なくとも50年前の時点ではそう確認されていた。では何故問題が起きるのか。

台湾が戦争になる条件

ここまで説明した上でダリオ氏はこう述べる。

ここで戦争を起こす可能性のある1つのシナリオがある。

アメリカの政治家も中国の政治家も誰もがそれを理解している。

もしアメリカが、台湾の独立を望むと言った場合、戦争になる。

何故ならば、中国と台湾は中国全土の支配権で争っているのであって、台湾を中国本土から分離することを争っているわけではないからである。だが他国がそれを試みるならば、それは例えば他国が沖縄を日本から分離させる政策に等しい。

ダリオ氏はこう述べている。

アメリカが今やっていることは、そのレッドラインを越えさせようとしていることである。

アメリカがそれをやれば、戦争は起きるに決まっている。そしてダリオ氏によれば、アメリカの政治家は全員それを知っている。つまり、ダリオ氏はアメリカの政治家が意図的に台湾を戦争に追い込もうとしていると言っているのである。

それは誰か。例えば民主党のナンシー・ペロシ氏である。彼女は中国と台湾が争いになることを知っていながら下院議長として台湾を訪問し、怒り狂った中国海軍に台湾が何日も囲まれ続ける中、台湾旅行を終えて颯爽と帰国した。

アメリカが台湾を支援しているなどと言っている人がいるならば、この人物の行動がどのように台湾のためになったのか説明してほしい。だがこれがアメリカ民主党である。

ここまでの話は、これまでのダリオ氏の主張と同じものである。だが今回ダリオ氏はもう一歩踏み込んで次の発言をしている。

台湾の独立を守ると大統領選挙で誰かが言う可能性がある。そうすれば武器が売れ、支持が受けられるからだ。

だから今われわれはレッドラインにかなり近い。

結論

はっきり言うが、これはいつもの戦略なのである。民主主義や資本主義や菜食主義やSDGsやLGBTなど、自国の政治的潮流を他国の一部の人々に流行らせ、元々の価値観を維持している人々と争わせ、戦争を引き起こしてそこから利益を得る。

ウクライナにおいては、2014年のマイダン革命で欧米諸国の支援した暴力デモ隊が当時ウクライナにあった親露政権を追い出し、その後アメリカはウクライナに親米政権を建て、(主にオバマ政権で副大統領をやっていたバイデン氏が)その政権をアメリカの補助金漬けにし、2022年2月にゼレンスキー大統領にロシアに対する核武装を仄めかさせたところでロシアとの戦争になった。

更に言うならば、キリスト教を布教し、日本にキリシタン大名を作り、一揆を起こさせてそこに武器を売り込んでいた頃から彼らのやっていることは何1つ変わっていないのである。

だが流石の西洋人も流石に気付きつつある。始まりは2016年、大統領就任前に「アメリカは他国の政権転覆をやめる」と主張して支持者にどん引かれていたドナルド・トランプ氏だろうか。

ウクライナについても、債券投資家ジェフリー・ガンドラック氏は最初から反対していた。

だがアメリカ人も気付きつつある。ウクライナ支援の予算は共和党の反対で通らなくなった。この馬鹿げた状況に気づいていないのは、恐らくアメリカ民主党支持者と日本人くらいではないか。それはパレスチナ情勢への日本政府の対応にも表れている。

日本人は植民地政策に遅れてやってきてすべての責任を押し付けられた時のように、泥舟に乗り続けていれば良いのである。好きで泥舟に乗っている人々に何を言うことができるだろうか。


世界秩序の変化に対処するための原則