ドラッケンミラー氏、AI銘柄を更に買い増し

引き続き、機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fである。今回はジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用したことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のファミリーオフィス、Duquesne Family Officeのポートフォリオを紹介する。

ドラッケンミラー氏の相場観

ここではこれまでも報じてきた通り、ドラッケンミラー氏はアメリカ経済の景気後退を予想している。しかしそのタイミングについては筆者や債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏よりも遅い時期を予想している。

これまでのインタビューから察するに、ドラッケンミラー氏はまだ本格的な株式の空売りはしていないようだ。彼は買いと空売りの両方をやっているが、差し引きではそれほど下落に賭けるポジションにはなっていないはずである。

株価が下がるのは景気後退の半年ほど前であることが多いので、彼がまだ本格的な空売りをしていないのも彼の予想から考えれば理にかなっている。

一方で、ドラッケンミラー氏は利下げを予想し、今後の政策金利の見通しに影響される2年物国債金利の下落に賭けている。

株価のピークはまだだが、政策金利はピークだというのがドラッケンミラー氏の今の相場観だろう。

ドラッケンミラー氏の個別株ポートフォリオ

株式市場全体については下落開始を待っているドラッケンミラー氏だが、個別株については推し銘柄がある。AI関連銘柄である。前回のForm 13Fではそれを報じておいた。

ドラッケンミラー氏は以前のインタビューでAI銘柄について次のように言っていた。

暗号通貨とは違ってAIは本物だ。インターネットと同じくらいの革命かもしれない。これは大きな革新だ。

その中でもドラッケンミラー氏が特に推しているのがGPUを製造するNVIDIAである。GPUはAIや暗号通貨などの複雑な計算を行なうために使われるため、AIと暗号通貨の両方にとって本命の銘柄なのである。

ドラッケンミラー氏は景気後退までにまだ時間があると考えている一方で、前回6月末のポートフォリオの開示よりも今回(9月末のポートフォリオ開示)の方が景気後退に近づいたと考えているのは確かだろう。

9月末時点のポートフォリオ

ではドラッケンミラー氏のAI銘柄のポジションはどうなったのだろうか? 彼は前回の開示ではNVIDIAの他にAI関連のサービスを提供するMicrosoftを保有していた。

結論から言えば、ドラッケンミラー氏はAI関連銘柄をやや買い増している。だがNVIDIAは持ち株の7%を売却し、Microsoftを23%増やした。結果としてドラッケンミラー氏のAI関連のポジションは多少増えている。

それでもNVIDIAはドラッケンミラー氏の最大ポジションのままである。評価額は3.8億ドルとなっている。

NVIDIAの株価は以下のように推移している。

ちなみに同じ期間、米国の主要株価指数S&P 500は以下のように推移している。

NVIDIAの方がパフォーマンスが良い。その理由については以下の記事で説明している。

そしてそれはドラッケンミラー氏の予想通りでもある。彼は以前次のように言っていた。

NVIDIAのような企業の受注や利益はハードランディングでも70%上がるのではないかと思っている。

前にも言ったが、そうなれば、消費財株の株価が景気後退でも上がるのだから、NVIDIAの株価がハードランディングで下がるだろうか。現在の高いバリュエーションを考えてもだ。

AIはまだ本格的な需要がほとんどない状態である。インターネットの初期に近いとドラッケンミラー氏は考えており、筆者の見解でもある程度はその通りだろう。

ただ、筆者は景気後退が本格的に到来してもNVIDIAがS&P 500より良いパフォーマンスになるかどうかについては微妙だと思っているが、まだ景気後退が来ていない現状では予想通りの動きとなっている。

また、ドラッケンミラー氏が買い増したMicrosoftについては以下のように推移している。

7月の高値を超えており、NVIDIAよりも更に良いパフォーマンスとなっている。ドラッケンミラー氏の乗り換えは正しかったと言えるだろう。

結論

ということで、ドラッケンミラー氏の今回のポートフォリオは、多少の乗り換えはあったものの、主要なポジションについては前回からあまり変わっていない。

コモディティ関連など景気後退に弱い銘柄については前回の開示でほとんどを売ってしまっているので、あとは景気後退を考慮しても保有し続けたいとドラッケンミラー氏が考えている銘柄だけを残して、景気後退に備えているのだろう。いずれにしても現在のドラッケンミラー氏の主戦場は債券市場である。