ガンドラック氏: アメリカ雇用統計は歪曲されている

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がPensions & Investmentsによるインタビューで、失業率などアメリカの雇用統計が意図的に改竄されている可能性を指摘している。

雇用統計の修正

これまでに報じている通り先週発表されたアメリカ雇用統計の数字はインフレを示唆するものだった。

その分析は上の記事で終えている。だがガンドラック氏は数字の発表の仕方そのものに意義を唱えている。

例えば今回の雇用統計で注目されたのは、労働者数の増加が市場予想より多かったことだ。だがガンドラック氏は、この雇用統計の数字が発表後に下方修正され続けていることを指摘している。

ガンドラック氏は今回の雇用統計の発表について次のように述べている。

216,000人の就業者数増加が発表されたとき、同時に過去のデータに対するおよそ450,000人分の下方修正が行われた。

誰もが注目するのはその時に発表される最新の数字である。

だが経済統計には修正がある。多くのデータが集まって最初に発表された速報値から数字が変わった場合、経済統計は修正される。

しかし修正の方はニュースにならない。ガンドラック氏は次のように述べている。

政府はまず216,000人という数字を発表し、経済は素晴らしいと自慢した後で例えば120,000人に下方修正する。だが下方修正の方には誰も注意を払わない。

統計が修正されるのは、数字を出来る限り早く発表するという目的のために仕方がない側面はある。しかしガンドラック氏はその修正が下方修正ばかりであることを疑問視しているのである。

実は悪化している各州の失業率

また、ガンドラック氏が指摘しているのは修正の問題だけではない。

今回の雇用統計では失業率が半年ほどの間上がっていないということも注目された。だがガンドラック氏はそちらにも意義を唱えている。彼は次のように述べている。

失業率には各州が報告する州ごとのデータがある。

88%の州は失業率が上昇していることを報告している。88%だ。

だからここで聞きたいことがある。88%の州で失業率が上がっている状態で、どうすれば全米の失業率が上がらないようなことが起こる?

失業率は全米の数字しか注目されないが、州ごとのデータもある。

しかも発表は州ごとのデータの方が遅い。州ごとのデータが出揃っていないのに、何故全米のデータが発表できるのか?

それは足りないデータを推計で補っているからである。だがガンドラック氏はその推計に恣意的な改竄を疑っている。何故ならば、多くの州では失業率は既に上がっているからである。

例えば全米の失業率のグラフをGDPの規模でトップ5の州の失業率と比べてみると、次のようになる。

唯一1月まで伸びているグラフが全米の失業率であり、12月までのデータで止まっている他の5つがトップ5州のものである。

トレンドを見るとテキサスだけは失業率がやや低下しているが、テキサスは産油の州なので原油価格の底打ちによるものだろう。他の4州では失業率は目に見えて上昇している。

ガンドラック氏は次のように続けている。

12%の州が他の88%の州の失業を補っているような状況は事実として受け入れがたい。

失業率が上がっていない州はテキサス、ペンシルバニア、これらは大きめの州だが、あとはノースダコタやワイオミングなどだ。それらは大きな州ではない。

結論

読者はこれらの数字をどう考えるだろうか。カリフォルニアやニューヨークで失業率がかなり上がり始めている事実は少なくとも筆者には見逃しがたい。

就業者数の修正も含め、ガンドラック氏はこれらのデータの偏りを恣意的なものではないかと主張しているのである。彼は次のように述べている。

報じられる数字は素晴らしいが実際の数字は後で発表される。本当の雇用の数字を数ヶ月後でこっそり発表するというのはマイルドな事実の歪曲のやり方ではないか。

ただ、ガンドラック氏の指摘を考慮せずとも、データをよく分析すればアメリカ経済の状態は良くないということは明らかである。詳しくは雇用統計の記事を参考にしてもらいたい。