前回の記事では、ウォーレン・バフェット氏の師であるベンジャミン・グレアム氏がインフレ相場と株式の関係について語っていた。
今回の記事では、このグレアム氏の著書に解説をつけたジェイソン・ズワイグ氏がインフレを避けるために投資家が出来ることについて語っている部分を紹介したい。
グレアム氏のインフレ相場における株価予想
グレアム氏の著書には、有名な金融アナリストであるズワイグ氏が解説をつけた版が存在する。日本語では『新 賢明なる投資家 上』として上下巻のものとして出版されている。(但し、日本語版は筆者がここで取り上げるものよりも新しい版である。)
前回の記事ではグレアム氏が1973年の版で1970年代のアメリカのインフレ相場について語っていたことを紹介した。
一般にはインフレを回避するために株式を買えと言われているが、グレアム氏は1970年代のインフレ相場の初期である1973年の版の記述において、インフレで株価が上がるという話は極めて怪しいと指摘していた。
グレアム氏はその後1976年に亡くなったが、1970年代のインフレ相場における株価の推移はまさにグレアム氏の予想通りになったのである。
インフレ率と株価の関係
ズワイグ氏が解説を書いているのは、その1970年代のインフレ相場が過去のものとなった後である。
ズワイグ氏は1926年から2002年までの相場を検証した上で、改めてインフレ率と株価の関係について次のように述べている。
商品とサービスの物価が下がった時には、株式のリターンは酷いものだった。株価は最大で43%価値を失っている。
だがインフレ率が6%を超えた時にも、株式のパフォーマンスは同じく酷かった。
インフレ率が激しく変動するときには、物価高であっても物価安であっても株式のパフォーマンスは悪くなる。
これは厳密に言えばインフレ率と直接関係しているわけではない。物価下落で株価が下がるのは、景気後退で結果としてデフレになるからだろう。
そしてインフレで株価が下がっているのは、インフレを退治するために金利を上げなければならなくなるからだろう。
だがいずれにしても、インフレ相場で株価が必ずしも上がっていない現実を1973年に指摘したグレアム氏は正しかったのである。
より良いインフレヘッジ資産
だが、株式がインフレヘッジにならないのであれば、インフレを避けるために投資家はどうすれば良いのか。ズワイグ氏は、1970年代にはなかったインフレヘッジの手段として、REIT(不動産投資信託)と物価連動米国債を挙げている。
REITは不動産をたくさん保有する会社の株式が上場しているようなものであり、1つの物件ではなく多数の物件にわずかな金額から投資ができる。
もう1つの物価連動米国債は、インフレで価値が目減りした分を金利とは別に補填してくれる米国債であり、その分普通の国債よりも金利が低いことが多いが、設計者であるBridgewaterのレイ・ダリオ氏もインフレヘッジの手段として推奨していた。
物価連動国債の問題点
ちなみに現在、物価連動米国債の金利は1.81%である。つまり、1.81%の金利に加えてインフレで価値が目減りする分が補填されるということである。(但し、政府が発表するインフレ率を信じればの話ではある。)
ただ、ズワイグ氏は物価連動国債の問題点も指摘している。ズワイグ氏は次のように述べている。
しかし1つ問題がある。物価連動国債の価値がインフレの過熱によって上がった場合、IRS(訳注:アメリカの国税局)はそれを課税すべき収入とみなす。それはまったく紙の上の利益に過ぎないのにだ。
当然と言えば当然のことなのだがズワイグ氏は、物価連動国債による収入は、実際にはインフレを回避しただけなのに、課税されるということが納得いかないらしい。
しかも、ズワイグ氏は書いていないが、政府のインフレ政策が引き起こしたインフレであればその気持ちはひとしおだろう。ズワイグ氏はよほど納得がいかないらしく、次のように続けている。
なぜIRSにとってはそんな理屈が通るのか? 賢明なる投資家は、金融アナリストのマーク・シュウェーバーの名言を覚えておくべきだろう。「官僚に『なぜ』とは絶対に聞いてはならない」
この極めて不愉快な税制上の理由から、物価連動国債はIRAやKoeghや401kのような引退用の課税猶予口座に最適だと言える。
非課税口座の使い方
ズワイグ氏の言う課税猶予口座とは、日本ではiDeCoのようなもので、働いている間は毎年資金を貯めて投資をしてゆくが、利益が出ても引退してそれを受け取るタイミングまでは課税されないというものである。
個人的には、iDeCoは受け取るタイミングになって税制が変更されている可能性がある(個人的な予想では増税されている可能性が極めて高い)ので最悪の投資対象だと思っているが、NISAはズワイグ氏の言う用途で使えるのではないか。但し、インフレヘッジをしたければ株式をそこに詰め込んではならない。
詰め込むべきなのはインフレヘッジ資産である。ズワイグ氏やダリオ氏は物価連動国債を推しているが、筆者は去年からずっとゴールドやシルバーを薦めてきた。
元々は2014年に安倍政権が国民の資産を株価の釣り上げに使う目的で始められたこの制度を、自民党の引き起こした円安とインフレから身を守るために使おうということである。
ゴールドは、短期で見ても長期で見ても米国株よりも大きく上がり続けていることは読者も知っての通りだろう。
だが長期的に割安だったシルバーも、ここ数ヶ月でかなり上がってきている。以下は銀価格のチャートである。

今年はAI銘柄のLumentumとシルバーが筆者の当たり銘柄だろうか。去年はNVIDIAだった。
貴金属の相場予想については以下の記事を参照してもらいたい。