イギリス総選挙、世論調査まとめと注目すべき点

イギリス時間12月12日にイギリスで総選挙が実施される。一番の論点となっているのはEU離脱に対する是非であり、2016年の国民投票で一度結果が出た話がもう一度確認されることになるだろう。

概要については以下の記事に既にまとめているので、今回は世論調査についてである。

詳細については上記の記事を参照してほしいが、以前の記事から主要政党のまとめだけ再引用しよう。

  • 保守党: ジョンソン首相の与党、離脱派
  • Brexit党: ファラージ氏の離脱のためだけの政党
  • 労働党: コービン氏の最大野党、国民投票の再実施派
  • 自由民主党: スウィンソン氏、離脱阻止派

つまり、保守党とBrexit党がEU懐疑派、労働党と自由民主党が親EU派ということになる。

世論調査まとめ

世論調査は様々な調査会社によって行われているが、先ずはYouGovによるものをまとめてみよう。保守党、Brexit党、労働党、自由民主党の順番に支持率を並べている。

  • 12月3日: 42%、4%、33%、12%
  • 11月29日: 43%、2%、34%、13%
  • 11月26日: 43%、3%、32%、14%
  • 11月22日: 42%、4%、30%、15%
  • 11月20日: 43%、4%、29%、15%

ジョンソン首相率いる保守党の優勢はずっと変わっていない。Brexit党も3%前後で推移している。一方で親EU派の票を見てみると、2016年の国民投票の結果にもかかわらず残留賛成を押し出している自由民主党から、国民投票の再実施を要求している労働党に票が徐々に流れているようである。

次はComResによる世論調査を同じ順に並べる。

  • 12月3日: 42%、3%、32%、12%
  • 11月28日: 43%、4%、33%、13%
  • 11月26日: 41%、5%、34%、13%
  • 11月21日: 42%、5%、32%、15%

それほど変わっていないが、こちらでは労働党の票が伸びていない結果となっている。一方で自由民主党の支持率が下がっていることはYouGovの調査と同じである。

一度行われた国民投票の結果にもかかわらずEU残留を公約としている自由民主党については以前の記事で次のように書いておいた。

残留強硬派と言えるのが自由民主党である。EU離脱に関して自由民主党のウェブサイトには「EU離脱を止める」とだけ書かれている。国民投票に関する言及はない。2016年の国民投票など無かったという姿勢なのだろう。

労働党のウェブサイトに書かれているのは「2度目の国民投票で最後の意見表明を」である。要するに「もう1回だけ、これで最後だから」ということである。しかし2回目が正当化されるのなら3回目も正当化されるだろう。国民投票とはそういうものではないはずである。

自由民主党もそうだが、そうした姿勢がイギリス国民に支持されるのか、12月12日に結論が出るだろう。

そしてイギリス人はやはり自由民主党に懐疑的であるのかもしれない。そして保守党の支持基盤はどの調査を見ても揺らいでいないようである。大手メディアの報道からは伝わって来ないかもしれないが、イギリス国民は最初からぶれてなどいないのである。

結論

ジョンソン首相率いる保守党が第一党となることは既定路線のようである。一方で注目されるのは保守党が単独過半数を取れるのかということである。

保守党が単独で過半数を取れない場合もBrexit党との協力で過半数を確保しEU離脱を完遂するシナリオもある。しかしそれも出来ない場合は総選挙前の状況と同じ宙吊りの状態となり、事態は硬直するだろう。

投資家として少し興味深いのは、市場はどちらの場合によりネガティブに反応するだろうかということである。これまでのメディアの報道や市場を支配するエリートの見解ではEU離脱は破滅的だということになっていた。

しかし実際には最近のポンドの為替レートはEU離脱を推し進める保守党の優勢を背景に上昇している。以下はポンドドルのチャートである。

こうなってくるとこれまでのEU離脱恐怖論は何だったのかと言いたくなる。EU離脱に経済的マイナスがないと主張するつもりはないが、政治的理由によりネガティブな印象がメディアを通してばら撒かれたのは事実だろう。EUが無かった時も経済はしっかりと回っていたのである。メディアや市場の見解に一貫性を求めるのがそもそも間違っているのだろう。

こうした状況下でイギリス国民はどういう結論を出すだろうか。経済的にはやはりそれほど重要なイベントではない。米中貿易戦争と同じく、市場が気にしているのでそれに付き合うまでである。