引き続き、ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを創業したことで有名なジム・ロジャーズ氏のジミー・コナー氏によるインタビューである。
今回は中央銀行の金融政策と紙幣の価値について語っている部分を紹介したい。
紙幣の価値下落
ロジャーズ氏は前回の記事で貴金属のバブルが再来すると予想していた。
何故そうなるのか。紙幣の価値が危ぶまれているからである。ロジャーズ氏は次のように言っている。
2026年、2027年、ほとんどの通貨は厳しい状況に置かれる。政策に節操がないからだ。
立ち上がって「健全な通貨が必要だ」という中央銀行家は存在しない。その日の内に、演説を終える前に仕事を失ってしまうからだ。
どの国も通貨安政策から逃れることができない。そしてロジャーズ氏は紙幣の価値下落が来年から本格的に始まると言っている。
パウエル議長の退任とドル安
それはまさにアメリカの状況である。Fed(連邦準備制度)のパウエル議長は利下げをしないという理由でトランプ大統領から何度も批判を受けている。
そしてそのパウエル議長は来年5月に退任する。トランプ政権は既に新たな議長の選定を薦めており、間違いなく金融緩和に積極的な人物が選ばれるだろう。ベッセント財務長官によれば、新議長は年内に発表される。
トランプ氏やベッセント氏は、金利上昇で米国債の利払いが財政赤字の半分にまで膨らんでいることを気にしている。それで利下げをさせて、ドルの価値を犠牲に利払いを減らそうというわけである。
だからロジャーズ氏は次のように述べている。
問題はそこにある。それこそがわたしがゴールドやシルバーを保有している理由だ。
買い場が来ればもっと買うだけの賢明さを持ちたい。
結論
ドルをめぐる状況は宜しくない。だがロジャーズ氏は、ドル円やユーロ円でドル安をトレードすると言っているのではない。あくまで逃避先は貴金属である。
何故ならば、ほぼすべての通貨が多かれ少なかれ同じ状況だからである。日本では日本国債の下落が止まっておらず、金利が上がり続けており、ベッセント財務長官は日銀は利上げに追い込まれると指摘している。
アメリカとは逆の状況に見えるが、国債暴落を止めるための利上げが円の価値にプラスになるかは微妙である。日本国債の下落はそもそも止まるのだろうか。
ロジャーズ氏の言う通り、2026年はこれらの問題が表面化する年になるだろう。アメリカで新議長が発表されるのが年内であることを考えれば、それよりも早くそうなるかもしれない。
紙幣が駄目だとなれば、現物資産である貴金属などのコモディティ銘柄の時代が(もう既に来ているが)来るだろう。
ロジャーズ氏の『商品の時代』をもう一度紹介しておきたい。古い本なのだが、コモディティ投資の基本を説明した本としてこれよりも良いものはないからである。