米国株が上昇している。Fed(連邦準備制度)のパウエル議長が来年5月に引退することと、トランプ政権が利下げを望んでいることが主な要因だが、米国株はこれからどうなるのか。
上昇する米国株
米国株は4月の株安から完全に回復した。アメリカの株価指数S&P 500は次のように推移している。

筆者も当時の推奨銘柄の買い増しで儲けさせてもらった。
米国株は何故上がっているのか。そしてこれからどうなるのか。
トランプ政権の利下げ要求
米国株が上がっている理由は、Fedの利下げを徐々に織り込んでいっているからである。だがFedのパウエル議長が大幅な利下げをしようとしているのではない。パウエル議長はむしろ利下げに慎重であり、トランプ大統領がそれを批判しているのである。
そしてパウエル議長の任期は来年5月に切れる。トランプ政権はもっと金融緩和に積極的な新議長の候補を探しており、ベッセント財務長官によれば新議長は年内に発表されるという。
このため、今後の政策金利の推移を織り込んで推移する2年物米国債の金利は次のように下落している。

それで米国株が上がっているのである。
米国株の上昇は正当か
問題は、米国株の上昇が正当なものかどうかである。筆者の意見では、4月の株安はトランプ政権の関税が原因ではなく、関税そのものは引き金を引いただけであり、本当の原因は米国株が元々極めて割高だったからである。
米国株のバリュエーションについては年末のデイヴィッド・ローゼンバーグ氏の記事を参考にしてもらいたい。
結局、このバリュエーションの問題が数ヶ月後に株安を引き起こした。
そしてローゼンバーグ氏が言っていたのは、今の米国株のバリュエーションと米国債の金利水準では、米国株を持つより米国債を満期まで持った方がリスクなく儲かるという話である。
つまり、値上がりで小さくなった米国株のリターンに対し、米国債の金利が高いということである。
この議論を踏まえた上で、米国株には朗報がある。ここ数ヶ月、米国株が上昇しているのに対し、長期金利、特に株価に一番影響を与える長期の実質金利が下がっていることである。
アメリカの長期実質金利の推移は次のようになっている。

だから、米国株がそもそも去年から割高だという話を置いておいて、ここ数ヶ月の株高に関して言うのであれば、金利が下がったから株価が上がったのであり、何かファンダメンタルズに反して株価が上がっている状況ではない。このことは今の米国株にとって非常に重要である。
結論
筆者は4月の株安の後の米国株について、以下の記事で金利が上がらない限り赤信号ではないと説明しておいた。
そして今のところ金利は上がっていない。大まかな目安として長期金利で4%台後半より上に上がると危険水域だとも書いたが、長期金利は現在4.3%である。
これから金融緩和に積極的なFedの新議長の発表まで、金融市場は金融緩和を織り込んでゆく相場になる。
米国株にとって最大のリスクは、金融緩和がインフレを引き起こすと債券市場が判断し、金利が上がることである。
筆者は一番ポジションの大きかった推奨銘柄を利益確定したので、米国株の推移は筆者とはあまり関係ないとは言える。良い個別銘柄があれば買うが、そもそもの割高なバリュエーションから、米国株全体にはまったく興味がない。
だが米国株を引き続き買い持ちにしている投資家は、金利に注意しながらポジションを続けるのが良いだろう。以下の記事も参考にしてもらいたい。