2015年2Q、アインホーン氏のグリーンライト・キャピタル投資家向け書簡: Netflix、Micron、ギリシャ問題

デイヴィッド・アインホーン氏のグリーンライト・キャピタルは、2015年4-6月期を総括して投資家に書簡を送った。全文はここで見ることができるが、一部を翻訳して以下に紹介したい。

4-6月期のグリーンライト・キャピタルのパフォーマンスは1.5%のマイナスとなり、年始からは3.3%のマイナスとなった。

ポートフォリオはロング(買い持ち)が103%、ショート(売り持ち)が86%で、ネットで17%のロングとなっている。前回はネットで14%のロングだったから、買い持ちがやや微増していることになるが、大局的な見方は変わらずだろう。

以下、いくつかの銘柄とギリシャ問題に関するアインホーン氏のコメントである。

Netflix (NASDAQ:NFLX)

Google Finance – Netflix (NASDAQ:NFLX)

動画配信サービスを提供するNetflixは、ネットを通じて番組を見るという、既存のテレビ業界を置き換えるサービスであり、その将来性を買われて年始から株価が倍以上になっているグロース株の代表だが、アインホーン氏はこの評価は地に足がついていないと指摘している。

「Netflixは2020年以降の輝かしい業績を投資家にアピールすることで値を伸ばしてきた。今やこの会社はいくら稼ぐかではなくいくら資金を消費するかで評価されているが、その出費が本当に報われるかどうか、Netflixの投資家は誰も知らない。昨今の市場は、遠い未来の輝かしいストーリーを語る銘柄が上がる相場なのである」

Micron (NASDAQ:MU)

Google Finance – Micron Technology (NASDAQ:MU)

半導体メーカーのMicronはここでも紹介してきた銘柄であり、またグリーンライト・キャピタルの最大ポジションでもあったが、2Qの決算が不振に終わったことで株価が大幅に下落した。個人的にもかなりのポジションを取っていたので、久々の大損である。

アインホーン氏も「Micronはわれわれのポートフォリオのなかで一番の負け犬となった。半導体は業績の良し悪しに周期のある業種であり、残念ながら、われわれは周期を逃したようである」と述べている。

今後の見通しについては「Micronは次のいくつかの四半期に影響しうる製造上の問題を抱えているが、それでも株は売られすぎている」と書いており、以下のように分析している。

「不振に終わった今回の四半期の純利益を4倍すれば、P/E(株価収益率)は12、最近で一番好調だった四半期を4倍すればP/Eは5となるが、Micronの業績はいずれこのピークの純利益を超えてくると予想している。Micronが製造するDRAMとNANDは、今後輝かしい分野だからである」

個人的にもこの意見に同意であり、PC需要の落ち込みで一時的に軟調となった半導体セクターは、モバイルとタブレット、そしてクラウドの支配する今後のコンピュータ業界で非常に重要な役割を果たすだろう。決算の分析は以下の記事を見て欲しい。

しかしやはり長期投資となり、短期的には投資家はPC業界の落ち込みを他銘柄の空売りなどでヘッジをする必要が出てくると想定している。

ちなみに14日、中国の半導体メーカー紫光集団がMicronに対し買収提案を行ったと報道されたことでMicronの株価は11%の急反発となっている。

ギリシャ

グリーンライト・キャピタルは引き続きギリシャの銀行に少額の投資をしているが、損失もリスクも大きくないと書いている。

ギリシャ問題に関するアインホーン氏の意見は、わたしや他の経済学者・ファンドマネージャーのものと同じであり、「緊縮財政は経済を改善しなかったし、負債は維持不可能である」と述べているが、ギリシャ政府の振る舞いについては否定的である。ギリシャ問題の経済学的本質については以下の記事に書いた。

先ず、国民投票後に辞任したギリシャの元財務相、バルファキス氏に関する洞察が面白い。曰く、「バルファキス氏は自分がゲーム理論の教授であることを公言して回っていたが、交渉術には明るくなかったに違いない。ゲーム理論を交渉で使うための第一の条件は、ゲーム理論を使っていると口に出さないことである」。

アインホーン氏はギリシャもフランスのように債務をただ先延ばしにするべきだったと主張する。「フランスは、負債をいずれ払うと言い続けることで、国債利回りをドイツよりも少し高いだけに抑えている」。

ギリシャの負債残高はGDP比でかなりの数値に達してはいるが、負債は十分に再編されており、今後何年かの支払いはそれほど過大ではなかったとアインホーン氏は述べる。欧州の政治家は問題を後回しにするのが好きなのであり、それに乗らずにギリシャが声高に叫んだために、経済的に失敗したのだと主張している。

日銀の黒田総裁の話した例えを持ち出して、次のように述べている。

「ピーターパンのように飛べるということを疑った瞬間から飛べなくなるのであり、それを自分で持ちだしたが最後、演劇は終わり、市場は厳格な数学の理論によって負債を見るだろう」。