グロース株をファンダメンタルズ分析で評価する方法

本稿では、グロース株をファンダメンタルズ分析で評価する方法を説明する。

グロース株とは、現時点で利益が出ていないにもかかわらず、将来の収益性を評価されて高い株価が付いている銘柄のことである。

こういった銘柄はP/E(株価収益率)が100を超えていたりと、ファンダメンタルズを無視した株価が付いていると言われることが多いが、実際はグロース株の株価も、ファンダメンタルズ分析に基づいた評価によって決まっている。本稿ではこれを説明したい。 では、動画配信サービスを展開するNetflix (NASDAQ:NFLX)を例に取ろう。Netflixの現在の株価、一株当たり売上高、一株当たり利益、利益率、P/S(株価売上高倍率)、P/Eは以下の通りである。

  • 株価: $100
  • 一株当たり売上高: $12.8
  • 一株当たり利益: $0.55
  • 利益率: 4%
  • P/S: 7.75
  • P/E: 182

P/Eが182と、この数字だけを見れば非常に割高な銘柄に見えるが、これは次の2つの要素を考慮していない。

  • 将来の売上高成長率
  • グロース株は利益を犠牲にして将来のために投資をする傾向がある

そこで、先ず3年後の売上高を推測してみたい。 Netflixの売上高はここのところ年率で約25%の伸びを示している。この傾向があと3年続くと大雑把に仮定すると、3年後の一株当たり売上高は次のようになる。

  • 一株当たり売上高 = $12.8 * 1.25 * 1.25 * 1.25 = $25

では、この時利益はどうなるか? 現在のNetflixの利益率は4%だが、これは将来のための投資によって圧迫されている分を考慮していない。Netflixは売上高の約9%を研究開発費に用いる傾向があり、これを利益に加えれば、実質的な利益率は13%ということになる。したがって、3年後の一株当たり利益は次のようになる。

  • 一株当たり利益 = $25 * 0.13 = $3.25

よって、株価がこのまま$100で推移する場合、P/Eは以下の通りである。

  • P/E = $100 / $3.25 = 30.76

やはり少し割高だとは思うが、比較的現実的な数字になったのではないか。同じ計算をもう一度繰り返せば6年後のP/Eが算出できるが、その数字は15.74となり、ようやくS&P 500の平均値を下回る。

つまり、Netflixは年率25%の成長が6年間続く前提で評価されているということである。これをどう考えるかである。

動画配信サービスというセクター自体は、その成長率で伸びる可能性はあるだろう。最終的にテレビに取って代わる業界の将来の市場規模は非常に大きい。しかしNetflixという企業単体ではどうか? 広告戦略や財政面で失敗することはないだろうか? 投資家はそういう側面から株価を批評してゆくことになる。

ちなみに、通常の投資家の情報源では一株当たり売上高は書いていないことが多いので、ReutersやGoogle Financeで調べられるP/S(Price to Sales ratio、株価売上高倍率)を使って計算式を一般化しておく。gは年率の売上高成長率、mは利益率とする。

  • n年後のP/E = { P/S / (1+g)^n } / m

この式を用いて、Amazon (NASDAQ:AMZN)、Google (NASDAQ:GOOG)、Alibaba (NYSE:BABA)、Twitter (NYSE:TWTR)、Facebook (NASDAQ:FB)の3年後のP/Eを概算した表が以下である。

growth-stocks-future-pe-ratios

グロース株のなかでは、将来の成長が比較的安泰なNetflixとFacebookが評価されているということだろうか。 計算ツールを以下においておくので、適宜利用してほしい。成長率や利益率は、過去の決算や将来性を考えて大まかに設定する必要がある。

計算ツール

  • 何年後か:
  • P/S:
  • 年間成長率: %
  • 想定利益率: %


計算結果: n年後のP/E: