バルチック海運指数上昇、日本の海運株はどうか?: NSユナイテッド海運、商船三井、共栄タンカー

前回の記事で紹介したように、ばら積み船の運賃を示すバルチック海運指数が上昇している。

同時に原油タンカーなどの運賃も上昇しており、上記の記事では米国のタンカー運行会社を紹介した。一方で日本の海運株も割安放置されており、買いを入れられるか検討してみたので、以下に分析結果を紹介する。

NSユナイテッド海運 (TYO:9110)

日本の海運株で運賃上昇の恩恵をもっとも受けやすいのはNSユナイテッド海運 (TYO:9110)だろう。外国向け海運の売上高比率が84%と高く、その内容は運賃の上昇しているばら積み船、原油タンカーなどである。

円安ドル高による売上向上が見込める上に、原油安によるコスト軽減の恩恵もある。(原油については価格下落前に購入した在庫を消費しきれていないことが決算で言及されているが、じきに効果は出てくるだろう。)

しかしながら、主な積み荷である鉄鉱石にはチャイナ・リスクがある。鉄鉱石は中国が大量に輸入しているため、中国の景気減退懸念から鉄鉱石の価格は低迷しており、これを受けて豪ドルは6年来の安値に沈んでいる。鉄鉱石の価格は供給増と需要減の両方の影響を受けている。

この意味ではやはり、ばら積み船よりも原油タンカーに投資すべきなのではないかと個人的には考えている。原油安は需要減よりも供給増による部分が大きく、需要も中国の景気だけに偏って影響されるわけではない。その意味では、鉄鉱石を主に扱う本銘柄にはリスクがある。

商船三井はコンテナ船がリスク要因

一方、商船三井 (TYO:9104)も不定期船の比率が売上高の47%と多く、ドライバルク船(23%)、原油タンカー(8%)、LNG船(2%)の売上上昇が見込めるが、一方で市況の改善していないコンテナ船も43%と比率が高いため、投資の際にはその影響を割り引く必要がある。

日本の海運株は割安もリスクあり

こうして見れば、本命の原油タンカーだけに賭けることが難しい日本の海運株は、前回の記事で紹介した米国のタンカー運用会社よりは魅力が劣ると言える。日本にも共栄タンカー (TYO:9130)などがあるにはあるが、運賃が低迷している間にタンカーを売却しているなど、運賃上昇の恩恵をフルに受けることができていない。

こうした意味で、やはり投資家はできる限り多くの市場にアクセスを持つべきである。米国株に手を伸ばせば良い銘柄があるのに、日本株しか買わないためにリスクある銘柄しか買えないのでは、パフォーマンスに大きく差が出てしまうだろう。

米国の海運株については前回の記事を参考にしてほしい。