ドラッケンミラー氏: ビットコインはFacebookに抜かれたMySpaceのよう

前回に引き続きスタンレー・ドラッケンミラー氏のインタビューである。前回は暗号通貨全体について語っていたが、今回は個別の暗号通貨についてである。

ビットコインか他の暗号通貨か

前回の記事でドラッケンミラー氏はビットコインについて以前より勉強したと述べていた。彼はビットコインについてあまり考えていなかったが、トレーダーらしく自分が買っていない資産が爆上がりしているのを見ていられなくなったという。

それでドラッケンミラー氏は今では暗号通貨に対してフェアな見方をしていると言えるだろう。彼は次のように述べている。

ビットコインはゴールドのようになるだろうか? 分からない。少なくともここ1、2年は非常によくゴールドの代わりを務めている。

そして今回のテーマは「どの暗号通貨が勝者になるのか」である。彼はこう論じている。

価値を貯蔵するデジタルゴールドとしての地位を他の暗号通貨から守れるだろうか? それはかなり難しいと思う。

商業契約を仲介する暗号通貨の機能について考えなければない。スマート・コントラクトなどの分野における先駆者は、イーサリウムだろう。

暗号通貨には決済だけでなく、契約を作成し自動的に執行する機能が存在している。この機能はビットコインの誕生後に進化してきたため、ビットコインは後発で時価総額2位のイーサリウムに大きく遅れを取っているのである。

ドラッケンミラー氏は次のように続けている。

ビットコインがその地位を維持できるかどうかについては少々懐疑的だ。

ビットコインはFacebookの前に存在したMySpaceを思い起こさせる。あるいはGoogleが台頭する前のYahooと言った方が良いかもしれない。

どれだけの読者がMySpaceを覚えているだろうか? Facebookが大きくなる前にシェア1位を獲得していたSNSである。しかしビットコインの立場はそのMySpaceよりも更に脆弱である。

ビットコインの設計は固定されているため、新たな機能を追加することは出来ない。よって新たな機能を備えた別の暗号通貨に抜かれることになる。このアイデアは実は筆者が3年前に既に表明しているものである。

筆者はこの考えをずっと頭の中に持っていたが、今年このシナリオに機関投資家たちが気付き始めると予想し、イーサリウムがビットコインをアウトパフォームすると主張した。

1ヶ月遅れてドラッケンミラー氏も同じ結論に辿り着いたようである。

成長する産業の見つけ方

暗号通貨やブロックチェーンはここから成長するビジネスだろうか。ドラッケンミラー氏は投資家らしい嗅覚でそれを見分ける方法を教えている。

ビジネスに投資する時にいつも考えるのは、スタンフォードやブラウンやMITの若者たちが何処へ行っているかだ。

彼らのうちかなり多くが暗号通貨を愛しており、彼らはそこに行っている。

優秀な人材が行くところに急成長が出来上がるということだろう。

暗号通貨自体に投資するだけでも十分魅力的な投資対象だが、この技術はそれだけではない。ドラッケンミラー氏はこう続ける。

ブロックチェーン決済やスマートコントラクトについてはチャンスがある。これらはまだほとんど投資されてさえいない。

筆者もドラッケンミラー氏に完全に同調する。産業の成熟度を考えれば、暗号通貨の決済やスマートコントラクトについてはまだ1イニング目にも入っていないほどなのであり、例えば最初期のMicrosoftやAppleに投資をするようなダイヤの原石のような案件が転がっている。目のある投資家ならこのチャンスがどれほどのものか分かるだろう。

結論

同じことを以下の記事でスコット・マイナード氏も言っていたが、ドラッケンミラー氏もついにイーサリウムに目をつけ始めた。

世界中で決済手段として使われる前に既に電力消費がノルウェー1国に達しており、しかも設計上それを是正できないビットコインが長期上昇トレンドを続けるのは無理な話であり、暫定的に「ネクスト・ビットコイン」としての地位にふさわしいイーサリウムが代わりに上昇するのは分かりきった話だった。それでここでは事前に書いておいたのである。

筆者がビットコインを支持してからしばらくして著名投資家がビットコインについて語り始めたように、しばらくすると著名投資家たちも同じようなことを語り始めるだろう。

トレーダーとして感じるのは、暗号通貨相場の動き方が普段機関投資家が考えているような理屈に合致してきたということである。機関投資家の資金がかなり入ってきたため、彼らの思考が価格に反映されるようになってきている。機関投資家や中央銀行の考えを先に読むことについては筆者の十八番なのである。

さて、暗号通貨の価格は今後どう推移するだろうか。ドラッケンミラー氏は次のように予想している。

ジェイ・パウエルが振る舞い方を変えない限りは、ゴールドもビットコインも追い風を受け続けるだろう。ビットコインはボラティリティの高いゴールドのようなものだ。

パウエル議長率いるFed(連邦準備制度)がインフレを甘く見る限りはコモディティ(金属や穀物)や暗号通貨の上昇トレンドは続くだろう。以下の記事に書いた通りなのでそちらを参考にしてもらいたい。

一方でドラッケンミラー氏はパウエル氏が振る舞い方を変えた後のシナリオについても語っている。長期投資を続ける一方で、離脱の準備もしておかなければならない。