ジム・ロジャーズ氏: 誰でも優れた投資家になれる方法

ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを立ち上げたジム・ロジャーズ氏がNomad Capitalistによるインタビューで誰でも優れた投資家になれる方法を語っている。

優れた投資家になる方法

ロジャーズ氏は人々に投資についてよく聞かれるという。優れた投資家になってお金を儲けたい人はたくさんいるだろう。それを実現するためにはどうすれば良いのだろうか?

大学などで講演をする時に、投資家になるためにはどういう勉強をすれば良いかと聞かれる。その時の会話は大体こうだ。

「歴史を勉強しなさい」

「そうじゃないんです、あなたみたいにお金持ちになりたいんです」

「OK、なら歴史と哲学を勉強すればいい」

「一体何を言っているんですか?」

優れた投資家であればくすりと来るはずだ。ロジャーズ氏は正しいことを言っているのだが、彼らが求めているのは正しい答えではないのである。

人々はお金を儲ける方法が知りたいのではない。努力をせずにお金を儲ける方法が知りたいのである。金融業をやっていれば人々によく聞かれるはずだ。「投資を始めたのですが、どの銘柄を買えば良いですか?」しかしわたしのポジションを彼らに教えたところで何の意味もないということが彼らには分からない。

先ず第一に、投資家はポジション1つで投資をしているのではない。あるポジションが下がった時には他のポジションがそれを補うようにポートフォリオを構成するのが投資家の仕事である。特定のポジションが上がったとか下がったとかは投資家にとって重要なことではない。ポートフォリオ全体を伝えなければ何の意味も為さないが、彼らにはそれが分からない。

第二に、他人から教わったポジションはいつ売れば良いのかが分からない。何故そのポジションを買ったのか、何故そのポジションが良いのかを理解していないのだから当たり前である。良いポジションが10%下がっただけで狼狽して売ってしまい、その後2倍になるとか、10%下がったがその人が正しいと思って持ち続けていたら、教えた本人は誤りを認めて早々と売却していたとか、そういうことが当然のように起きる。

どちらのケースも教えた本人には困ったことなどない。どちらも投資家として平常運転の判断である。一方、自分で努力することを放棄してすべてを他人に委ねた人は何が起こっても何も分からない。努力することなしに金など儲けられないのだが、それが分からない人は他人に銘柄推奨を聞き続ける。

歴史から学べ

面白いことに、ロジャーズ氏はこうした人々には非常に不人気である。その理由はロジャーズ氏がトレーダーではなくアナリストだからである。

彼らは今どの銘柄を買えばお金が儲かるかを知りたいのであって、投資について勉強したい訳ではない。こうした人々にとってアナリストというのは無用の長物である。タイミングの判断をするのはトレーダーなので、アナリストの意見から彼らが望むものを得ることは絶対にない。ロジャーズ氏はクォンタム・ファンドでトレーダーの役割をソロス氏に任せていた。

一方で自分で考える材料を欲している人々、自分で考える頭を持っている人々にとってはロジャーズ氏の考えは知恵の宝庫である。彼は次のように続ける。

しかし歴史を学べば大部分の人々の先を行ける。

それこそが、例えばBridgewaterのレイ・ダリオ氏がオランダ海洋帝国や大英帝国とその通貨について研究をしている理由である。

例えば財政赤字と貿易赤字を垂れ流しながらドルが大きな下落をしていないのは何故か? ドルはいずれ暴落するのだが、そのタイミングはいつだろうか? そうしたことを考えるためには、ドルより前に基軸通貨だったポンドとギルダーの事例について研究するほかない。だがそれをする人はダリオ氏以外にほとんど居ない。

また、現金給付を何度も続ければ経済はどうなるか? アメリカで何が起きているかを見ればそれは明らかなのだが、日本人がそれを学ぶことはない。

また、COP26のためにイギリスへ出発した岸田首相は、脱炭素政策に向けての日本の強い決意を発信するという。脱炭素政策で化石燃料を無理矢理減らしたヨーロッパでは、天然ガス価格が高騰して貧しい人々が冬を越せなくなっている。

多くの人々は歴史どころか現在からも学ばない。基本的に彼らは何も学ばないのである。ロジャーズ氏はコミカルに次のように付け加える。

歴史から学べることは、人は歴史から学ばないということだ。

そもそも脱炭素という意味不明な概念(本気で脱炭素すれば人間は消滅してしまう)がそもそもヨーロッパから降ってきたものであり、自分で考えることなく人の意見を欲する人々はこうしたものに容易に騙される。必要なのは、自分で考えることである。

結論

しかしこうした人々が自分の頭で考え、必要な勉強を自分で行い、投資で成功することはない。彼らは証券会社のホームページでどのボタンを押せば金が降ってくるかを知りたいのである。そしてそれこそがまさに彼らが金持ちではない理由なのだが、彼らがそれに気付くこともないだろう。

一方、自分で考えることを選択した人々には自分の思考に相応の報酬が待っている。それが金融市場の良いところである。