ジム・ロジャーズ氏への質問: どれほど状況が悪くなれば自分のポジションを売るか

ジョージ・ソロス氏とともにクォンタム・ファンドを立ち上げたことで有名なジム・ロジャーズ氏がJohn Arc Showのインタビューで様々なテーマについて話しているが、ある質問についての答えが面白かったのでまずこれを取り上げたい。

ポジションを閉じるタイミング

聞き手はこのインタビューで様々な質問をロジャーズ氏にしているが、その中の1つがこれだった。

どれくらい状況が悪くなれば株式やコモディティなどのポジションをすべて解消するか?

聞き手が聞いているのは明らかにポジションをクローズする(買っていれば売り払う)基準である。どのような状況になれば買っている株を売るだろうか?

読者もこの質問を自分で考えながらロジャーズ氏の答えを読んでほしい。自分がポジションをクローズする基準は何か?

ロジャーズ氏は笑いながら次のように答えている。

質問は「状況がどれだけ良ければ」の間違いだろう。状況が本当に酷ければ、底値で売りたくない。

非常にロジャーズ氏らしい答えである。

当然だが、状況が本当に酷いということは株価は底値であるということである。逆に状況が本当に良いということは、それが天井であるということである。

あまり経験のない個人投資家には「良い会社の株」「先進国の株式」にこだわっている人が多いのではないか。だが良いもので、その良さを皆が知っているものは既に高値であり、良いものを高い値段で買ってもまったく利益にならない。

投資家の利益とは市場に自分の知見を提供する対価である。多くの人が悪いと思っているが、実際には良いものを見つけたならば、その人は安値で買うことができ、市場に正しい意見を反映させたことによりその投資で利益を得られるだろう。

他人の認識と自分の認識のギャップの分だけ儲かるというのが金融市場なのである。そうでなければ投資家は何故儲かるだろうか。そうでない投資家は金融市場を通して社会に何を貢献しているだろうか。インデックスを買っているだけで利益が入ってくると思っている人はその根拠は何だろうか。金融庁や証券会社に騙されている人は一度考えてほしい。この世に不労所得など存在しないのである。

戦時中の相場

「最悪の状況」と呼ぶに相応しい状況がいま世界経済で起きている。ロシアのウクライナ侵攻である。

ジンバブエや北朝鮮ですら買いだと言うロジャーズ氏のことだから、戦時中の株式について次のように述べているのも不思議ではないだろう。

戦争や内戦の後にその国に投資をすれば大きな利益を上げられる可能性が高い。それは安値で、誰も買おうとするエネルギーを持っていない。誰も興味を持とうとしない。そういう場所にいつも最高の投資機会が落ちている。

そしてウクライナへの投資もロシアへの投資も推奨している。

ロシア株に関しては長らく取引停止になっていたが、その後もしばらくはアメリカに上場しているロシア株ETFを買うことが出来た。そして読者も知っての通り筆者は暴落し続けるロシア株ETFをドルコスト平均法で買い続けた。

ロシア株ETFはその後取引停止となったが、どうやらやはりそこが底値だったようだ。一番最後まで取引されていたロシア株ETFのチャートは次のようになっている。

筆者は元々の値段の半値になった辺りから最後の瞬間に元々の価格の2割強になるまでドルコスト平均法で買い続けた。

そしてロシア株自体は今週から取引再開となっているが、今の下落幅は元の値段の30%程度である。当たり前の話だが、半値から2割強にはもう二度と届きそうにない。

結論

ちなみに筆者がこのロシア投資について心配していたのは最初から値段ではなかった。大勢の人が急落におびえている中で、安い値段自体は元々問題ですらないと思っていた。

ロシア株が半値や2割になるというのは、ロシア経済が消えてなくなるということである。冷静に考えればそれが有り得ないことは誰にでも分かる。しかし急落する株価を前にすると、多くの人にはそれが出来なくなる。ロジャーズ氏の言いたいことはそういうことである。

一方でこのロシア投資のリスクは、当時の記事に書いておいた通りロシア株の現物を買えない状況だったということである。アメリカの金融機関を通して投資をして、果たして金が戻ってくるのかということである。

バイデン氏はどうも最初から戦争を煽っているように見えるのだが、アメリカはロシアに対する自分の軍事拡大に同意しない人間から次々に資金を奪い取っている。彼らの理屈は人殺しのロシアに資金を注ぐのかということだが、米国株に平気で投資する人間が何を言っているのかと笑ってしまう。

この賭けはどういう結果になるだろうか。誰もアメリカに資金を預けたくなくなる世界が来るのかもしれない。それがゾルタン・ポズサー氏の予言する世界である。