ドラッケンミラー氏: 中国経済はアメリカの脅威にはならない

引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを長年運用したことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のBloombergによるインタビューである。

今回は中国経済について語っている部分を紹介したい。

中国経済の現状

中国経済は微妙な状況にある。2022年の中国株は、アメリカの金融引き締めに加え、恒大集団の破綻に始まる不動産バブルの崩壊によって大きく下がった。

コロナを厳しく取り締まるゼロコロナ政策によってロックダウンをいまだに行なっていたことも経済減速に拍車をかけていた。

しかし2022年の終盤から、ゼロコロナ政策の解除とアメリカにおける金利低下が重なったことで、中国株は多少持ち直している。上海総合指数のチャートは次のようになっている。

アメリカのヘッジファンドマネージャーには中国に好意的な人物も多いが、ドラッケンミラー氏は中国経済についてどのように考えているだろうか。

彼は次のように語っている。

6年か7年前まで中国のことが好きだった。中国に行けば、上海の熱気はニューヨークのお祭り騒ぎのようだった。素晴らしい熱気のなかに素晴らしい起業家たちがいて、彼らは自分の事業に熱中していた。

だがその後習近平氏が自分の政策を行なった。

習氏の政策とは、例えば自国のゲーム産業を子供に悪影響を与えるとして取り締まったり、営利目的の学習塾を禁止して教育業界を壊滅させたり、自国のIT企業を潰したりといったものである。

例えば中国経済の発展を理由に、子供に中国語を習わせるためにわざわざシンガポールに移住したジム・ロジャーズ氏でさえ、習氏のこうした政策には苦言を呈していた。

ドラッケンミラー氏の語る中国

ドラッケンミラー氏も過去の中国経済は良かったと考える1人らしい。彼は次のように続けている。

中国という国と中国の発展には、お祭り騒ぎのニューヨーカーたちのような多くの中国の人々が作る資本主義が内部にあった。彼らは激動の経済のなかで新しい事業を行なっていた。

だが習氏は資本主義者ではなかった。

アメリカのファンドマネージャーらが称賛するのは中国経済に資本主義的な考え方を取り入れた鄧小平氏である。だが習氏は鄧氏が導入したやり方を取り払ってしまった。

ドラッケンミラー氏は次のように言う。

彼は何故中国が発展し成功したのかを理解しない。あるいは彼にとって権力さえ維持できればそれはどうでも良いのかもしれない。

この発言は習氏の本質を突いているかもしれない。習氏が自国のIT企業や教育業界を締め上げたとき、筆者も何故中国は自殺行為をするのかと思った。だがよく考えてみれば、それは習氏にとって自殺行為ではなかったのである。

それは習氏と、産業界を支持基盤に持つ李克強氏のような政治家との争いであり、習氏が自国の産業界を攻撃していたのは、産業界を支持基盤に持つ敵対勢力の政治家たちを攻撃していたのである。

それは純粋な権力闘争であり、習氏はそれにさえ勝ってしまえば、中国経済がどうなろうがどうでも良いのである。どれだけ国民が不満を抱こうとも、政敵さえ潰してしまえば政権を失うことはない。

結論

そうした国の経済を、ドラッケンミラー氏のような生粋の資本主義者がどう見るかは想像に難くない。彼は次のように主張する。

10年か15年の間には何かが起こるとは思えない。為政者が代わりでもしない限り、中国経済は停滞するだろう。

当面の間、中国経済がアメリカにとって大きな脅威になるとは思えない。

中国がアメリカに代わって覇権国家となると長らく主張していたレイ・ダリオ氏でさえ、現在の習近平政権には懸念を抱いている。

習氏は最近の体制変更で鄧小平氏の系譜を受け継ぐ政治家をすべて排除してしまった。ダリオ氏が以下の記事で詳しく書いているので、興味のある人は読んでみてもらいたい。