サマーズ氏: 原油価格上昇がインフレ第2波をもたらす危険性

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がCNNのインタビューで、最近の原油価格の上昇とインフレへの影響について語っている。

エネルギー価格上昇

ここ数ヶ月、原油価格が上昇している。例えば原油価格は2022年からのアメリカの金利上昇によって長らく下がっていたが、7月からは上昇に転じている。

サウジアラビアの原油減産継続などが原因だが、これは同時にFed(連邦準備制度)とOPEC+との戦いであるとも言える。

産油国の集まりであるOPEC+は当然ながら原油価格を高値で維持したいが、インフレを抑えたいFedは原油価格を下げたい。

2022年以降、勝利を収めてきたのはFedだった。Fedの引き締め政策は見事に奏功し、世界の金融市場から資金を吸い上げた。株価とコモディティ価格はともに下がった。ロシアにダメージを与えたのは、愚かな対露制裁ではなく原油価格を下落させたFedの引き締めだったと言えるだろう。

だがアメリカのインフレ率は下がってきた。そこで問題が生じる。インフレ率下落でFedが引き締めの手を緩めると市場が予想すれば、市場は緩和的になってしまうことである。

原油価格も、引き締めが今後も加速すると市場が織り込んでいれば最近の価格上昇は起こらなかっただろう。だがFedが手を緩める段階に来ているからこそ、サウジアラビアの減産が原油価格に効いているのである。

原油価格上昇はインフレ第2波をもたらすか?

アメリカのインフレ率が下落するなかで原油価格が上昇する今の状況について、サマーズ氏は次のようにコメントしている。

最近の良いニュースは、インフレ期待とコアインフレ率が下落傾向にあることだ。それは好ましい。

だが(全体の)インフレ率がやや再上昇する中で、インフレの状況が、高い物価が高い物価を呼び、高い賃金が高い賃金を呼ぶような悪循環に陥るのかどうかが問題となる。

インフレの難しいところはここである。インフレ率は9%から3%まで下がった。だが下がったからと言って手綱を緩めると、金融市場では原油価格などが上がり始めて将来のインフレの原因になる。

実際、1970年代の物価高騰時代には、早すぎる緩和転換によってインフレ第2波、第3波が発生した。当時のインフレ率のチャートは次のようになっている。

サマーズ氏は、丁度今のアメリカ経済がこの谷間の部分にある可能性を指摘しているのである。彼は次のように続けている。

歴史的には、インフレには偽りの夜明けが見られることが多い。インフレを再加速させ、それまでの努力を無にしてしまうことが一番の懸念だろう。

わたしはそれを予想しているわけではない。だが、最近の原油や天然ガスの値動きは、そうしたリスクを増加させる。

結論

原油価格上昇のお陰で、少し前に推奨したウランの価格も調子が良い。

だがそろそろアメリカの景気後退に備えてヘッジが必要になってくることは、以下の記事で伝えてある通りである。アメリカ経済が沈めばエネルギー価格も無事では済まない。

サマーズ氏と同じく今回の物価高騰を早期に予想したジェフリー・ガンドラック氏もインフレ第2波を予想しているが、それよりも前にデフレが来るのが先だと言っている。そちらも参考にしてもらいたい。