ガンドラック氏: コロナ後の緩和による好景気は終わり、米国経済はデフレと景気後退へ

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のFOX Businessによるインタビューである。

下落したインフレ率

前回の記事ではコロナ後に現金給付などによりアメリカ経済にばら撒かれた資金がそろそろ底を尽きかけているとガンドラック氏は説明した。

ではそれに伴い金融政策はどうなってゆくのだろうか? それが今回の話題である。

まずはインフレ率だが、Fed(連邦準備制度)の金融引き締めによって、CPI(消費者物価指数)のインフレ率は9%から3%ほどにまで下がった。

それは良いことにように思える。日銀の植田総裁が言ったように、経済にとってもっとも効率の良いインフレ率はゼロである。誰かが2%だと言い、誰もがその出鱈目を無批判に信じたのだが、その件については以下の記事における白川元総裁の見解が参考になるだろう。

だがガンドラック氏にとっては、Fedがインフレ率を更に下げたいことがむしろ問題なのである。彼は次のように言う。

ジャクソンホール会議でパウエル氏はややタカ派だったように見えた。過去12ヶ月、インフレを2%まで下げるという彼の決心は堅いままだ。

CPIが2.98%に下がったところまでは良かったが、彼らはインフレ率を更に下げたいようだ。

何故それが問題なのだろうか。1つの疑問は、彼らはインフレ率が実際に2%になってから引き締めを止めるつもりだろうかということである。

だが金融政策が実体経済に届くまでには時差がある。2022年初頭に開始された金融引き締めによって、インフレ率は2022年秋にようやく下落を開始した。

であれば、インフレ率が2%の時に引き締めを止めれば、その政策変更が実際にインフレ率の下落を止められる時には、インフレ率は何処まで下がっているだろうかということである。ガンドラック氏は以前次のように言っていた。

インフレ率が9%が2%まで極めて急速に下落するならば、下方向に行き過ぎると考えない理由が何かあるだろうか?

何故2%で止まるのか? そこに何か魔法でもあるのか?

Fedは恐らくやり過ぎる

去年からのインフレ率下落を的確に予想したガンドラック氏は、インフレ率の下落がこのまま底を突き破ってしまうと言う。

インフレ率を2%に向けて下げることに熱心なFedは、恐らくやり過ぎてしまうだろう。2021年や2022年前半にインフレ率を2%以上に、わたしの推測では4%以上にしようとしていたFedは、インフレ率を4%どころか9%まで上げてしまった。

インフレ率は今や9%から3%まで下がっている。CPIはそこから少し再上昇しているが、それはFedの決意を強めるかもしれない。

だが、前回の記事でガンドラック氏が言っていたのは、コロナ後にばら撒かれた現金給付の残金や、家賃や奨学金返済、税金などの支払い猶予がなくなろうとしているということである。

ガンドラック氏はこう続ける。

しかし税金や賃料、奨学金の支払いや、クレジットカードの支払いの増加などが重なり、わたしの予想通り経済が減速すれば、インフレは最終的には2%に下がるだろうが、そのまま一時的にデフレまで行ってしまうだろう。そしてそれが極めてインフレ的なFedの対応を引き起こす。

ガンドラック氏は筆者と同じ予想をしているらしい。つまり、Fedは一度インフレ打倒に成功し、インフレ率は目標水準まで下がるが、インフレ率を下落させた金融引き締めは経済成長率をも下落させるだろう。

そしてハイエク氏の言うように、インフレ政策で無理矢理雇用を生み出した後にお決まりの大量失業が発生し、Fedは慌てて緩和を再開する。

そして現在より酷いインフレ第2波に繋がってゆくのである。インフレ第2波は今や多くの識者が予想しているが、コロナ後にこれを予想したのは筆者の知る限り以下の筆者の記事が最初である。

次の緩和では金利が高騰する

さて、ここから面白いのはガンドラック氏が次の金融緩和によって金利上昇を予想していることである。

最近、金融市場では金利が再び上がっている。厳密に言えば長期金利が上がっている。アメリカの長期金利は次のように推移している。

これは米国債からの長期的な資金流出の始まりだという意見もある。

だが、ガンドラック氏はやや違う見方をしているらしい。彼はむしろ、本格的な金利上昇が始まるのはこれから始まる景気後退の後だと言う。彼はこう述べている。

債券市場の長期下落相場は次に起こることではないかもしれない。だが景気後退が起こった後の経済政策は非常にインフレ的なものになり、その結果として債券の長期下落相場は起こるかもしれない。

次の景気後退では、景気後退が深まるにつれて、過剰な紙幣印刷と金融緩和によってむしろ債券の金利が上がるというややこしい状況になるだろう。

景気後退で金利が下がる。恐らくその段階では、市場予想より大きくなる景気後退の方に投資家の注意と悲観は行っているだろう。

だがそこから回復するにつれ、政府と中央銀行がまたしても緩和をやり過ぎたということに市場は気付くだろう。そうしてインフレと金利高騰の第2波が始まる。

だがまずは来年の景気後退である。それもそろそろだろう。ヘッジファンドの空売りも始まっている。