3月FOMC会合、ドルは上下両方にリスクシナリオあり

アメリカの中央銀行に相当するFed(連邦準備制度)は3月20日から21日(米国時間)まで金融政策決定会合であるFOMC会合を開催し、新たに決定した金融政策を21日に公表する。

今回の会合はFedの新議長に就任したパウエル議長が率いる初のFOMC会合であり、株式市場が世界同時株安で揺れる中、投資家の注目を集める会合となっているが、今回の会合にはハト派(金融緩和寄り)、タカ派(金融引き締め寄り)の両方向にそれぞれリスクシナリオがあるので、それを説明したい。

3月FOMC会合

さて、今回はパウエル議長の初めての会合ということにはなるが、投資家にとっての関心事はいつもの会合と同様にFedがハト派のシグナルを出すのか、タカ派のシグナルを出すのかということである。これによって株式市場やドル相場などへの影響が変化することになる。

いつもの通り、会合前の市場の織り込みは金利先物市場に表れている。金利先物市場は93%の確率で利上げがあると考えており、市場は利上げをほぼ既定路線として織り込んでいるということになる。Fed自身は3月の会合に関して特別に利上げのシグナルを出しているわけではないが、これはFedが元より2018年に3回の利上げをすると表明していることと、イエレン前議長が率いた1月の会合で利上げが行われなかったことを根拠とした判断だろう。今年中に3回の利上げを行うためには、今回の会合でも利上げをしないと後が詰まってしまう。

だから今回の会合でFedは恐らく利上げをするだろう。ただ、投資家にとってより重要なのは、今年の利上げ方針に微調整があるかということである。

2018年の利上げ方針

今回の会合はパウエル議長の記者会見とともに、FOMCの各委員が今後の利上げについての見込みを表明する、いわゆるドットプロットなどの資料も公開される会合となる。前回発表されたドットプロットでは2018年に3回の利上げを予想する委員が最も多く、2回と4回を予想する委員の数が同数で次点となっている。

このFedの自己申告を金融市場はどう捉えているだろうか? もう一度金利先物市場に立ち返ってみると、年内の利上げ回数の確率は次のように織り込まれている。

3回の利上げがある確率がもっとも高くなってはいるが、その次は2回ではなく4回であり、珍しいことにFedの自己申告よりもタカ派よりの織り込みとなっている。

さて、こうなればFedとしては市場に合わせてよりタカ派に軌道修正するインセンティブが生まれてくる。中央銀行が苦労するのは引き締めに懐疑的で低金利を予想しがちな市場を説得することであり、逆に市場が中央銀行自身よりもタカ派になってくれているのであれば、中央銀行はその分だけの引き締め側への軌道修正を無リスクで行うことが出来る。これを逃す手はないだろう。これが会合結果がタカ派となる方のリスクシナリオである。

ハト派側のリスクシナリオ

では、ハト派側のリスクシナリオとは何だろうか? それは12月の会合次点で指摘しておいたシナリオである。

一方で、今回の会合では前回も反対したカシュカリ氏に加え、シカゴ連銀総裁のエヴァンズ氏が利上げに反対している。エヴァンズ氏はかねてより利上げに慎重な姿勢を表明しており、今回の会合でそれを示した形となる。

12月の利上げにおいてはミネアポリス連銀総裁のカシュカリ氏とシカゴ連銀総裁のエヴァンズ氏の2名が反対票を投じており、今回の会合で利上げに反対票を投じる委員が増えるのかどうかが、今回の会合での最大の注目点である。ただ、カシュカリ氏は今年FOMC会合での投票権を持っていないため、エヴァンズ氏以外に反対票を投じる委員が居るのかということが問題となる。

1月の会合の時にも話したことだが、仮に今回反対票を投じる委員があったとしても過半数には至らず、利上げは行われるだろう。しかし2人か3人でも反対票があれば、今後の利上げに暗雲が立ち込めることになる。そうなれば債券市場は金利低下方向に動き、ドルは下落、株式市場にはプラスということになる。これがハト派側のリスクシナリオである。

結論

2つの方向のリスクシナリオを並べてはみたものの、市場を大きく動揺させるような結果は今回の会合からは出ないと考えている。しかし今後のFedの動きを暗示するポイントがいくつかあるため、投資家はそこをしっかり確認しておく必要があるということである。

いつも通り、会合の後に内容をレビューする記事を書く予定なので、そちらも参考にしてもらいたい。