中国、「統計基準変更」で肺炎患者数1万人以上急増 日本の症例数にも疑問

いつかあるのではないかと思っていたが、やはりそうだった。武漢発の新型コロナウィルス肺炎の患者数の統計で、武漢のある中国湖北省が2月12日から「計算方法を変更」したことで患者数が11日の44,653人から58,761人に1万人以上急増した。30%以上の急上昇となる。

要するにそれだけの患者がもともといたということである。しかしこれまでは統計に反映されていなかった。

統計基準の変更とは何か

中国によれば、これまでは検査薬によるリボ核酸(RNA)の検査によって新型コロナウィルスの存在が特定されたケースのみ統計に上げていたが、これからはCTスキャンなどによって医師が新型肺炎だと診断したケースも患者数に含めるという。簡単に言えば、医師が新型肺炎と診断したケースがこれまで患者数に含まれていなかったのである。

そもそもRNAの検査は数日を要するため肺炎の検査では迅速とは言えない上に患者数の急増により中国では検査薬が不足している。それに加えて「診断された患者数」のデータは中国はそもそも持っていたはずであり、それを1月ではなく今公開したというのは、患者数が数百人の間に患者数が急増すれば大騒ぎになるが、4万が5万になったとしても人々はそれほど注意を払わないだろうという目算があるのだろう。

しかしこの患者数の差は患者数が数十人の間には大きな違いを持ったはずである。患者が武漢だけで留まっていた1月に事態がより深刻であることが分かっていれば、各国も中国への渡航制限などがより早く行えたはずであり、ウィルスが各国に広まるリスクも抑えられたかもしれない。

そもそもおかしかった武漢の統計

武漢における当局の対応は不審な点が多かった。最初期の1月3日には新型ウィルスの発生を警告した複数名の医師が警察に呼び出され、二度と「虚偽の風説を流布」しないという誓約書に署名させられている。その中にはその後も患者の治療を続け、新型ウィルスに感染して2月7日に亡くなった李文亮氏も含まれていた。

また、1月の前半に何日も新たな患者数が発表されなかった期間があった。その後1月16日に45人の患者が確認されると、そこからは毎日結果が発表されている。この間に武漢当局は状況は隠せるものではないと判断したのだろう。しかしその後も一部の患者数はやはり「統計処理」によって隠されていた。それが今明らかになったのである。

中国のこうした対応をWHOのテドロス事務総長は「中国政府は感染拡大阻止に並外れた措置を取った」と絶賛している。テドロス氏は中国に莫大な資金援助を受けているエチオピア出身の政治家である。SARSの頃から何も学んでいない中国の対応は確かに「並外れている」だろう。また、このテドロス氏率いるWHOは諸外国に対して中国への渡航制限は必要ないと言い続けてきた。国際機関というものがどれほど信用できないかである。

投資家をやっていると、この「統計」というものがどれくらい良い加減なのかが骨身に染みている。あらゆる意図的な操作が可能であり、しかも意図しない誤りが大量に存在しているからである。例えば、新型ウィルスの日本の患者数も実態をすべて反映したものではないだろう。

日本の患者数は正しいか

厚生省によれば、新型ウィルスの懸念があり保健所に連絡すべきなのは「14日以内に湖北省または浙江省への渡航歴がある方、あるいはこれらの方と接触された方」だそうである。それ以外の疑わしい症例については普通の病気と同じように最寄りのかかりつけ医に行くようにということになっている。保健所に報告された例については上記のウィルス検査で検査するということらしい。

問題は、この検査方法だと国内感染の症例が確認される可能性がほとんど皆無であるということである。国内での感染が起こっていても普通の肺炎や風邪のように診断されてしまう。診断とは先ず病原を疑い、それから検査することで行われるため、新型ウィルスの可能性がそもそも疑われなければ新型ウィルスが確認されることはないのである。これは実質的には「国内感染がほぼ絶対に確認されない」検査体制である。菅官房長官は「新型肺炎が国内流行と判断する疫学的情報が集まっているわけではない」としている。国内感染を確認しない体制になっているのだから、当たり前である。

しかし例外的に上記の体制でも新型ウィルス感染が確認されるケースがある。現時点では10%以下とされている死亡例に至るなど重症化した場合である。そこでようやく普通のウィルスではないと気づくことになり、検査が行われる。

国内初の死亡例の意味

筆者がこういう懸念をしていたところに、神奈川県で亡くなった80代女性のニュースが飛び込んできた。この女性は1月22日から倦怠感など症状が出始め、2月1日に肺炎と診断され入院、重症化したため12日に新型コロナウィルスの検査を行ったが、そのまま亡くなり、その後に陽性が確認されたという。

もう読者はお気づきだろうが、この話の問題点は国内で感染が広がり死亡例が出るまで国内感染は計測されない仕組みになっていたということである。亡くなった女性も国内感染が十分ありうるという前提で医療がなされていれば助かった可能性もあったかもしれない。

筆者の推測では、実際に感染しているものの新型ウィルスの症例だと疑われていないケースが背景に多数存在していると思われる。

筆者は1月から既に事態がすぐに収まるものではないことを警告してきた。

今回のウィルスも4月前後がピークとなる可能性が高い。

また、日本国内の感染については次のように書いておいた。今となっては当たり前のことにしか聞こえないだろう。こうした当たり前のことが、多くの人々には事前に認識できないのである。

今回の感染は中国本土だけのことに収まるだろうか。過去の例との大きな違いは、今や中国人観光客は裕福になり何処にでも観光に行くということである。SARSは日本では広まらなかったが、今回は日本にも感染が広まっている。それは当然である。2003年と現在の日本における中国人観光客の数を考えれば、日本の読者にも現在と当時の違いが分かりやすいだろう。