引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。
今回は金相場の今後の動向を予想している部分を紹介したい。
米国株急落とゴールド
2025年4月は多くの投資家にとって波乱の月となった。株価が下落しただけでなく、同時に米国債も急落したのだから、多くの投資家はその影響を受けたことだろう。
だがある資産を保有していた人にとっては、それほど大した月でもなかっただろう。ガンドラック氏は次のように述べている。
リスク資産や部分的には債券市場で資産価格が大きく変動したにもかかわらず、価格が大きく変動しなかった資産が1つあり、それはゴールドだということは興味深い。
ゴールドは2,000ドルを突破し、3,000ドルを突破し、今や3,400ドル付近だ。
ゴールドはもう長らく上がり続けている。上昇トレンドが始まったのは2022年だが、特に去年からの上がり方は凄まじい。

そして今年4月の株安もゴールドの上昇トレンドを止めることはなかった。安全資産と言われるゴールドだが、通常なら株価が下落するタイミングではゴールドも一緒に下落する。2008年のリーマンショックでもそうだった。
株価が暴落するとき、人々は現金を求める。人々の預金を銀行は国債に投資するので、ドル預金が資金の逃避先である限り株安では国債は上昇し、金利は下落するはずである。
しかし4月の株安では米国債が急落した。それはドル預金が逃避先にならなかったということを意味する。
そしてまさにそのタイミングから、ドルが人民元などに対して下落を開始し、ゴールドが急上昇したのである。
ガンドラック氏は次のように述べている。
この動きが示唆するのは、ゴールドはもはや投機目的の短期トレーダーや、終末主義者が長期保有するためだけのものではなく、関税などによって引き起こされる地政学的混乱への恐れから逃れるための資産クラスだと人々がゴールドを見なしているということだ。
ドルからゴールドへの資産逃避
本来ならばドル預金が資金逃避の受け皿になっていたものが、今ではゴールドがその受け皿となっている。アメリカ人ばかりがドル預金から逃げ出したわけではないだろうから、アメリカ国外の資金がドルから逃げているのだろう。
ちょうどガンドラック氏も株価の急落前に、これまで10年以上続いていたドル建て資産への資金流入が逆転し始めるシナリオを予想していた。以下の記事である。
だがそれがこれほど早く現実になるとは思っていなかっただろう。関税がそれを早めてしまった。
ドルの代わりとしてのゴールド
いずれにしてもドルおよび米国債に信用がなくなっているのは、米国債の利払いの問題である。
コロナ後の金利上昇で莫大な量の米国債に多額の利払いが発生しており、米国債の利払いは財政赤字全体の半分ほどに達している。
ガンドラック氏は前回の記事で、米国債は結局中央銀行が買い支えるしかないと予想していた。
だから世界中の投資家が、アメリカの財政とドルの価値下落を懸念し始めている。だがドルの価値が下がるからといって、他の通貨も似たような状況である。
だからガンドラック氏は次のように言っている。
人々は存在する負債の量に対して、どうやってそれに対処するんだと考え始めている。だからゴールドを紙幣の代わりだと考えている。
金価格の動向予想
ガンドラック氏は今年3月、金価格がまだ2,000ドル台だった時に、金価格は4,000ドルまで上がると予想していた。
その後、金価格は3,300ドルまで上がっている。

物凄い勢いで上がり続けている金価格だが、これからどうなるのか。ガンドラック氏は次のように述べている。
4月にも同じことを言ったが、わたしは今でも金価格が4,000ドルまで行くと考えている。
結論
米国債からの資金流出は、ヘッジファンドマネージャーたちは去年から懸念していたが、多くの人は少し前まで想像だにしていなかっただろう。
だがそれが急速に現実のものとなりつつある。アメリカの財政問題への懸念が広がり、米国債の価格が下がり金利が上がるほど、アメリカの財政もまた更に悪くなってゆく。負のスパイラルである。
それこそがBridgewaterのレイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想している基軸通貨ドルの終焉の始まりである。
ダリオ氏はこの本をコロナ初期に書き始めた。大規模な現金給付が決まった時点で、ここまでのシナリオをダリオ氏は予想していたのである。
そしてこれからのシナリオも大枠としてはダリオ氏やガンドラック氏の予想通りになるのだろう。個人投資家も準備をしておくべきである。ここでは去年からずっとゴールドの記事を書いている。

世界秩序の変化に対処するための原則