引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。
今回は米国株の動向を予想している部分を紹介したい。
米国株の推移予想
ガンドラック氏はこれまでの記事で、主にアメリカの財政赤字の問題について話していた。ここの読者にはお馴染みだが、4月の株安で米国債からゴールドに資金が逃避しているという話である。
だが読者は株式市場についても気になっているだろう。米国株は4月の急落のあと、トランプ政権の関税延期で反発している。

ガンドラック氏は株価についてはどう思っているのか。ガンドラック氏は次のように述べている。
株式市場はまた下がるだろう。4月に話した時にはS&P 500は4,500ドルで下げ止まると言ったが、まだ同じところまで下がると考えている。
ガンドラック氏は株価急落時、4,500ドルで下げ止まると予想していたが、実際にはトランプ政権は株価ではなく米国債(※5/12誤記を修正しました)の下落を懸念して関税を延期した。
結果として、株価もそれより早く反発していった。
だがガンドラック氏は、株価は結局同じところまで落ちると予想している。
ガンドラック氏は次のように続けている。
あるいはもう少し高く、4,600ドルかもしれない。
そこまで落ちたら、やや眺めのスパンで投資をするために資金を投入することを考え始めるだろう。
株価が下落する理由
株安が継続すると考えている投資家には、他にはポール・チューダー・ジョーンズ氏がいる。
ジョーンズ氏が株安は継続すると考える理由は、関税が企業利益を減少させると予想しているからである。
だがガンドラック氏は別の理由を挙げている。ガンドラック氏は次のように続けている。
トランプ大統領は市場のことをそれほど気にしないだろう。
トランプ氏は、痛みを受け入れなければならないなら、中間選挙のある来年ではなく今だと考えているだろう。来年に経済が悪化すれば共和党にとって致命的となる。
株安の最中、トランプ政権は株価を気にしていなかった。それは元々、スコット・ベッセント財務長官の古巣であるSoros Fund Managementのドーン・フィッツパトリック氏がいち早く指摘していたことである。
そして「痛みを受け入れる」とは、ガンドラック氏がこれまでの記事で言及してきたアメリカの財政赤字の問題に着手することである。
トランプ大統領の頭にあるのは、景気後退をもたらしてでもインフレを打倒したレーガン政権の事例である。これまでは株価を上げた政治家が選挙に勝ったかもしれないが、インフレの時代には株価よりもインフレ抑制が選挙に効果を発揮する。
実際、レーガン政権は高金利政策で深刻な景気後退をもたらしたが、結果として次の選挙の頃にはインフレはかなり収まっており、レーガン大統領は再選を果たした。
このレーガン政権の事例は、ベッセント財務長官が実際に言及していた。
ガンドラック氏は次のように述べている。
レーガン大統領は痛みを受け入れた。人々はレーガン大統領が再選することはないと思った。だが実際には彼は圧勝した。
インフレの時代には、株価よりインフレ抑制が選挙にとって重要だからである。
結論
だからガンドラック氏はトランプ政権がもう一度株価を下げるような、痛みを受け入れる戦略を取ると考えているのである。それで今年の支持率が下がろうが、来年にインフレが鈍化していればそれで問題ない。
問題があるとすれば、既に予算案が発表されており、これ以上の支出削減はあまり期待できないことである。
だから何かあるとすれば増税だろうか。だが例えば、今年増税して来年減税すれば、今年金利は下がって、来年金利は上がる。
ベッセント財務長官は低い金利で国債の大量発行を行えるタイミングを見計らっているはずだから、一度でも金利を大きく下げたいと考えているはずである。
一度増税で金利を下げた後、低い金利で長期国債を発行し、来年に減税でプラスマイナスゼロにすれば、国債問題と選挙の支持率を両取りできる。そういう戦略はあるのではないか。
だが筆者も最終的には金融緩和が必要になるだろうと思う。それは米国債のためにドルが犠牲になる道である。
レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想している基軸通貨ドルの終わりが近づいている。まさにダリオ氏のシナリオ通りである。

世界秩序の変化に対処するための原則