Von Greyerzのエゴン・フォン・グライアーツ氏がカイ・ホフマン氏によるインタビューで、金価格の上昇とその意味について語っている。
金価格の上昇
ここでは何度も取り上げているが、フォン・グライアーツ氏は長期的に大幅な上昇を見せているゴールドを一貫して推している。
金価格は次のように推移している。

金価格上昇の理由
この金価格の上昇は、長い目で見ればかなりの長期トレンドである。それが始まったのは、政府(特に米国政府)が金融緩和に本格的に頼るようになってからである。
そのきっかけは、元々金本位制だったアメリカで、ドル紙幣はゴールドの預かり証に過ぎず、国民は中央銀行に紙幣を持っていけば預けたゴールドを返してもらえるはずだったものが、米国政府がそのゴールドを返さないと宣言した1971年のニクソンショックである。
長期的には、金価格はその時から100倍になった。つまり逆に考えれば、ドルの価値はゴールドに比べて99%下落した。
だが、フォン・グライアーツ氏によれば、紙幣の価値下落はこれからも続くという。政府が紙幣印刷で紙幣の価値を下げることを止めないからである。
フォン・グライアーツ氏はいつも「99%下落して1%が残ったが、その1%は今の100%であり、紙幣の価値はもう一度99%下落する」と言っている。
ドル下落の最終段階
今回のインタビューでフォン・グライアーツ氏は、司会者に「ドルの価値下落とゴールドの上昇はいつ終わるのか」と聞かれ、次のように答えている。
99%も下落しているのだから、その意味では終わりは近いと言うべきなのだろう。
だが、今の状況はその最終段階であり、最終段階はもちろん劇的なものになる。
これまでは緩やかな進行だった。
1971年の下落開始から、長期的に見ればドルは緩やかに下落してきた。1970年代の物価高騰時代におけるドルの下落は激しかったが、その後は緩やかなインフレでドルは緩やかに(しかし継続的に)価値を失ってきた。
だが、これからは違うという。フォン・グライアーツ氏は次のように述べている。
倒産というのはどのように起きる? まずは緩やかに、そしてそれから急激にだ。
それがわれわれがこれから突入する最終段階だ。
ドル下落は加速してゆく
ドルの下落は加速してゆく。何故か? インフレが発生してしまったからである。インフレが収まっていない状態で景気後退に突入し、緩和をしなければならなくなれば、ドルの価値下落はブレーキが利かなくなるだろう。
フォン・グライアーツ氏は次のように続けている。
だから、ゴールドとシルバーの上昇は今までよりも速くなる。通貨はより早く価値を失うことになり、インフレが加速する。
そして政府はあなたがたに「これはただのインフレだ、財政赤字を紙幣印刷で埋め合わせしようとして経済運営を失敗したわけじゃない」と言うだろう。
ここの読者ならば早々にドルや円などには見切りをつけ、ゴールドやシルバーに逃げているだろうから、紙幣の価値下落そのものからダメージを受けることはないだろう。
しかしフォン・グライアーツ氏は次のように言う。
これは経済にとって、金利にとって、株価にとって、そして人々にとって非常に醜い期間だ。誰もにとって厳しい時期となる。今後5年か10年で起こる問題からは誰も逃れられない。
金融市場や金融制度、政治の体制が崩壊することも起きる。そして株価は1929年から1932年までのように真っ逆さまに下落する。そして株価が回復するまでには50年かかるだろう。それが当時、ダウ平均に起こったことだ。
紙幣の価値下落とは、言葉で言うのは簡単だが、実際にはここの読者を除く社会の大半の人が紙幣で預金しているので、社会はとんでもないことになるだろう。そして、ゴールドやシルバーのお陰でその損失を免れる人も、社会的混乱から完全に逃れることはできないだろう。
フォン・グライアーツ氏が言及している1929年とは世界恐慌のことであり、その時には今と同じようにドルと米国債から資金がゴールドなどに流出した。
その時に米国株がかなり長期的な株価低迷を経験したことは、以下の記事で解説されている。
当時のドルや株価の動きについては、レイ・ダリオ氏が『巨大債務危機を理解する』の中で詳しく解説しているので、そちらも参考にしてもらいたい。