DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が、CNBCのインタビューでコモディティ市場について語っている。
貴金属相場の高騰
前回の記事でガンドラック氏は、ゴールドに加えシルバーまで高騰を始めていることに触れていた。
貴金属の価格が上がっているのは、金利上昇でアメリカの財政赤字の半分が米国債の利払いとなっていることなどから、先進国の債務問題が紙幣印刷で解決されると懸念されており、ドルや円などの紙幣や米国債や日本国債などの債券から、誰かが勝手に印刷して価値を薄めることができない貴金属へと投資家が資金を移しているのである。
金価格は次のように推移している。

以下の記事で説明した通り、ゴールドは主に中東諸国やBRICS諸国の中央銀行によって買われているが、シルバーの主な買い手は個人であるため、シルバーの価格上昇は普通の人々が紙幣の価値を心配し始めたことを示しているのである。
銀価格は次のように推移している。

コモディティ相場
ゴールドとシルバーの高騰は続くのだろうか。ガンドラック氏は次のように言っている。
ゴールドは今でもポートフォリオに入れておくべきだが、コモディティ全般が上がり始めていると思う。
貴金属の高騰に他のコモディティが付いていくかどうかは、究極的にはインフレと債務の問題がこのまま収束するのか、それとも、例えばアメリカでトランプ大統領が財政赤字の問題を金融緩和で解決しているように、債務の問題が緩和とインフレで解決されてゆくのか次第である。
そして、インフレになってゆくのであれば、貴金属のみならず卑金属やエネルギー資源、農作物などの他のコモディティ銘柄も最終的には上がってゆくだろう。
その予想は、今年の夏にシルバーがゴールドの高騰につられて上がり始める前からそれを予想していた状況に似ている。
コモディティ銘柄の現状
少なくともガンドラック氏はコモディティ相場の上昇を予想しているらしい。ガンドラック氏は次のように言っている。
わたしはかなり久しぶりに先週、コモディティに対して強気に転じた。
現状、ゴールドとシルバー以外の貴金属はどうなっているのか。代表的な銘柄のチャートをざっと掲載すると、次のようになる。
銅
まずは卑金属の銅からである。年始から見ると上がってはいるが、貴金属ほどではない。

銅は、紙幣や国債の代わりにはならないだろう。資産として保管するためには大規模な資材置き場が必要となる。
だがその分、シルバーに続いて銅も高騰を始めたら、金融市場が実体経済のインフレ再加速を心配し始めたということだろう。
また他の要因としては、銅は電気自動車にも使われるため、今年からSDGsに反対のトランプ政権となったことが重しになっているということもあるだろう。
原油
さて、コモディティ銘柄と言えばまず原油だろう。原油価格は、実は緩やかに下がっている。

トランプ大統領が金融緩和に積極的な理由の1つは、物価に大きく影響する原油価格が落ち着いているからかもしれない。逆に言えば、今後の原油相場の動向は実体経済のインフレと金融政策に影響を与えるということである。
原油そのものに投資しないとしても、原油相場は常に監視しておく必要がある。
とうもろこし
次は農作物からとうもろこしのチャートを紹介しよう。

農作物には、バイオエタノールの原料になるために原油相場とある程度連動するものと、原油相場とはまったく関係ないものがあり、とうもろこしは原油相場に影響される方の農作物である。
原油相場の影響もあるのだろうが、ほぼ横ばいである。だが、農作物は全般的にそもそも価格が上がっていない。それは例えば小麦を見れば分かる。
小麦
小麦は原油相場とは無関係の方の農作物だが、チャートは次のようになっている。

ウラン
さて最後に、原子力発電に使われるウランの価格の長期チャートを載せておこう。

ウランは2011年の東日本大震災以来、長期的に価格が低迷してきたが、SDGsによる化石燃料の抑圧やAIの莫大な電力需要を補う必要性から原子力発電の見直しが進んだことで値上がりしている。
ウランの価格水準は、2011年の東日本大震災前の水準をやや上回る程度である。トランプ政権が化石燃料推進派であること、AIバブルがいつ弾けるかということは懸念材料ではあるが、原子力発電へのシフトが本物であれば、投資に悪くない水準だろう。
結論
ということで、ガンドラック氏の推奨を機会にコモディティ市場全体を見渡してみた。
だがそれでもやはりこれからの相場の主役は貴金属である。それは、1970年代の物価高騰時代に貴金属とその他のコモディティの上げ幅がどう違ったかを見れば分かる。
だが、それでもインフレでコモディティ銘柄は上がる。注目する価値はあるだろう。
また、コモディティ市場の入門書としては、古い本ではあるがジム・ロジャーズ氏の『商品の時代』を挙げたい。
個人投資家向けの解説が少ないコモディティ投資において、分かりやすく説明してくれていることは有難いことである。
