世界最大のヘッジファンド: ハイテク株は大幅下落でバブルではなくなったか

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がLinkedInのブログで最近暴落しているハイテク株について論じているので紹介したい。

金融引き締めで世界同時株安

今年に入り世界的な株安となっているが、アメリカの株式市場では特にハイテク株の下落が大きい。まずはS&P 500のチャートを掲載しよう。

最高値から15%程度の下落である。一方、主にハイテク株で構成されるNasdaq総合指数は次のようになっている。

およそ25%の下落とS&P 500より下落幅が大きい。

インフレと相性の悪いハイテク株

ハイテク株の下落幅が大きいことには主に2つの理由があるだろう。1つはコロナ後に巣ごもり銘柄のバリュエーションが高くなっていたことである。Netflixなどが典型的だが、その後人々が外に出られるようになり、巣ごもり銘柄の決算が去年ほど良いものではなくなり始めている。

そしてもう1つの理由がインフレである。ハイテク株は高成長株が多いが、高成長株とは「今は利益が低くとも将来利益が高くなる銘柄」である。

しかしインフレでは毎年紙幣の価値が薄まってゆくので、遠い未来に約束された紙幣ほど大きく価値が薄くなるということになる。この意味で将来の大きなリターンを前提としていた高成長株がインフレで一斉に売り浴びせに遭っている。

この状況をダリオ氏はどう見ているだろうか? ダリオ氏が「新興ハイテク株」として年始にバブルと呼んでいた銘柄、電気自動車メーカのTeslaやスマートテレビメーカのRokuなどの銘柄は、今どうなっているだろうか。

ダリオ氏は次のように言う。

それ以来、これらの銘柄のバブルは弾けた。

まずはTeslaの株価を見てみよう。

最高値から30%近い下落となっている。しかしRokuの下落幅はそれよりも大きい。

最高値は去年の夏の490ドル近辺だから、約80%の下落である。

バブルは弾けきったか?

これらの下落を見て、ダリオ氏は次のように言う。

これらの新興ハイテク株はもはやバブルではないように見える。

これはハイテク株を買っている人にとって朗報だろうか?

しかしダリオ氏はこう続ける。

だが一方で極端に売られ過ぎというところまで振り切っているようにも見えない。

そしてそれは、実際ハイテク株にとって悪いニュースなのである。

ダリオ氏は次のように説明する。

バブルは収まるまでに長い時間がかかることがある。(1929年のバブルでは2年、90年代後半のドットコムバブルでは1年。)そして大体の場合、売られ過ぎというもう1つの極端な方向へと振れてゆく。

バブル崩壊が始まれば、バブルは「正常な」水準に落ち着くよりも、下落方向に行き過ぎるものだということを歴史は教えている。

だからこれらの銘柄が極端なバブルではなくなったからと言って、投資しても安全だとか、買い向かうのに良いタイミングだとかいうことを意味するわけではない。

筆者は先月の記事で次のように書いておいた。

ハイテク株の中には安くなってくると買いたくなる衝動に駆られる銘柄もなくはない。実際、ハイテク株は更に安くなるだろう。

だがこのインフレのサイクルが終わるまでは我慢した方が良いだろう。何処かで買いに入るタイミングもあるはずである。だがそれはまだまだ遠い未来のことだろう。下げ相場はこれからである。

そしてそれはその後の決算発表で肯定された。

ダリオ氏もどうやら同じ意見のようである。

結論

彼は米国株全体についても次のように述べている。

実際、米国株全体としてはまだ過剰評価されているように見える。

ダリオ氏は以前インフレについて「一部の株式はインフレでも買い」と言っていたが、アメリカ経済への見方も含めて彼の相場観は悲観的になっているように見える。

だが筆者は年始から変わらず悲観的だった。この状況でどう楽観的になれるだろうか。2018年の2倍の量的引き締めということの意味を考えてほしい。当時でさえ株価は暴落したのである。