マイナード氏: 何が起きれば米国株下落は反転するのか

Guggenheim Partnersのスコット・マイナード氏がCNBCのインタビューで、年始からの米国株株安相場の継続を予想している。

インフレ暴落相場の行方

止まらないアメリカの物価高騰でFed(連邦準備制度)は金融引き締めを余儀なくされており、年始から株価が下落している。

問題はこれがいつ止まるかだが、それは言い換えれば、Fedの金融引き締めがいつ止まるのかということであるとも言える。

マイナード氏はこの点について次のように述べている。

Fedの理事や連銀総裁らに会う機会があったが、彼らの言うことはいつも同じだ。インフレが収まるまで利上げを続ける、株価が下落してもそれが秩序ある下落である限り、株価の水準は気にしない、ということだ。

以下のように、専門家の間では株価が下落しない限りインフレは収まらないという意見がある。

量的緩和の本質が資産価格を上昇させてデフレと戦うことであったならば、インフレと戦うためには資産価格の低下が必須条件だということになる。

中央銀行も同じように考えているのかは分からないが、少なくとも株安を許容しなければならないと考えてはいるだろう。

マイナード氏は次のように続ける。

株式は売られているが、まだ安値は更新していない。そして安値を更新するとしても、それが秩序ある安値更新であれば、それは良いことだと彼らは言うだろう。

中央銀行を方向転換させるもの

ではこの下落相場は何がどうなれば反転するのか? マイナード氏は次のように述べる。

いつも言う表現は、Fedは何かが壊れるまでそれを強行するだろう、ということだ。

マイナード氏が言っているのは、例えばリーマンブラザーズの破綻のような象徴的な出来事だろう。リーマンショックとは言われるが、リーマンの破綻は2008年の株価暴落のほとんど底値付近で発生している。それはとどめだったのである。

マイナード氏は自分でも例を挙げている。

アジア通貨危機があった1997年を考えると、その翌年の98年にLTCM(訳注:以前存在した巨大ヘッジファンド)が破綻し、Fedは方向転換せざるを得なくなった。

2018年にもFedは方向転換せざるを得なかった。

LTCMとは、ブラックショールズ方程式(金融工学を学ぶ者なら誰でも知っている偏微分方程式である)を産み出した経済学者のマイロン・ショールズ氏らをチームに迎えたヘッジファンドで、メンバーの知名度から莫大な資金を集めていたが、1998年のロシア財政危機を読み間違え破綻、あまりの巨大さのためにグリーンスパン議長(当時)は利下げを余儀なくされた。

2018年については、ここの読者には説明の必要はないだろう。当時の記事も残っている。

マイナード氏は、同じような出来事がこれから起こると予想している。彼は次のように纏めている。

そういうものはいわゆるシャドーバンキングと呼ばれる所から突然やってくる。ヘッジファンドの破綻などだ。そういうものを予想するのは困難だが、そういうものに備えておく必要がある。 

そして投資家に次のように勧めている。

明日の価格ではなく半年から1年後の価格を考えているのならば、債券の保有は株式の保有よりも一層理にかなっているだろう。

結論

筆者としては、インフレが収まらない限り株安は止まらないというマイナード氏の意見に同意する。

しかし逆に言えば、インフレがピークを付ければ株安は止まるということである。

インフレがピークを付けるには順序がある。まずコモディティ価格が天井を付け、実体経済が減速し、そしてインフレがピークとなる。

コモディティの天井は既に起きている。そして最近では、実体経済の減速が目立ってきた。

逆説的だが、実体経済が強い間は株式の空売りを確信を持って続けることができた。

一方で、実体経済が減速し始めると、インフレのピークはその次に起こるイベントである。だから筆者は少し前に株式の空売りポジションをある程度利益確定した。

だがインフレのピークまでまだ間がある。その間に株価が下落を続けることは有り得ることである。ただ、筆者やドラッケンミラー氏はチキンレースをやらないだけである。

マイナード氏の言うような強烈なイベントが起きるかどうかは、インフレのピークが数ヶ月以内なのか、年末頃なのかによるだろう。年末までインフレが続けば、そこまで事態が悪くなる可能性もある。

一方で、インフレが早く収まれば、株価はバブルの大きさを考えて本来落ちるべき水準まで落ちずに反転する可能性がある。その時は二番天井を作りにゆく流れになるだろう。

どちらにしても先ずはそれを見極めたい。どちらにしても大きな投資機会となるだろうが、ドラッケンミラー氏は空売りを成功させたあと「ちょっと休んでいる」と言っていた。筆者も同意する。それが必要な時もある。