ガンドラック氏、米国の急速な利下げとドルの下落を予想

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。今回はFed(連邦準備制度)の利下げ転換とドル相場の見通しについて語っている部分を紹介する。

経済成長の理由

ガンドラック氏は高金利の中でもまだ成長を続けているアメリカ経済について次のように語っている。

経済がまだ成長を続けている理由は、財政赤字がGDPの8%に達しているからだ。GDPの8%に相当する財政赤字がなければ、経済成長は8%少なかったはずだ。

何故赤字が巨額か? 第一には政治家が無責任だからだ。

一般の人にどれだけ知られているかは分からないが、政府支出はそのままGDPの一部を構成しているため、政府が支出すれば、その内容にかかわらず、その金額がそのままGDPの増加分になる。

その支出の結果作られたものが国民の幸福に何の関係もないものであろうとも、糞の山であろうとも、便器であろうとも、政府が支出すればその分だけGDPは上がり、数字上景気が良くなったように見える。

国立競技場(出典:産経新聞)

GDPがどうなろうとも国民の生活とは連動していない理由がここにある。GDPが財政出動に先導されているとき、GDPは本来の意味での経済成長の指標にはなりえない。

だがコロナ後にアメリカでばら撒かれ、アメリカ経済にまだ残っていた資金の流れも、そろそろ底をつきつつある。それは以前ガンドラック氏が指摘していたことである。

景気後退と金融政策

だからガンドラック氏は次のように言う。

景気後退は来年だろう。経済指標はそれをかなり支持するものになりつつある。

失業率も上がりつつある。

2022年に始まったFedの金融引き締めが、ついに実体経済に届きつつある。もしガンドラック氏や筆者の予想通り来年が景気後退になるなら、これまで1年半かけてゼロから5.25%まで利上げしてきたFedの金融政策はどうなるだろうか。

ガンドラック氏は次のように予想している。

歴史から学べることで、わたしが「今回は違う」とは思わないことがある。Fedは階段を使って利上げをし、エレベーターを使って利下げをするということだ。

最初の利下げは来年前半だろう。その頃には経済がかなり減速してくる。

そしてもう1つ気になるのがドルである。例えばドル円は、株式とまったく同じように下がってから上がっている。

ガンドラック氏はドルについてこうコメントしている。

景気後退が来ればドルは下落するだろう。今年3月にドルが下落していた時には多くの人が景気後退を予想していた。当時、ドルはかなり下落していた。だが景気後退懸念が息を潜めると、株価が上がりドルが上がった。これらはすべて同じように上下する。

景気後退が来る頃には、ドルのパフォーマンスは酷いものになっているだろう。財政赤字はGDPの20%にまで達するだろうからだ。かなり酷い状況になるだろう。

結論

筆者も中長期的な予想はガンドラック氏と同じである。株式もドルも金利も来年にかけて下落してゆく。

だが下落には恐らく順序があるだろう。2018年にも今と同じように金融引き締めで株価が下落したが、当時はまず株価が下落して、次にドルが下落した。

このまま長期金利の上昇が限界を超えて、株価が下落し、その後にパウエル議長も利下げを余儀なくされるならば、今回も2018年と同じような順序になる可能性は高い。

また、ガンドラック氏は株価とドルが同じように動くと言っている。そしてガンドラック氏はドル下落を予想している。それはつまり、株価下落を予想しているということだろう。

ガンドラック氏の現在の株価水準に関するコメントは以下の記事に纏めてあるので、そちらも参考にしてもらいたい。