レイ・ダリオ氏: 世界経済のドミノ倒しはもう始まっている、最初に飛ぶのはジャンク債

引き続き、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏のFuture Investment Initiativeにおける発言を紹介したい。

金利上昇と債券の買い手不足

前回の記事では、ダリオ氏は国債の買い手がいなくなることを懸念していた。中央銀行が国債を買っていない中、国債の発行が多すぎて買い手が足りなくなる。ダリオ氏はかなり前からそれを予想していて、特にアメリカではそれが実際に起こっている。

米国政府が国債を大量発行しなければならなくなっているのは、金利が上がっていることが原因である。金利が上がれば債務者は利払いが増え、更に多くの借金をしなければならなくなり、債券の発行が更に増え、買い手が足りなくなり、金利が更に上がる。古典的な負のスパイラルである。

だが金利が上がって同じ状況に陥っているのは政府だけではない。借金をしているすべての人がその状況に陥っている。ダリオ氏は次のように述べている。

これだけの債務に対して、今の金利がいくらか。無料で借金できた低金利の時代に債務がどのように形成されたか。

今や金利はインフレに対処できるほど高い。債券投資家も適切なリターンが得られる金利だ。だがその金利は債務者にとって高過ぎる。

借金をしている人にとって金利が高過ぎるとどうなるか。借金が払えなくなる。そして債券がデフォルトし、デフォルトが増えると債券の金利が上がる。そして更に上がった金利にまた別の債務者が借金を払えなくなる。

ダリオ氏はこう続ける。

非常に古典的な状況だ。ドミノが倒れ始めている。

最初に飛ぶ債務者

だがドミノは順番に倒れるものだ。そして投資家にとってはどのドミノから倒れるのかということが重要である。

ダリオ氏は間違いなく今年前半の銀行危機を念頭に置いているだろう。

だがいくつかの銀行が破綻したものの、その後金融市場はそれを忘れ去り、金利は更に上がった。市場が金利上昇の危険を黙殺するのはいつものことである。

しかしいくつかの銀行を潰した高金利は当時よりも更に高くなって今ここにある。問題は何も解決していないどころか悪化している。アメリカの長期金利は次のように推移している。

3%台で飛ぶ債務者もあれば、4%台で飛ぶ債務者もある。だが市場は銀行危機の頃よりも上がった金利水準を危険視していない。そこに投資家にとって大きな投資機会がある。

次に危機に陥るのは誰か。ダリオ氏は次のように言っている。

高利回り債を例に取ろう。金利が高いから高利回り債と呼ばれているのだが、だからリスクが高い。

それは利上げの前から高い金利だった。それが今では無リスク金利が4%になり、無リスク金利との金利差は5%まで上がったので、高利回り債の金利は9%になった。

高利回り債は別名ジャンク債とも呼ばれ、倒産リスクの高い企業が発行した金利の高い債券である。

債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は、このジャンク債について「決して本当に満期になったことがない。ジャンク債は常に借り換えられるか、あるいはデフォルトしてきた」と言っていた。

ジャンク債の発行主体には利益を出せていない企業も多い。利益を出せていないのだから借金は払えず、期限が来ると別の借金に乗り換えることになる。

だが乗り換える時に金利が上がっていたらどうなる? ダリオ氏は現在の高金利がジャンク債の発行企業にもたらす結末を次のように語っている。

現在の金利は高利回り債の発行者にとって機能しない。

彼らが最初に飛ぶ債務者だ。

だが借り換えはまだ来ていない。例えば3年前に発行されたジャンク債は、インフレ前の低金利水準で借りられた借金だ。それは問題を引き起こさない。

だがその期限が来て借り換えなければならないとき、彼らは高金利に直面しデフォルトすることになる。彼らが本格的に飛び始めるまであとどれくらいか。ダリオ氏は次のように説明している。

ドミノ倒しは始まっている。

9ヶ月というのは理にかなったタイムフレームだ。資金の流れとこれらのことを考えるとそうなりそうだ。

来年半ばと言ったところだろうか。筆者の今後の予想は以下の記事に書いてあるので、そちらも参考にしてもらいたい。