レイ・ダリオ氏、来年の世界経済に悲観的

引き続き、Bridgewater創業者のレイ・ダリオ氏のFuture Investment Initiativeにおけるインタビューである。今回はダリオ氏が来年の世界経済について語っている部分を紹介する。

来年の世界経済の見通し

来年の世界経済はどうなるだろうか。株式市場の意見を聞いてみるならば、米国株は最近下落しているとはいえまだまだ高い水準で推移している。

楽観のなかに不安が生じ始めているといったところだろうか。

だがダリオ氏は異なる意見を持っているようだ。ダリオ氏は来年の世界経済について楽観的か悲観的かと聞かれ、次のように答えた。

悲観的だ。

ダリオ氏は理由について以下のように説明している。

現在の環境には政治の問題があり、金融政策の問題があり、紛争の問題がある。

政治の問題は、アメリカで言えば来年には大統領選挙が控えている。そしてポール・チューダー・ジョーンズ氏は以下の記事で、民主党と共和党、どちらが勝ってもアメリカ経済は詰んでいると分析していた。

そして一番重要なのは金融政策の問題である。ジェフリー・ガンドラック氏は、2021年にアメリカのインフレ率が既に高騰していた中でFed(連邦準備制度)が緩和をやり過ぎたように、現在では実体経済は既に沈んでいるのに引き締めをやり過ぎていると主張している。

ただでさえ金利は高過ぎるが、更なる問題は大量に発行されている米国債に買い手がいないことである。

Fed自体はしばらく利上げをしていないのだが、アメリカの長期金利は国債の買い手不足で急上昇している。

国債の金利が上がれば投資家はリスクのある株式よりも安全な国債を選ぼうとするので、金利上昇は株安の原因となる。最近の株価下落はそれが原因である。

金利は常に金融市場にとって最重要事項である。だから高い長期金利はそれだけで来年の経済に悲観的になる十分な理由になる。

だがそれに加えてハマス・イスラエル戦争がどのように転ぶか分からない。

もしこの戦争がイランを巻き込めば、この戦争は実質的にアメリカ(イスラエル)とイラン(ハマス)の代理戦争に発展する。ウクライナも考えれば、アメリカは間接的にロシアとイランの両方を相手にすることになる。

ただ、それでもアメリカ本土が戦場とならない限り、戦争が株価に直接及ぼす影響は限定的だろう。だが原油価格が上がる可能性はある。

そしてタイミングが最悪である。高金利で既にアメリカ経済が景気後退に向かっており、来年には利下げで対応しなければならない可能性が高いのに、その状況で原油価格が上昇しインフレになれば、インフレ対策で金利が下げられなくなる。そうなればアメリカ経済はインフレと景気後退が同時に来るスタグフレーションに陥るだろう。

結論

ダリオ氏は、将来に向けて楽観的な要素も挙げ、次のように述べている。だがそれも2024年の世界経済を救うには十分ではないという。

一方で、ここで議論されたような素晴らしい技術革新もある。それにはリスクもあるが、素晴らしいものを作り出す潜在力がある。

だがこれからの時系列を考えれば、これからの金融政策などが世界経済により大きな影響を及ぼすだろう。

来年について楽観的になるのは難しい。

ダリオ氏のポジションが実際にどうなっているのかと言えば、筆者の知っている最新の情報では、ダリオ氏は最近の株価下落の前に株式に対して弱気だったという。

ダリオ氏の株価への見通し自体は、以下の記事で取り上げている。

来月半ばには機関投資家のポジションを開示するForm 13Fも発表される。ダリオ氏のポートフォリオがどうなっているだろうか。そちらも報じるつもりなので、楽しみにしていてもらいたい。