サマーズ氏、チャーリー・マンガー氏の投資スタイルを語る

アメリカの元財務長官で経済学者のラリー・サマーズ氏がBloombergのインタビューで、最近亡くなったBerkshire Hathawayのチャーリー・マンガー氏についてコメントしている。

チャーリー・マンガー氏

マンガー氏は11月28日に99歳で息を引き取った。BerkshireのCEOであるウォーレン・バフェット氏は93歳であり、高齢だったトップ2人のうち1人が亡くなったことになる。

Berkshireは一般にはバリュー投資の代表格として知られている。サマーズ氏はマンガー氏のバリュー投資について次のようにコメントしている。

ウォーレンの証言によれば、チャーリーは次のような優れた洞察を持っていた。それはバリュー投資の従来の伝統的なやり方とは違った。

彼はそこそこの企業を素晴らしい安値で買う考えを嫌った。彼は素晴らしい会社をそこそこの値段で買った方が最終的には利益が大きくなると考えていた。

最良の会社を探し、高過ぎる対価は支払わないという哲学に徹することが彼にとって、そしてウォーレンにとって役に立った。

論理的には、素晴らしい会社をそこそこの価格で買っても、そこそこの会社を素晴らしい安値で買っても、最終的に株式市場がその価値判断に同意せざるを得なくなれば投資家は利益を得ることができる。

投資家の仕事は市場に新たな洞察を提供することであり、投資家が市場に同意せず、最終的に投資家の方が正しいと明らかになったとき、投資家は予想した値上がり(あるいは値下がり)によって利益を得る。つまり未来予測の対価に譲渡益をもらっている。

社会に存在する限りあるリソースのなかで、どの会社の事業にリソースが割り当てられるべきか、どう割り当てれば将来的に社会にとって利益を生む結果になるかを予想することが投資家の仕事であり、投資家の利益の源泉である。

共産主義の失敗は、この未来予想を投資家ではなく政治家が行なったことにある。(今の社会はどの事業が存続するべきかを投資家ではなく政治家が決めてはいないかと思った人は正しい。公共事業は共産主義である。政治家は資本主義の名の元に共産主義をやることを好む。)

マンガー氏のバリュー投資

だから極端に言えば、最悪の会社を買ったとしてもそれを補ってあまりある安値で買えば、投資家はそれでも利益を得ることができる。

だがマンガー氏のバリュー投資はそれを否定する。マンガー氏はむしろ、本当に良い会社を買うことにだけ注意を向けるべきだと言う。

それは長期投資になった場合に話が変わってくるからである。長期的な成長を見込めない企業を20%や30%安い価格で買ったとしても、利益はその差額だけにとどまる。

だが本当に素晴らしい企業を10%の割引で買ったとすれば、差額の10%を得られるだけでなく、その企業がその後10年20年にわたって高成長を遂げれば、最終的にはその投資は200%や300%の利益になって返ってくるだろう。

結論

本当に素晴らしい企業を長期的に持ち続けることの威力を知りたければ、長者番付を見れば良い。

そこに乗っている人々の大半は投資家ではなく、Microsoftのビル・ゲイツ氏に代表されるように自分の会社の株式を持ち続けた起業家である。

それが本当に素晴らしい企業の株式を持ち続けることの威力である。

ここでは優れた投資家の相場観を報じているが、Berkshire Hathawayの話は普段ほとんど載せていなかった。グローバルマクロの投資家から見ればBerkshireはロングオンリーファンド(買い持ちしかしないファンド)であり、マクロの投資家から言わせればロングオンリーファンドがロングオンリーである理由は、マクロができないからである。

だがそれでもBerkshireは優れた個別株選択だけで素晴らしいパフォーマンスを上げた。それは彼らの活動時期が米国株の長期上げ相場と見事に一致したからである。

だが米国株の長期上げ相場は終わりを迎えようとしている。マンガー氏はそのタイミングで亡くなった。

あまり彼らの意見を取り上げてこなかった筆者ではあるが、一時代の終わりを感じる。これからは別のタイプの投資家が活躍するだろう。